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第三章八節

 ネイファルコンのナギサが甲高い声と共に空中より襲い掛かるも、セレッタは作り出した水溜りの中へと飛び込んで姿を消し、水を掴んだナギサは手応えのなさを感じつつも再度空中へと舞い戻る。 (ケルピーは水を操り司る魔物……水を媒体とした特殊な力を行使する反面、依存している)  カード入れのカードに指先を触れてなぞり、セレッタへの対応策を考えるアミエラ。先程のダインとは対照的に特殊な力を使うセレッタはある意味ナギサに近いものがある。  そして、特殊な力を使う魔物というのは強みと弱みがはっきりしているのも特徴の一つ。当然、それを知っていれば対応もしやすい。 「道具(ツール)使用、スペクタースナッチャー」  アミエラが使ったそれは道具(ツール)カードのスペクタースナッチャー。仲間(アセス)に装備され、霊体など掴みどころがない相手に触れる事ができるようになるランクの高い道具カードだ。  ナギサの鋭い爪に白銀の鉤爪が装着され、さらにナギサが自身の持つ鋭い視力によって水溜りの中を泳ぐように駆けるセレッタを捉え、狙いを定めて一気に襲い掛かった。 「セレッタ!」 「わかっていますよ!」  その瞬間、水溜りより飛び出したセレッタが襲い来るナギサに向かっていき、全身に巨大な渦巻く水流をまとうと同時にクロスの身体より青いオーラが立ち昇る。 「水魔の渦!(ケルピリア・ティレニアル)」  凛々しく強いセレッタの言葉と共に渦巻く水流がナギサに向かって閉じ込め、さらに加速して接触すると何度も渦巻きにナギサがぶつけられ最終的に渦に呑み込まれ姿が見えなくなる。  やがて渦が弾け飛んで消滅、水飛沫と共に空中に投げ出されたナギサが力なく落下。地面に激突するよりも前に身体が光に包まれてカードへと戻り、アミエラの手元へと戻って行く。  戻ったナギサのカードをアミエラは掴み取ったが、破壊(ブレイク)によって全身に襲いかかる衝撃を受けて片膝をつき多量の汗と共に疲労の表情を浮かべた。  対するクロスもまた息を切らして汗も流しこそするが立ち続けており、ゆっくりと水溜りの上に着水するセレッタと目を合わせると高らかに右手を掲げ、静寂に包まれていた広場が熱気と歓声に包まれる。 「クロスさんっ!!」  円環(サークル)が消え行き、カードに戻ったセレッタをカード入れに戻したクロスの元へワンドが駆け寄って飛び付き、倒れかけるクロスだが何とか踏ん張り涙を浮かべながらも笑顔のワンドに苦笑いで応えた。 「やっぱりクロスさんは凄い人です!」 「……仕事をしただけ、さ」  仕事をしただけ。ワンドにそう答えたクロスだったが、胸の内からこみ上げるものは実感していた。  勝利の喜び、緊張感を越えて得られるもの……そう言えば久しく感じていなかったなと思い返し、クロスは一度ワンドを離して主催者より商品たるカードと、栄冠を手にした者として手を掲げられその存在と強さを大勢に讃えられた。  かたや敗北を喫したアミエラは下唇を強く噛み締めて地面を殴り、悔しさを滲ませながら恨めしそうにクロスの姿を見つめていた。 (このあたしが……!!)  破壊(ブレイク)の影響により心身共に疲労しきっているが、怒りを込み上げさせたアミエラは魔力を捻出してカード入れに手をかける。  が、直後に首筋に衝撃が走り、何が起こったかを把握する間もなく意識を失ってしまった。 「クラブス、運ぶのは任せた」 「強引ですネ……まぁ、逃げられるよりはイイかもしれまセンガ」  当身によってアミエラを気絶させたのはルイだった。そしてルイに頼まれたクラブスは渋々アミエラを抱えあげ、一足先に広場を後にする。  拍手と歓声、その中心にいるクロス。そして、その彼を慕うワンド……ルイはクロスにいる場所に本来ならば自分がいるはずだと思いつつも、それを殺して深呼吸をした。  この大会の出来事は瞬く間に街中へ、リックランプ全体へと伝わる。そしてそれは、ワンドを追う者の耳にも届く事となってしまっていることには、まだ気づいていなかった。 next…
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