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第三章二節b

 と、クロスは掲示板につけられた一つの情報を目にし、それを手に取ると無言でワンドの目の前に差し出す。それは、デミトリア軍の出す手配書だ。 「顔、隠しておいた方がいいかもな」  その手配書はエメリア国王子ワンドを手配するものだった。身なりの特徴や、恐らく従者であるルイやクラブスの事も名前は書いてないがよく書かれている。  デミトリアがワンドの持つ古の契約書の断片を求めてるならば、当然と言えば当然である。すぐさまルイは警戒態勢となり、クラブスもワンドの後ろを固めた。 「身構えるとかえって目立つからやめとけ。それにここで下手に騒ぎ起こすと面倒だ」  冷静なクロスも警戒こそしてるがあからさまにはしておらず、周囲に目を配ってこちらに意識を向けている者がいないのを確認する。  彼の言うように身構えると人混みでも浮いてしまい目立つ、また騒ぎとなれば尚更であり、探しているアミエラもまた危機察知としていなくなる可能性もある。  クロスの言葉で警戒態勢をルイは緩め、クラブスも肩の力を抜く。ワンドは手配書をクロスに手渡しつつ深呼吸をし、飛び降りてきたハントを両手で受け止めた。 「ししっ!」 「お使いご苦労様です。クロスさん、ハントが何か持ってきましたよ」  微笑むワンドの言葉に合わせてハントはクロスの右肩へ跳び乗り、持ってきた紙を渡してクロスに目を通させる。 「……カードオークションか、盗賊が嗅ぎつけそうなイベントだ」  ハントが持ってきたのはカードオークションの開催情報である。リックランプで決まった日に行われ、貴重なカードが出品される事が多い。  それを目当てに来る召喚札師(リスナー)も当然おり、また、プラッタの街で得たアミエラの情報にもカードオークションでの強盗に関して書いてあった。 「ですが情報によればアミエラさんは各地のオークションで警戒されてるとありましたよね?」 「盗賊の類は危険があっても盗みを働くものデス、大体は芸術家に似てますカラネ」  クラブスの言葉にワンドは納得ができ、一行の目的もひとまず決まる。オークションにてアミエラとコンタクトを取る、が、問題がある事にルイは気づき、クロスからオークション情報の紙を奪い取った。 「待て、このオークションはデミトリア軍が主催するものだ」  情報をよく見ると、主催者はデミトリア軍とある。なるほど、とクロスはプラッタの街で得たデミトリア軍の上級召喚札師(リスナー)がいるという情報と合点がいった。   デミトリア軍主催のオークションは数十点のカードが出品され、そのほとんどが高ランクのカードであり、非常に珍しいものである。  これが襲撃した国などから窃取したものを転売しているとしたら、そう思うとルイの中に怒りがこみ上げ、それを察したワンドも胸が締め付けられた気がした。 「……一度策を練ろう、まずそれからだ」  掲示板でアミエラの手配書も見つけたクロスは視線は向けずにそう言い、周りに意識を向けて改めて警戒をする。  今のところ敵対者になり得るような気配はない。が、何となく視線のようなものは感じた。 (気のせいか……?)  見られているような気配。ほんの一瞬だがクロスは感じ取り、それの主を探ろうとしたが見失い、また自分の杞憂とも思いつつその場から離れる事を提案。  ふと、ワンドが上を見上げて晴天の空をじっと見ていた。そして不意に「君は誰の友達?」と何かに訊ねるような言葉を口にし、クロス達に疑問符をつける。  そんなワンドの見る先、一見何もない晴天の空には静かに羽ばたく者がいた。姿を消す者、やがて自分に気づいたワンドを凝視し、そして隣のクロス達にも目を向け同じ景色をある者へと伝えていた。
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