19 / 283

第三章二節a

 準備を終えたワンド達はリックランプ国へと入る。国と言っても入国は難しくはない、元々カード製作の技術者と商人が作った歴史がある故に入国自体はしやすく治安その他も管理するのも商人組合で、国とつくが王はいない。  特に召喚札師(リスナー)に対してのカード販売や情報提供、その他凱旋などの支援体制は世界でもかなりのもの。ここを拠点として活動する召喚札師(リスナー)もいるし、たとえ一見だとしてもここほど良い準備の場はない。  そうした経緯や召喚札師(リスナー)の世界での存在感もあり、中立地帯として近隣諸国も余計な手出しはせずにいる。無論、犯罪者などの隠れ家的な面も持ってしまっている為、課題が全くない訳ではないのだが。  まずワンド達が向かったのは街の広場にある掲示板、ではなくその近くの召喚札師(リスナー)専門店である。プラッタの街のそれとは規模が桁外れであり、老若男女大勢の召喚札師(リスナー)が広い店内で商品を見ては売り買いし、大いに賑わっているのがひと目でわかる。 「すごいですね、ここのお客さんはみんな召喚札師(リスナー)なんですか?」 「召喚札師(リスナー)以外はまず来ない所だからな、それ以外で来るのは物珍しさに引かれた奴くらいだ。この国の中には他にも召喚札師(リスナー)専門店が百件以上ある、ここはその中でも比較的大きく安心して売買ができる場所、だな」  広い店内と綺麗に区分けされて並べられた商品、それを見ている客達、明るさと気さくな雰囲気にワンドは目を輝かせたが、クロスの言った比較的安心してという言葉で気持ちを落ち着かせる。  かたやクロスは棚に陳列されている宝石にも見える石版が並ぶ場所に行き、様々な色合いの中のそれを選び始めた。 「クロスさん、それは何ですか?」 「セレクトストーンですワンド様。中には仲間(アセス)以外のカードが封じられ、購入時に店員が割る仕組みです」  クロスへの質問に答えたのはルイ。同じくセレクトストーンを選び始め、一瞬クロスは横目を向けたがすぐに戻して選び続ける。 「……ここの傾向は?」 「黄色が道具(ツール)、青が呪文(スペル)が出やすい。ランクに関しては通常レアリティ設定、枚数は三枚入りだがたまに五枚の時もある」  召喚札師(リスナー)同士にしかわからない会話にワンドは首を傾げたが、何となくルイが楽しそうにストーン選びをしているようにも見えた。それはクロスも同様で、本人達は自覚はないと思うが笑っている。  ワンドに小声で話してきたクラブスは「喜びの時です」と告げ、あぁそうかとワンドは一人納得ができた。  この店には単品で道具(ツール)呪文(スペル)カードは売ってある。しかしセレクトストーンと比較すると値段が段違いである他、店の召喚札師(リスナー)達もセレクトストーンの方をよく買っている。  運試しとまだ見ぬカードと会える可能性、子供のような無邪気な感覚を召喚札師(リスナー)達は楽しんでいる。ワンドも、言葉などでは理解できずとも、彼らが楽しんでいるがよく分かり微笑んだ。  召喚札師(リスナー)関連の物の売買にはカード交換という方法もあるが、この売買限定で使える硬貨や紙幣代わりになるカードも存在する。  セレクトストーンをいくつか選んで会計に向かったクロスとルイはそれぞれカードによる支払いを済ませ、店員がセレクトストーンを専用のハンマーで割って中のカードを取り出し手渡す。 「……まぁこんなもん、だな」 (よし、ランクA二枚)  六枚のカードを手にして少し落胆気味なクロスと、対象的に普段見せない笑みを浮かべているルイ。その反応の違いや、また目当てのものを引き当てられるか否かのそれも召喚札師の楽しみでもある。    それからワンド達は店を出て広場の掲示板に赴く。見上げる程の巨大なそれを埋め尽くす情報の山、思わず口を開けてわぁとワンドは声を出す程だ。 「それで、ここでどんな情報を拾うつもりだ」 「当然、アミエラについてだ。ハント、上の方の情報拾って来い」  ルイに答えながらクロスはグレムリンのハントを召喚、ハントはクロスの頭の上からジャンプして掲示板を登って行き、同じように召喚によって上の方の情報を探る別の召喚札師(リスナー)仲間(アセス)に紛れ込んだ。  目の届く範囲のそれはクロス達が目を通す。カードの交換、大会情報、お尋ね者、落とし物のお知らせやゴミの収集日のお知らせ……多種多様すぎる中から目的の情報を探すのは苦労がかかる。
良い
エロい
萌えた
泣ける
ハラハラ
アツい

ともだちとシェアしよう!