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第三章一節b

 ふと、ワンドは何か聴こえた気がしてクロスの持つカード入れに目を向ける。カード入れにある仲間(アセス)カード、まだ見ぬ仲間の存在に気づいているのをクロスもだがルイらも気づく。 「……クラブス、ワンド様を頼む。クロス、話がある」  ルイに促され、クロスはワンドからカードを返してもらってカード入れに収納して立ち上がり、彼女と共に少し離れた場所まで歩く。  二人の姿をワンドは目で追っていたが、クラブスに話しかけられたので視線を変え、その間に二人はワンドの視界より消えた。  やや離れた場所で足を止めてから一呼吸置いてルイが振り返り、同じく足を止めるクロスは何かを言いたさげな彼女に訊ねようとも思ったが、すぐにやめて彼女から話すのを待った。 「……ワンド様の事、気付いているか?」 「はっきり言えよ」 「我々召喚札師(リスナー)とは異なる力を、あの方は持っておられる」  召喚札師(リスナー)とは違う力。それが具体的にどのようなものかはまだ断言はできないが、クロスは垣間見た片鱗からワンドがただものでないとだけは予感できた。  同時に、それを話題としてきたルイがその事について詳しく知っているような気もした。それ故に自身が充分にワンドを守れない事、その苛立ちが表面化してしまっているのだと理解もできる。 「護衛をするにあたって、ワンド様を第一に守っていればいい。それだけを改めて言っておきたかっただけだ」  念押しにしては少し腑に落ちない。沈着冷静に見えるがルイが緊張してるのはクロスには伝わった。  答えが何にせよ、ルイがさり気なく自身のカード入れに手をかけてるので、最悪の場合は戦闘となるだろう。だからといって口約束というのは、流儀に反するとクロスは考えてから返答をする。 「それが雇い主の意向に沿ったものならそうするが、もしあんたらを守れと言われたらそれを尊守する」  堂々としつつも冷静な口調と表情、ルイはカード入れにかけた手を下げて小さく息をつく。  クロスは間違った事は言ってはいないし、ワンドに従順というのは再認できたのだから。 「なら、いい」 「俺からも一つ言わせろ聖騎士」 「……何だ?」  戻ろうとした所をクロスに止められる形となり、さらに聖騎士呼ばわりされている事はルイは不快に思いつつも足を止めた。 「もしもの時はあんたも制限外して戦え。俺だって万能じゃない」 「……言われるまでもないな」 「そいつはどうかな、あんた頑固で頭硬そうだしな」 「……私に気遣いは無用だ」  忠告に目を閉じながら答えたルイは先にワンドの所へと歩いて行き、そんな彼女の答えにため息をついたクロスは「顔だけは綺麗だけどな」と独り言を漏らしてから遅れて合流する。 ――  時同じくしてリックランプの街の中。広場に設置されている巨大な掲示板には召喚札師(リスナー)に関する情報が書かれた紙が埋め尽くし、その内容も多種多様千差万別である。  その掲示板の前に集まる人々はほとんどが召喚札師だ。各々異なる目的の情報を求め、この場所に訪れ掲示板を見上げている。 「へぇ……たまには掲示板も見てみると面白い記事があるんだ」  その召喚札師(リスナー)は掲示板のすぐ前にて記事を眺め、やがてある一つの記事を手に取ってまじまじと読み始める。 「……あたしもずいぶん有名人になったのかな? ま、いいけどね」  そう言ってその場を立ち去る人物が見ていたのは自身の手配書、女盗賊にして召喚札師(リスナー)アミエラ・ハルピュスのそれであった。  素顔を青系統のスカーフで隠している彼女の口元には、不敵とも妖艶とも取れる笑みが浮かんでいた。
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