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第二章四節a

 店内は古びた外見からは想像できないほどに小綺麗で、カード以外にもカード入れなど召喚札師(リスナー)の為の道具が木製のラックにかけられており、カウンターの奥には黒の色眼鏡をかけた肩幅の広い白いスーツの男が立っていた。 「おや、今日はお仲間とご一緒のようですねクロス様」 「……頼んでおいた情報は?」  寡黙そうで声がかけにくい印象とは裏腹に店主の対応は丁寧で柔らかく、クロスが早々に用件を切り出すと色眼鏡ごしにワンド達をまじまじと見つめ、特にワンドに視線を送り続けている。  それを察してかクロスは少し横にずれて遮り、腕を組んで話を進めるよう暗に示す。 「召喚札師(リスナー)デミトリアに対抗、あるいは可能性を持つ召喚札師(リスナー)の情報でしたね。通常は召喚札師(リスナー)に関する情報はランクB以上のカード二枚となりますが……今回はランクA以上二枚が妥当な所でしょう」 「ランクA二枚か……」  仲間(アセス)以外のカードには下からC、B、A、Sのランクが存在する。ランクが高いものほど強力ではあるが入手困難であったり、魔力の消費が大きかったり使いどころを選ぶ為、カードの特徴を理解し使い分け、本当に必要なカードを召喚札師(リスナー)は選定する。   要求されたカードを持ってないクロスはすぐにルイに目線を送り、舌打ちしつつ自身のカード入れから二枚抜いたルイはカードをクロスへ投げ渡し、それを確認してから店主に差し出し受け取らせる。 「ほう……雷剣ストームソードにエルフの聖槍ですか、久々に良いカードを手に入れられました。感謝します」 「情報がカードに見合うものでなければ即刻切り捨ててやる、間違った情報でもな」 「怖い顔せずとも我々の商売は信頼が重要ですよお嬢さん。では約束のものを裏から取ってきますので、少々お待ちください」  警戒気味なルイに対して店主の対応は丁寧かつ沈着冷静。カウンターの奥に姿を消す店主は何かを探してまとめ始め、その姿を黙って見守るクロスの隣にルイが来て「信用できるのか?」と小声で訊ね、クロスは小さく頷く。 「カード切らせた事は詫びる。その分も仕事の内容で示す事にする」 「当たり前だ、私とて貴重なカードをそう多くは持ってはいないのだ……今回は、ワンド様の為になるなら、仕方がないが、な」  そう言葉を交わした後に青のブックカバーの分厚く大きいファイルを持った店主が戻って来る。そしてファイルをカウンターの前に置き、クロスは小さく頷く。 「残念ながらデミトリア程の召喚札師(リスナー)に対抗できる力の持ち主は、今現在は国所属の上級召喚札師(リスナー)ですら難しい。ですのでこちらにあるのは将来対抗し得る力、才覚を持ったフリーランスの召喚札師(リスナー)のみとなります。無論、クロス様も含みます」  実力のある召喚札師(リスナー)というのは優先的に貴族や国が囲い込むもの。その中で特に実力のある者は上級召喚札師(リスナー)と呼ばれ厚遇される。  無論、厚遇に見合う強さを持っているという事でもあるため、威嚇など抑止力だけの存在というわけではない。  そんな中でデミトリアは無所属、自分で軍を組織するだけの力を自ら有する強大な存在。  各国の上級召喚札師(リスナー)ならば対抗し得る可能性があるのはワンド達も承知だが、それを軽々とデミトリアは上回っているという話もある。  その中でフリーランスの存在は力を貸してくれる可能性は大いにある。もっとも、店主が話したように将来性がある者のみ、確実な強さを持つ者ではないのだが。 「……俺の事を調べたのか」 「情報網に必ず引っかかる名前でしたので記憶させてもらいました。申し出てくれれば情報は処分致します」  店主の言葉に少しの不快感を示したクロスだが、返事をする前に隣りに来たワンドがカウンターに身を乗り出し気味に店主にクロスの事を訊ね始めた。 「クロスさんって有名なんですか?」 「近年の召喚札師(リスナー)の中では将来性ある実力を持ちながら国に属さないフリーの存在、同じ場所に長居せず引き受けた仕事の達成率も高い。それでいて自分の存在を表に出さない為に有名ではないが、調べて初めて分かる実力者、と言った評価を同業者から聞いています。確か各地で行われている闘技大会も負け無しとか」  クロスの経歴を指し示す情報が書かれた紙を店主はワンドに手渡し読ませ、話と合わせて目を丸くしながら驚愕する。同じように驚くルイとクラブスだが、当事者のクロスは特に反応せずファイルに目を通し続けていた。
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