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第二章三節

 プラッタの街にワンド達は数日滞在している。その理由は情報収集と備え、次なる行き先が距離があるのでしっかり備えようということである。  街の規模は大きい為に当然情報の行き来も多く情報収集もしやすいが内容によっては危険も伴う。  宿を拠点としてクロスが情報収集しに行き、その間にワンドは負傷したルイの看病をしつつクロスの仲間(アセス)であるグレムリンのハントと親交を深める。  今日はクロスについていきたいというワンドの希望があってこれを承諾するも、信頼できないとしてルイも同行する形に。クラブスもルイに半ば強引に同行する事となり、全員が街中を歩く事となる。  表通りを歩くクロスの隣を歩くワンドは、クロスを見上げながら様々な事を訊ねていた。 「クロスさんって本当にすごい人なんですね。尊敬します」 「それはいいが、召喚札師(リスナー)なら後ろの騎士もそうだろ。何で俺に色々聞くんだ」  クロスとワンドの後ろを少し離れて歩くルイはじっとクロスの背中に目を合わせていた。その間にクラブスはいるが、振り向かないよう、近づきすぎないよう歩幅に気をつけている。  ルイはワンドがクロスに話している事が不愉快、というのが目に見えてわかるが、ワンドは気づいてないのかクロスの方に関心が向いてるからか、その事に気づかずクロスの問いに答える。 「召喚札師(リスナー)の事はルイさんからも聞いてますけど、他の人はどうなのかなと思いまして」  正面に目を向けながら、街と行き交う人々を見ながらワンドは思いを打ち明ける。 「世界には色んな召喚札師(リスナー)がいて、仲間(アセス)となった魔物や精霊達と力合わせて何かをする……僕には力はないですが、いつか、召喚札師(リスナー)の力になれるような事をしたいなって思ってます」  無邪気で純粋なワンドの笑顔。クロスはワンドの頭に手を置いて応えつつ、心ではワンドの持つ力の事を考えていた。 (ワンドには魔物の声が、心が理解できていた。間違いなく召喚札師(リスナー)の才能なんだろうが、何か違う……な)  クロスの見たワンドの持つ才能。まだほんの一部だろうが、そこから見えない部分がとても大きいと直感が告げている。  またそれは召喚札師(リスナー)の才能に近いものというのもわかっていた。が、言い切れない正体不明な要素もあり断定には至らない。  かたやワンドの方はクロスの事もそうだが、彼の持つカードにも興味があった。召喚札師(リスナー)は複数枚のカードを有していて、特に仲間(アセス)カードは複数種類を持っている場合がほとんど。  クロスの仲間(アセス)は契約したばかりのダインを含めて三枚、だがそれでは少なすぎる為にまだ見せてない仲間(アセス)がいるのは間違いなく、ワンドはそんな見た事もないクロス仲間(アセス)が持つ思いをひしひしと感じ取っていた。  しかしながら、召喚札師(リスナー)は自分の所有してるカードを把握される事を嫌う。手の内が知られれば有事の際に対策もされるし、万が一の時はそこを突かれて生命に関わる事もある。  その事はルイからある程度ワンドは聞いており、クロスも既に知られてるカードの事は明かしたがそれ以外については語らない。また、ワンドもそれを聞くには信頼関係をちゃんと作らねばならないともわかっている。 「……あまりカード入れには触らない方がいい。俺の仲間(アセス)には、他人が触るのを嫌う奴もいる」 「あ、ご、ごめんなさい」  意識せずクロスの右腰につけられた彼のカード入れにワンドは触れており、注意を受けて慌てて手を引き頭を下げる。  カード入れは召喚札師(リスナー)の大切な物、その中にいる仲間の生命を常に持ち歩くも同じ。カードとなってる間でも意識はあり、状況も知る事ができる。  クロスの持つカードには興味があるワンドだが、注意を受けた事で気持ちを本来の目的へと向け直す。 「それで、クロスさんはこれから何処へ情報収集へ行くのですか?」 「カードの事はカードに詳しい奴に聞く、召喚札師(リスナー)の事も然りだ。この前正式に雇用契約をした後に、腕利きの召喚札師(リスナー)について調べるよう手はずを整えた」  詳しい奴に聞く、その言葉にワンドはピンと来て納得し裏路地へと入るクロスの後へ迷いなくついて行った。 ――  人通りの少なくなる路地を抜けて裏道へ、そこの奥にある古びた店舗。ワンドがクロスと会った場所にある召喚札師(リスナー)専門店に一行は辿り着く。 「こんな所に店がある、のだな。ここに来る前にはあるとは聞いてなかったが」 「表向きにあると言っている場所とない場所がある、だからないとされていても探せば見つかるもんだ」  専門店の存在にルイは少々驚き、クロスの言葉に歯を軽く縛って不快感を示した。  召喚札師(リスナー)の情報源として、専門店というのは理にかなってはいる。が、問題はそこではない。 「クロス殿、やはりこの手の場ではカードで取引ヲ?」 「カードで取引、ですか?」  クラブスはクロスの答えを貰う前に疑問を投げかけたワンドの方に向き、少し屈みながらゆっくりと召喚札師(リスナー)専門店におけるルールについて話し始める。 「古より召喚札師(リスナー)同士は持ち得るカードを紙幣などの代わりとして使ってイマス。ご存知とは思いますが、召喚札師(リスナー)のカードは大きく分けて【仲間(アセス)】【道具(ツール)】【呪文(スペル)】【戦場(ホーム)】の四種類が存在しています。取引するのは仲間(アセス)以外のカードデス」  四種類のカードの事はワンドも周知の事実。しかしそれで取引をするというのはどういうことなのか、クラブスの話に引き続き耳を傾ける。   「仲間(アセス)以外のカードは召喚札師(リスナー)自身の魔力に効果の程を発揮する他、特定の魔物や精霊への補佐など多彩な力を持っていて召喚札師(リスナー)はそれらを上手く使いこなすのは知っていると思いマス。しかしながらその入手経路は限られているので、召喚札師(リスナー)同士でカードの交換を行ったりするのデス」  カードだからできるやり取り、自分には不要なカードを別のカードと取引する。理にかなったそれは昔からの伝統のようなもの。  ふんふんとクラブスの話を理解しているワンドの横でクロスがカード入れを腰から外して手に持ってカードを確認すると、何も言わずにルイに目線を送り何かを訴える。 「……なんだ?」 「あんたも情報料出せ、高くつくぞ」 「ふざけるな」 「ルイさん、お願いします」  クロスには強気で言い返したルイだが、自分の手を取って見上げてきた主人のワンドのお願いには言い返せず、苦笑しつつも納得し、それから一行は店内へと入って行く。
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