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第二章一節

REASONー旅の理由ー  晴天と賑やかさ、壊れた家屋、死傷した者達……一夜明け、復興に向けて歩み出したプラッタの街。  夜の事件については、ワンド達に手を貸すと決めたクロスが上手くまとめつつもワンド達には迷惑が被らないように話を作って流していた。  無論、召喚札師(リスナー)である自分にあらぬ疑いが向かないようにする為でもあるのだろう。また、今回のそれでクロスという人間の実力というのもよくわかった。  宿屋の一室にてワンドは機械人形の執事クラブス、目を覚ましクロスの事を聞いた護衛のルイと共に今後の事を話していた。同じ部屋の入口側の壁には、クロスが佇んでいる。 「……ワンド様が決めたなら、私は反論はしません。ですが、信用できるかはわかりません」 「大丈夫です。クロスさんはいい人ってよくわかってますから」  笑顔で答えるワンドにルイは言い返せなくなり、代わりにクロスに対して鋭い目を向けて威圧する。が、クロスは目を閉じて腕を組んでおり、特に気にしてはいない。 「すぐ信用しろってのは流石に無理なのはわかっている。それはこれからの仕事内容でしてもらえればいいし、しなくても構わない。少なくとも俺は雇い主の意向に従うだけだ」  ビジネスライクを貫き通すクロスの言葉には嘘偽りは感じられず、ルイも渋々その場は納得するしかなくなる。主のワンドが決めた事を無理に変える事もできないし、クロスの態度もこちらを察してか距離を置くようにしているのがわかった。 「それで、クロスさんの報酬ですけど……」 「後払いで構わないし、言い値でいい。今回は例えコイン一枚でもやるつもりでいるからな」  クロスの言葉にはワンドも驚きを隠せなかった。ほぼ無報酬で引き受ける、そこからはクロスの意向も見え隠れし本人がゆっくりと話し始めてくれた。 「今回の仕事は俺の都合も多分にある。俺の旅の目的の一つは強くなる事、護衛をしてれば刺客と戦ってる内に鍛えられると思えばそれで充分だ。少なくとも、そこの力を抑えている女騎士よりは戦えるつもりだからな」  ルイの目つきが一段と鋭くなるが、クロスは怯まずに彼女と目を合わせさらに言葉を続ける。 「理由は聞くつもりはないが、最低限戦えるようになるまででも構わないし不要と思えばすぐに切っても構わない。一度は断ったが考え直してみて、こっちが不利なものを背負っても意味があると俺は思っている、それだけだ」  ルイの事情を予測しつつ、だがそこには深くは触れずに自分の意思を伝えるクロス。嘘偽りはない、同時に彼が協力を自ら申し出てくれている事はワンド達にとっても天の助けと言える、互いにこの機会を逃す手はない。  クロスの実力に関しては、ワンドは目の当たりにしたものをそのままルイとクラブスに伝えている。そこからでも彼の力がいかほどかはわかっている。  それを踏まえた上で、ルイは小さな疑問をクロスに投げかける。 「……一つ聞かせろ、ワンド様の話したようにファイアードレイクを仲間(アセス)とするなら相応の訓練をしたはず。さらに言えばファイアードレイクと何処で契約したのだ?」 「エックスの事か。あいつは子供の頃から一緒だった奴で最初に契約した相手だ、俺はサラマンディス国の辺境の出だからな」  召喚札師(リスナー)が契約した魔物や精霊は仲間(アセス)と言う。ルイの問いに、クロスは淡々と答えつつ自らの出身も明かして答えと自らについてもあっさり明かす。  サラマンディス国は火を信仰の象徴とした西の大国であり領内に有数の火山地帯を持つ国。ファイアードレイクはその火山地帯を主な生息域とする種族であり、頭もよく人の言葉を覚え話す事も可能だ。    とは言え、サラマンディス国からここプラッタの街は海を越え山を越えを繰り返してようやくつく東と中央大陸との境付近。徒歩で考えて直線距離にすれば数カ月はかかる。  またクロスがフリーの召喚札師(リスナー)ならば直線距離でここまで来たと思わない方がいいだろう。各地を転々としながら、己の力を研鑽してここにいるのは容易に想像がつく。  そんなクロスに憧れにも似た眼差しを見せるワンドにルイは気づいてため息をつくが、机の上に身を乗り出してクロスの事をより知りたいという意思が表れてる彼に口出すことは無く、クロスもそれに応じるように目を合わせて彼の質問にすぐに答え始める。 「クロスさんはいつから召喚札師(リスナー)に?」 「力自体は物心つく前からあった、早死されて親はいなかったし住んでいたのは人が住まないような場所だったが……力のおかげで魔物とかの力を借りて生きてきた。エックスはガキの頃からずっといる」  淡々と、そして表情も無表情。そんなクロスではあるがワンドは彼が決して冷徹ではない事、感情を表に出さないよう務めているのだと会話をする中で感じ取る。   じっと見つめながら耳を傾けるワンドの態度にクロスは気づきつつ、さらに話を続けた。 「召喚札師(リスナー)になったのはそんな生活してた時に旅の召喚札師(リスナー)に助けられた時だ。力の事を教えてもらって、カードの使い方、召喚札師(リスナー)の存在意義や心得、一年くらいかけて全部教わった。その後は自分一人で何とかしながら世界を回れと言われて別れた、そんなとこだ」  生まれながらに召喚札師(リスナー)の力を持っていても持て余す者は少なくはない。自覚をもって制御する者、無意識に力を使っている者、身を滅ぼしてしまう者、様々だ。  召喚札師(リスナー)は世界において表裏一体の担い手。その価値は非常に高い為、大国などでは召喚札師(リスナー)の力持つ者を無償で指導をするなどして社会に貢献できるようにバックアップするほど。  クロスもまた、偶然の出会いで召喚札師(リスナー)として活躍できる程になっている。そうやってまだ見ぬ新たな召喚札師(リスナー)が誕生し、未来の世界に欠かせない存在へなっていく。
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