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第一章七節

「や、やった……!」 「ししっ!!」  思わず立ち上がってハントと共に歓喜の言葉をあげるワンド達だが、青い炎の中でゆらりと起き上がる影に気づいてたじろぎそうになる。 「あれを耐えるか。すごいな……」  立ち上がったのはダンテライガー。火傷を負いながらもまだ闘志は消えておらず、走り出してそのタフネスを称賛したクロスへと迫る。  が、その直前でエックスが空中より四肢で抑えつけてそのまま身動きを止め、間近で対面する形となる。  ふと、ワンドは何かを感じ取ってクロスの隣へやってくると、ダンテライガーと目を合わせじっと見つめ合う。  何も言わずにクロスは見守り、やがてダンテライガーが落ち着いて来たのを察するとエックスとアイコンタクトを交わしてエックスをカードに戻す。 「……そっか、君は、怖かっただけだったんだね。でも、だからといって他の生き物を、人を傷つけてはいけないよ」  目を閉じつつ俯き気味になるダンテライガーに、ワンドは伏せた頭の鼻先まで来ると優しく撫で始める。  一連のやり取りに呆気にとられかけたクロスだがすぐに平静さを取り戻し、問いかけた。 「……わかるのか?」 「はい。何となくですけどね。クロスさん、彼を仲間にしてあげてくれませんか? 彼は、大きな力を感じて故郷を捨てて逃げて来た……でも、それに負けない勇気が欲しいって願ってます。召喚札師(リスナー)は、魔物や精霊の願いを聞き入れてやるのも役目と本で読みました、だから……」  クロスはワンドの言葉に驚くしかなかった。魔物や精霊の気持ちを知る人間などいない……いたとしても、彼ほどではない、と。  召喚札師(リスナー)はあくまでも戦いなどを通して相手を知り得る。それは人と人とが繋がりを深めるのと同じようなもの、摩擦も起きるしすれ違いから仲違いもする。  だがワンドのそれは、そうした摩擦もなく相手の心を受け入れそれに相手も応えている。こうも簡単に相手の心へ入れるのか、そう思うと不思議で仕方なかった。 (こいつは本当に……)  振り返って覗き込むように見上げるワンドの眼差しに、クロスはノーとは言えなくなる。契約時に相手との交渉をしなくなったぶんマシだと言い聞かせながらダンテライガーに近づきカード入れから白紙のカードを引き抜く。 「お前が望むなら、俺と来い。……ワンド、こいつの名前聞けるか?」 「はい……えと、ダインって名前だそうです」 「わかった」    すっとクロスは息を吸って間を一度置き、改めてダンテライガーと目を合わせカードを向けた。 「ダンテライガーのダイン、召喚札師(リスナー)の名のもとに盟を結ぶ! 契約(コントラクト)!」  名前を聞いたクロスが叫ぶと白紙のカードが白い閃光を放ち、それに合わせてダンテライガーの身体も白い光となってカードに吸い込まれていき、光が収まると地を走るダンテライガーのイラストがカードに浮かび上がった。  しばし新たなカードを見つめてからカード入れにそれを入れるクロス。と、一段落ついたのもあって気を緩めたせいか、ふらっと崩れるように片膝をつく。 「クロスさん!」 「……魔力を使いすぎただけだ。エックスは魔力をかなり使わないと召喚できないし、お前を守るのに使ったソリッドガードも魔力がバカにならないからな」  多量の汗をどっと流しながら答えたクロスは呼吸を整えながら立ち上がり、安堵するワンドに目を向け口元に笑みを浮かべた。 「話の前に、お前の仲間を助けて手当て、だな」 「はい、ですが……どうしてクロスさんはここに?」 「……それも後で話す」  何となく、ではあるがワンドにはクロスがここに来た理由や彼が話そうとしてる内容を察する事ができた。しかし今は、彼の言うようにルイとクラブスを手当するのが先。 ――  一夜が明ける直前、避難誘導が完全に済んでから消火活動などもされて延焼は最小限に抑えられつつも、どこからかのタレコミで此度の事件の犯人として黒い鎧の男達が捕まったという。  詳細は不明だが、彼らがダンテライガーを捕らえようとした結果この街に誘導する事となったらしい。  そして、その鎧の男達は捕らえた後に召喚札師(リスナー)デミトリアに献上するつもりだった……とのこと。何処まで本当なのかはともかく、被害が最小限に収まった事に変わりはない。  宿屋に戻りベッドに手当てをしたルイを寝かせ、少しだけ体のあちこちが凹んだクラブスの手直しをしながらクロスがそんな話をしていると、ワンドは小さく寝息を立てながら床で寝てしまっていた。 「しし?」 「あぁ、毛布でもかけてやってくれ」 「ししし!」  グレムリンのハントが毛布をどこからか引き摺りながら持ってくるとワンドにかけてやり、それから小走りでクロスの肩に跳び乗った。 「……クロス殿、此度はありがとうございマシタ。修理までしてもらって……」 「二人が起きたら話すが、断った仕事を引き受ける事にした。理由は、その時話す」  修理される身のクラブスの目が大きく開く。クロスは修理に集中しそれに気づかず、また、眠っているワンドの寝顔が何処か穏やかで明るく見えたのにも気づかなかった。  一つの出会い、それが最初。運命の始まり……。 next…
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