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第一章三節a

 裏路地を抜けて少しすると街の表通りにつき、そこからさらに人混みを歩くと噴水広場に出た。とても大きな噴水と、広い敷地のある場所。  憩いの場として利用する人はもちろん、露天商や大道芸人など、様々な人達がいて多くの明るい思いが雰囲気を良くしている。。  少し疲れた様子のワンドを噴水前のベンチに座らせ、クロスはジャケットのポケットからクッキーを取り出してワンドに差し出す。 「……食うか?」 「はい! いただきます!」  元気よく返事をするワンドはクロスからクッキーを受け取って食べ始め、グレムリンのハントにもそれを食べさせ座らずにクロスはいた。 「クロスさんは座らないんですか?」 「気にすんな」  素っ気ない返事と、表情をあまり変えないクロスが何かに警戒しているのはワンドにも何となく理解できた。少し急ぎ気味にクッキーを頬張って食べると、口の中に程よい甘みと程よい食感が広がり、思わず笑顔が溢れる。 「とても美味しいです! こんなに美味しいクッキー初めてです!」 「そうか、ならいい」  喜びを見せるワンドに答えたクロスがワンドの前に立つように向き直り、ズカズカと力強く歩いてくる者と目を合わせて対峙する。  クロスと対峙したのは、ワンドと分かれてしまった女騎士ルイだった。遅れて、クラブスもそこへやって来た。 「ルイさん!クラブスも!」 「……知り合いならそれでいい、じゃあな」  ベンチから下りて立ち上がるワンドの言葉にクロスは静かに答えて立ち去ろうとする。それを名残惜しげにワンドは見送るが、クロスに対してルイが大きな声で呼び止めた。 「待ちなさい! あなたに聞きたい事があります」 「答える義務はない。面倒事には首をツッコまないタチなんでな」  振り向かずに答えたクロスの素っ気ない態度にルイは怒りを覚え、またクロスの言い方にも気がかりとなり、マントを翻して両腕を出すと軽装の鎧をつけた身体を露わにし、左腰の白銀の手帳ほどの大きさの物に手を触れながら左足で足下を強く蹴る。 「円環(サークル)展開!」  そう叫んだルイの足元から白の円が広がり、クロスの足下を通過すると魔法陣が画かれ光輝く。 「る、ルイさん! あの人は……」 「ワンド様はお下がりを、ワンド様への刺客やもしれませんから。クラブスはワンド様の側に」  ルイを止めようとするも彼女は聞かず、クロスに対して鋭い眼差しを向け、大きくため息をついて振り返るクロスはルイと少し離れた位置で足を止める。  魔法陣の出現に噴水広場にいた人々の視線が集まり、やがて囲むように人が集まりだす。陣の外にはワンドとクラブスもおり、これから始まる事が何かをよく知っていた。 「クラブス、ルイさんを止めないと……」 「いえ、円環(サークル)を張った事に相手が拒否しなかった以上は召喚札師(リスナー)同士の勝敗がつかねば解除されマセン。全く、ルイさんも生真面目というかせっかちというか……」  ルイがしたのは召喚札師(リスナー)同士の戦いの為の結界を作る為のもの。それに対してクロスは拒否もできたが、それをしなかった事で魔法陣となった。  召喚札師(リスナー)の戦いで結界を張るのは戦いによって周囲に被害が出ないようにする為と同意性を表す為のもの、結界無しでも戦えるがその場合は周囲に甚大な被害が出るなどしてしまう。  また、結界によって外部の邪魔を阻止するのにもなる為一対一で戦うのにも向く。総じて、召喚札師(リスナー)同士の戦いの基本形と言える。 「逃げなかった事は褒めてやろう、私はルイ=セラフィム。ワンド様をたぶらかす者は誰であろうと許さん!」 「……勘違い甚だしいが、相手はしてやる。ハント、一度戻ってろ」  やや感情的なルイに対してクロスは沈着冷静で、右腰に下げている白のケースのボタンを外し、白地のカードを出すとそれに吸い込まれるようにしてグレムリンのハントが消えて行き、完全に消えるとカードにハントの姿が写し出された。 「……勝ったら相手の言う事に従う、でいいな」 「勝つのは私だ!」 「そうかよ、なら始めるぜ」  言葉を交わした二人が同時にそれぞれのカード入れから一枚を抜き出し、それに念を込めてその名を呼ぶ。 「来たれ我が剣! クー・シー召喚!」 「ハント、出番だ」  上に掲げたカードよりルイが召喚するのは直立二足歩行をし、青のマントを纏い細身の剣を携えた犬の精霊クー・シー。対するクロスの召喚するのは一度カードに戻したグレムリンのハントだ。 「しし?」 「……いつも通りだ、好きにやれ」 「しししっ!」  クロスに小笑いするような声で応えたハントに対し、ルイは表情を曇らせ召喚したクー・シーも剣を抜きつつも目を細めていた。 「ルイ殿、どう攻める?」 「相手はグレムリン、ならば正面切って攻めるのみ!」  クー・シーに答えたルイがホルダーよりカードを抜き出し、それに念を込めるのを見てからクー・シーは走り出してハントに接近、一気に剣を振り抜くがハントはそれを身体を大きく反らして避け、そこからクー・シーは目にも止まらぬ速さで剣を何度も振り抜き攻め立てる。
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