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第一章一節

FATEー運命の始まりー ――異世界エレメンタリス中央地域、プラッタの街。  晴天の下、多くの人が賑わうプラッタの街。街の住民はもちろん、行商人や旅人が行き交う大通りは特に賑わい、彼もそこにいた。  彼が歩くと人の視線が一瞬だけ集まる。ある者はひそひそと話し始め、ある者は興味を引かれてしばらく凝視する。  彼自身……ではなく、彼の肩に乗るモノに人々は目を奪われる。あまりにも非現実的、あるいは、畏怖の対象。 「しし?」 「気にすんな」  大きく裂けた口に鋸刃のような短くも鋭い歯を持つモノに、彼は一言だけ答えつつ歩みを進める。  同じ頃、プラッタの街の表通り入口付近にて。様々な商店が立ち並ぶその通りを小走りする背の低い少年が一人、様々な店の異なる商品を興味津々に見て回り、幼さを残しながらも何処となく気品を持っていた。  そんな少年の後ろには白のマントを羽織る紫色の長めの髪の凛々しい顔つきの女性が不安げそれを見ており、その隣にも大きな背かけカバンを背負う大柄の金属の身体の人形がいた。 「……クラブス、やはりこのような人の多い場所に来たのは危険ではないか? 人が多いという事は追手も紛れている可能性も大いにある」 「それはありまマスが、ワンド様の気分転換も必要デス。あの方はあの歳で弱さを決して見せませんカラ……」  女性の問いに答えた金属の人形……こと機械人形のクラブスの視線の先には、二人が仕える主というべき少年ワンドがいる。栗色の髪の毛をし、赤を基調とした服装の少年。  笑顔を見せながら店の商品を手に取り、それについて店主と会話する姿は微笑ましく見え、クラブスは機械ながらも胸が温まる感覚を覚えた。対して女性はますます不安な表情を浮かべ、何かを思い出しているようだ。  とそこへ少年ワンドが店で買って来た赤い果実を抱えて二人の元へ戻り、女性を見上げながら果実を背伸びして渡そうとする。 「ルイさん、はいどーぞ!」 「ワンド様……ありがとうございます。ですが……」 「あれは何でしょう? 行ってみましょう!」  女性の名はルイ、ワンドの護衛を務める聖騎士。ワンドに苦笑い気味に答えるが、その前にワンドがまた何かに興味を示して走って行ってしまった為に言い切れず、また彼の姿が人混みに紛れ始めたのに一瞬遅れてしまう。 「ワンド様! クラブス、行くぞ!」 「がってんデス!」  ルイは慌ててワンドの後を追いかけクラブスも機械仕掛けの身体を軽快に動かしてそれに続く。  そんな二人を尻目にワンドはさらに街中へと進む。初めて見る世界と、人々の賑わいや明るい笑顔、晴天というのもあってかワンドの心は歓喜にも似た高鳴りを覚え、足もそれに合せて早くなる。  と、ひとしきり進んだ所でワンドは表通りから外れて街の奥にまで来てしまったことに気づき、人気がなく昼でも陰気な路地をキョロキョロと見回して冷静さを取り戻す。 「……ルイさん達と、はぐれてしまいました。どうしましょう?」  腕を組んで左手をあごにあてながらワンドはそう独り言を漏らし、歳不相応の沈着さを見せてゆっくり歩き始める。  表通りと違ってとても静かであり、人の気配も少ない。しかし居住地であるのに代わりはないので、レンガ作りの家々の窓から顔を出してベランダにかけた物干し台に洗濯物を干すものがいたり、裏口から荷物を受け取る人などが目に映る。 (平和な日常生活を送れていますね、皆がそれぞれの生活を出来ている……よかった)  そう思いながらワンドは微笑むが、同時に忘れられない過去も思い出す。  夜闇を明るくするほどに燃え盛る城、傷つき倒れた兵士達、焼かれゆく剣と盾と竜と女神が画かれた国旗、酷く傷つきながらもワンドを抱えて走るルイと、同じように破損しつつも小舟で待っていたクラブス。  涙を流し過呼吸気味なワンドの目には、その光景が焼き付いていた。それが、半年程前の出来事。  心に影がかかりかける。だがワンドは深呼吸をして心を落ちかせて再び道を歩き始める。今は、分かれてしまった二人と合流するのが先決だ。
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