25 / 71

海に行っても駄女神だよ

 そんなこんなで四人で海に来た。  全員水着はプールの時と同じ。変える必要もないしな。 「ううぅみどぅああぁぁ!」 「サファイアうっさい!」 「ヤーッホー!」 「それ山でやるやつ!」  女王神のプライベートビーチである。  澄んだ海。綺麗な砂浜。よく晴れた空。絶好の海日和であった。 「よーし、じゃあ特訓するぞ」 「遊ぶんじゃないの?」 「合宿みたいなもんだよ。ちっとは真面目に訓練するぞ。俺の教師としての仕事がなくなる」 「いいでしょう。最初は何をしますか?」 「最初にやることと言ったらストレッチだ。準備運動は大切だぞ」  急に海に入ると危ないからな。  ちゃんとやっておこう。海で泳ぐのは久しぶりだ。  俺がまだ駆け出しの勇者だった頃なら、ここで揺れる胸とか尻とかに欲情していたのだろうか。もうそれすら曖昧だなあ。我ながら枯れている。 「ストレッチ終わったら遠泳をやる。目標は……そうだな。ほいっと」  手から赤い魔力球を撃ち出し、それなりに遠くへ浮かべる。 「あれに触れて戻ってこい。俺の魔力が付くから、ズルはできんぞ」 「まあ楽勝よね!」 「体力テストならば慣れました」 「さてどうかな? ちなみに、こっちの鉄板で肉を焼く。早く帰ってこないと野菜だけになるぞ。カモンイルカ!」  プールの時に出てきた浮き輪のイルカ出現。  あらかじめ魔力も込めておいた。 「こいつにリベンジしてもらう。イルカくんより遅れると飯が減るぞ」 「ふっ、いいわよ望むところよ! 浮き輪に負けてしょんぼりした、あの頃のわたしとは違うのよ」 「本当にあの頃のお前は何をやってたんだろうな」  思い返すと凄くアホです。いや今もアホだけどね。 「よーしじゃあ一列に並べ。いくぞー。レディ……ゴー!!」 「いきますわ!」 「今回こそ勝ってみせます」  なかなかのロケットスタートを見せてくれる……イルカ。  やべえちょっと魔力込めすぎたかも。 「前より速くない!?」 「これは……厳しいですね」  それでも食らいついている駄女神一同。  成長してんだな。さて、あいつらのために鉄板の準備をしよう。 「ちゃんと焼きそば麺も買ってあるしな。高級なお肉は多め、帰ってくる頃に鉄板を温めておく。野菜は少なめで……」  楽しくなってきた。食ったら俺も泳ぎたい。  そろそろ折り返し地点だろうと思い、生徒に目を向けてみた。  視力が異常発達しているので問題なく見える。 「イルカつええ……」  先頭イルカ。僅差でサファイア。ちょっと遅れてローズとカレン。  元々イルカという生物は、海の中を高速で泳ぐ。人間では追いつけない。  いやまあ浮き輪なんだけどさ。それでもイルカなんだなあとか思ってしまう。 「追いつけませんわ!」 「このままでは食事が……」 「こうなったら奥の手よ!」  ほう、奥の手なんてあるのか。見せてもらおうじゃねえか。 「必殺! ブリューナクボンバー!!」  ブリューナクに魔力を込めてぶん投げやがった。 「うわきったねえこいつ!?」  イルカくんは爆裂。海がちょっと荒れる。 「ふはははははは! 女神が浮き輪に負けるなんて、あってはならないのよ! これでわたしのご飯はぶっほああぁ!?」 「ちょっとサファイア!?」 「……最悪です」  波にのまれてジタバタしているアホ一同。いや、アホはサファイアだけか。 「綺麗な海で何やってんだかね」  あの程度で溺れることはないだろう。  危機に直面した時、どう対応するかも見たい。 「ふう……少々疲れましたね」  一番乗りローズ。当然の権利のように全裸である。 「水着どこやった!?」 「波に流されましたね」 「スクール水着なのにか?」 「ええ、女神界は不思議がいっぱいです」 「とりあえず戻すぞ」  魔法で水着を着せておく。俺が変態みたいだからな。 「あら、先を越されてしまいましたわね」  二番手カレン。普通だ。普通に泳いで帰ってきた。 「普通って素晴らしいな」 「どういうことですの?」 「なんでもない」  海上に大きな水柱が上がり、そこからサファイアが突っ込んでくる。 「これが海中女神キックよ!」 「泳げよそこは」  砂浜が荒れるので、全ての衝撃をカットしておいた。 「さあお肉よ! お肉の時間が来たわ!」 「微妙にルール違反くさいが……まあアクシデントに対応できたってことでいいか」 「ではご飯ですね」 「まだ早い。次、砂浜ダッシュ。また魔力球出すから、それにタッチして戻ってくること」 「ええーお腹すいた!」 「そもそも武器の上達具合を見るという話はどこへ?」  そっちも気になるな。幸い砂浜だ。良い訓練にはなるだろう。 「よし、予定変更。俺が魔力球をどんどん出す。それを武器のみを使って壊せ。武器から衝撃波や魔力を引き出して撃ち出すのはセーフな」 「なにそれ面白そう!」  食いついたか。ならやる気の出る方でいこう。 「よーし腹減ったし、全員まとめていってみるか」 「いつでもいいわよ!」 「どんとこいです」  大小様々な魔力球を出し、三人の周囲に、ちょっと離れた位置に、そして海の上へ飛ばす。どこへどう攻撃するか調べよう。 「ブリューナク!」  槍を全身使ってぶん回すタイプのようだ。  豪快に動きながら、一番近いやつから切り飛ばしていく。 「楽勝楽勝、ってあれ? なにこれ? 消えないわよ」 「二回当てないと消えないやつを混ぜてある」 「んじゃ槍スキル……女神二連槍よ!」  槍で一刺し。だが衝撃は二回。二連撃か。  武器スキルが順調に上がっているようだな。 「暴風女神突き!」  荒れ狂う魔力を突きに乗せ、周囲の球もろともぶっ飛ばしている。 「力とはパワーなのよ!」 「おおー、いいね」  膨大な魔力は、ほぼ尽きることを知らない。  ならば簡単だ。パワーをスキルという形で最適化すればいい。  あとはぶっ放せば、それだけで技だ。  単純に二回攻撃だけで、ぶっ壊れパワーを活かせる。 「ケリュケイオン!」  カレンは新しい魔力になれることが最重要課題だ。  うまいことケリュケイオンによる魔弾連打で、遠距離の不安を解消している。 「ふうぅ……はっ!」  両手に別種の魔力が感じられる。だがそれも一瞬のこと。  高速で移動するカレンの手に触れた魔力球は、音もなく突然消えた。 「無効化能力? もう自分のものにしたのか」 「いえいえ、両手に集中するのが精一杯ですわ。まだ魔力に乗せて飛ばしたりはできませんし」 「いや、そりゃきついだろ。できたら強いなんてもんじゃないぞ」 「精進あるのみですわね」  こっちはやる気があるので問題なし。  欠点も把握できているし、この調子で見ていこう。 「最後はローズだが」 「なにか問題でも?」  二刀流を華麗に使いこなしている。  しかも二本に流す魔力がそれぞれ違うようだ。  やるな。そういうの中二心がくすぐられる。 「フォームチェンジ」  めっちゃ丈の短い和服になる。  着物っていうか浴衣じゃないかなこれ。 「武士道とは……脱ぐことと見つけたり」 「武士に謝っとけ」  剣の冴えが増す。やはり魔力が質ごと変わっている。  斬撃に属性魔法を込めて、遠距離攻撃として飛ばすこともできるか。 「あっつ……やはり砂浜で和服は無謀でした。脱ぎます」 「水着になるならいいぞ」  そりゃ暑いよな。うん、中はビキニだ。水着さえ着ていればいいや。 「秘剣……ヌーディストビーチスラッシュ」 「違うぞー。健全なビーチだからな」  七色を超えた斬撃の乱れ斬り。  適当に振るのではなく、しっかり獲物を認識して、攻撃しているところがポイント高い。 「終了。容易ですね」  全員の武器スキルと今できることを把握。  成長の兆しあり。とまあそんなところだな。 「よーし、よくやった。飯にするぞ!」 「いやったああぁぁ! で、ご飯はどこ?」 「焼きそばの予定だ。セットがあっちに……」 「先生、鉄板を温めておきました!」 「みなさんお強いデスねー。写真バッチリ撮っておいたデース!」  クラリスと美由希がいる。なぜにいらっしゃいますかね。 「お二人ともどうしてこちらに?」 「月イチの取材デース。先月の記事が好評だったので、毎月やることにしたのデス。女王神様から許可も頂いてマス!」 「もう少し休暇が伸びましたので、一緒にバカンスでもと。焼きそば、お手伝いいたします」  来ちまったもんは仕方がない。材料も多めに持ってきてくれたらしいので、いっちょがっつり作りますか。 「海産物を手に入れてありマスよー」 「野菜も準備万端です」 「よし、じゃあ全員で作るぞ。普通のやつと海鮮焼きそばと……」 「先生の好きな、あんかけ焼きそばの準備もあります」 「でかした! 合宿の間いていいぞ!」 「ありがとうございます!」  そんなわけで楽しく焼きそばパーティーして、海の見える旅館へと向かったのであった。  焼きそばは超美味かった。やっぱりみんなで作って食うと美味いな。
良い
エロい
萌えた
泣ける
ハラハラ
アツい

ともだちとシェアしよう!