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ゲーセンに行っても駄女神だよ

 ヒマな日曜日。やることもないので、二度寝を決め込んでいたところ、サファイアに起こされた。 「どうせヒマでしょ? 街に行くわよ!」 「先生はいい加減出かけるべきですわ」 「美由希・アリアも言っていましたね」 「けどさあ……人間で男って俺一人だろ? 絶対目立つわ」  それが嫌で外出したくない。わざわざ出ていって注目される趣味もないし。 「また美由希さんのような人がやってきますよ」 「それはうざいな……しょうがねえ行くか。お前らも来い。一人でいるよかマシだ」 「よーし行くわよ!」  そんなわけで女神商店街についたわけだけど。 「綺麗な商店街だな」  綺麗に整備された石畳の街。ビルや車は存在しない。  あくまで自然と共存しながら、神聖さを失わない。それでいて過ごしやすい場所を目指しているらしい。 「ここは品揃えもいいですし、お値段も手頃ですわ」 「休日の暇つぶしに最適です」 「さてどこから行くか。おすすめとか無いのか?」 「ゲーセンに行くわよ!」 「そのあとは昼食ですわ。美味しい定食屋さんがありますの」  結局ゲーセンに行くことにした。休みの日くらいそんな感じでいいだろう。  行ってみるとめっちゃデカいんですけど。  ゲーセンで五階建てでカフェついてるけどどうなってんの。 「女神界はスケールの大きい場所です」 「こんなにでかくてゲームが足りなくないのか?」 「余裕よ! ライトユーザー向け行くわよ!」 「あ、これかわいいですわ」  UFOキャッチャー発見。なにやらうさぎのぬいぐるみがある。  俺としては、隣の女神駄菓子が欲しいわけだが。 「いいでしょう。わたしのキャッチャーとしてのテクニックを魅せてあげるわ!」  張り切るサファイア。だが難易度が高いのか、かなり苦戦している。 「くっあー! なんでよ! このわたしが十回やって取れない? ありえないわ!」 「アームが弱いんだよ。捕まえるんじゃなくて、降りて開く力を利用してはじっこに寄せろ」 「……こう?」  いいね。ゲームの知識があるからか、指示を的確にこなしてくれる。  落とし穴に半分まで追い込んだ。あとは下に落とすだけ。 「寄せきったわよ。こっからどう掴むの?」 「掴まなくていい。アームの片方で、ぬいぐるみの落とし穴側を押せ。上からな」 「なるほど……」  下が直接落とし穴になっているパターンは、大抵これでいける。 「やった! いけたわ!!」 「よし、よくやった」  ぴょんぴょんはねるサファイアを暖かく見守る。うむ、教師っぽいぞ俺。 「じゃあこれはカレンにあげるわ」 「いいんですの?」 「キャッチャーは獲物を取るまでがキャッチャーよ!」 「ありがとうございます」  よくわからん理屈だが、本人がいいなら、それでよし。 「よーし、この調子で大会出るわよ!」 「なんだよ大会って」 「格ゲーよ格ゲー。毎週いろんな大会があるわ」 「えぇ……普通のゲーセンだな」 「今日は何をやっているのです?」 「キング・ギア・ブレイカー・ラブマックス3rdよ」 「一番メジャーなやつか」  女神界でも流行っているのね。懐かしいな。  一個前の世界はファンタジーだったから、サファイアの部屋でやったきりか。 「ベルトスクロールアクション大会とかもあるわよ」 「どう競うんだよそれ」 「クリアできたら勝ち。じゃなきゃ走行距離で競うわ」 「ほほう、面白そうだな」  ゲーマーとしては気になる。もともとゲーム嫌いじゃないんだよ。 「ダメよ、あんたはわたしとタッグ戦に出るんだから」 「はあ? なんじゃそりゃ」 「もう申し込んでおいたわよ」 「勝手に何やってんだ全く」 「応援していますよ」 「がんばってくださいまし。先生なら優勝できますわ」  なぜ応援ムードですか。久しぶりにやろうと思ったら大会かよ。 「しかも無差別大会じゃねえか」 「あんた経験者でしょ? 初中級と無差別の日だし、初狩りと台パンは禁止よ」 「しねえっつうの」  無駄にゲームに対して真摯だなこいつ。その姿勢を授業にも向けて欲しい。 「ルビーさんと先生さーん」 「あ、ほら呼ばれたわよ」 「マジか。リングネームもうちょい捻れや」  サファイア先鋒で、俺が秘密兵器……なんだけどさ。 「男……?」 「男っぽい女神じゃないの?」 「あれ? どこかで見たような気がするわね?」  やっぱ目立つわなあ。ひそひそと色々言われております。  おそらくだが、俺が担当した世界の女神もいる。  やばい……あんまり騒ぎになりたくないぞ。 「あんまり騒がないでくれよ? 目立つと変な女神が湧くぞ」 「そうね、プレイに集中しましょうか」 「いやそうじゃ……まあいいや。頑張れ」  こうして順調に三回ほど勝利。サファイアの二人抜きが二回。  俺の二人抜きが一回。やはりこいつ強いな。 「やっぱルビーさん強いわねえ」 「一緒にいるの誰かしら? 見たことない人よね?」 「別のゲーセン勢なんじゃないの?」 「異常なまでに強いわよ。ゲーム用の女神なんじゃない?」  これでも格ゲーには覚えがあってな。  っていうかゲーム用の女神ってなんやねん。 「決勝まで来て負けられないわ。任せるわよ」 「ほいほい。やってやるさ」  決勝戦も最後。敵の大将と俺で行う最終戦。  ここまで残ったやつだけあって強い。ひりつく勝負だ。  いいね、強いやつと戦うと勘が戻ってくる。楽しくなってきたぜ。 「……うっし」  ちょっと声が出る。いやギリギリだった。衰えていたとはいえ全力でやったのに。 「勝ったのは先生さん! ルビーさん先生さんチーム優勝おめでとうございまーす。はいじゃあコメントを」 「えー勝てて嬉しいです。強い相手と戦うのは楽しいですね。また来ます」 「楽しかったです! 今度は一人で勝てるくらい強くなる。やりこみは裏切らないわよ!」 「はい、ありがとうございましたー。差し入れのお菓子があるので、参加者は一人一個までどうぞー」  市販のせんべい食いながら、俺たちを待つ生徒のところへ凱旋する。 「おめでとうございます」 「素晴らしいご活躍でしたわ」 「おう、楽しかったぜ。次はどこ行く?」 「時間もちょうど夕方。なにか食べて帰りましょう」  そんなわけでエンジョイして帰ろうと思ったその時、誰かが俺達の前に立ち塞がる。 「せ、せせせせ先生!!」 「ん?」 「お久しぶりです! 女神界にいらしていたとは!」  誰だっけこいつ。薄紫のロングヘアー。十代後半くらいか。  思い出せねえ。とりあえずごまかそう。 「えぇ……っと、あれだよな、女神の」 「はい! クラリスです!」  なんだっけな……崩壊確定の世界を救うとか、そんな世界だったような。 「崩壊前の世界で……少しでも寿命を延ばして解決を図るとか、そんなんだっけ?」 「その通りです。勇者と魔王を戦わせ、そこから生じる力と、負けた方の命で延命させるしか無い世界です」  そうそう、確かそんな世界だよ。懐かしいな。あったあった。 「うーわ……その世界大丈夫だったの?」 「無論だ! 先生のアホとしか言い様のない超爆裂パワーのおかげで、世界の寿命は永遠になり、崩壊から完全に救われ、平和で緑豊かな大地になりました」 「思い出したよ。久しぶりだな。女神界にいたのか」 「あの後も多く世界を救ったことで、新人教育係に任命され、暇な時はゲーセンで店長女神をしています!」 「意味がわからん」  女神はバリエーション豊富だなあ。  ゲーセンがある時点で、店長はいるけれどさ。まさかの知り合いだよ。 「まさか先生にお会いできるとは……女神界には格ゲーをしに?」 「違うわ。俺はどんだけヒマなのさ」 「失礼いたしました! それではなぜ……」 「いや、女神の教育施設ってのができてな。そこの先生やってんだよ」 「どうすれば生徒になれますか!」 「いきなりそれかよ!? ちょっとは疑問持てよお前……」 「いいえ、先生のことですから、女神界の現場を憂いて……急遽駆けつけたのでしょう! 流石は先生です!」  女神女王神に騙されたとか言えない雰囲気になってきましたよこれ。 「知り合いなの?」 「昔救った世界の女神だよ。比較的ダメじゃなかったはず」 「いいえ、先生からすればダメダメです!」  無駄に慕ってくるの本当に困惑するわ。そこまで信用されても複雑である。 「意外な知り合いがいらっしゃいますのね」 「これも奇妙な縁。いいえ、勇者としての体質というところでしょうか」 「いやな体質もあったもんだな」 「よろしければ、女神界をご案内いたしますが……」 「いや、こいつらと飯食って帰る予定でな」 「でしたら最高級ディナーを」 「食えねえよ。金がねえから」  金欠なんだわ。もうすぐ初めての給料日だ。少なかったら宝石でも売ろうかな。 「お供してよろしいですか?」 「どうする?」 「わたしは優勝して気分がいいからどっちでもいいわよ」 「先生のお話も聞きたいですわ」 「許可しましょう。私も興味が湧いてきました」  そんなわけで五人で定食屋へ。  安くて美味い場所があるということで、クラリスに案内された。  さて、俺は普通に帰れるのだろうか。飯くらいゆっくり食わせて欲しいもんだな。
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