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成長している駄女神だよ

 グラ子と駄女神三人の勝負が始まった。  さてどうなるかな。一応基礎訓練はやらせていた。あとはセンスだ。 「いくわよグラ子!」 「グラ子と呼ぶな!」 「砕け散れ! 圧倒的女神砲!」  まーた燃費とか考えずに撃ちやがって。 「さあどうするの? 当たれば死ぬわよ? ちょこまか逃げ回るがいいわ!」  左手から拡散されたエネルギーが迸っている。  ん……左手? あいつ右利きだったような。 「こんなもの……通用せんぞ!」  エネルギーの波をものともせず、まっすぐ突っ切ってサファイアに肉薄する。  その動きは一切の無駄がない。しっかし頑丈なやつだな。 「速い!?」  だが、グラ子が懐に入り、攻撃に入るその瞬間。  驚くサファイアの顔がにやりとゆがむ。 「不意打ち女神爆砕!!」  右手に圧縮し続けた魔力を、迫るグラ子の拳にぶつけ、爆発させる。 「おおー! やるじゃねえか!」  わざと目くらましに拡散波を撃ったのか。本命は右手の魔力による必殺技だ。 「いいですよー! サファイアー!」 「やりますね」 「うぐっ……なんだこの膨大な魔力は……」  グラ子の鎧が、右腕から胴体の右半分まで砕けている。  結構なダメージみたいだな。 「不意打ちでわたしに勝てる女神なんていないわ!」  大きな胸を張ってVサイン。まあなんとも無邪気な笑顔だ。 「女神としちゃアレだが、いいぞー! いい工夫だ!」  かなり感心した。これは嬉しい。ちゃんと成長してやがる。  なんだよやるじゃねえかおい。これが教える楽しさってやつか。 「くっ……挑発したのも、我がエネルギー波にまっすぐつっこむよう仕向けたのか!」 「へ? ああ……そ、そうね! うん、そうそう! そんな感じの、そういうあれよね!」  あ、そこまで考えてないなあいつ。いやまあ一歩前進だよ。褒めよう。 「とにかくよくやったぞ!」 「ふふーん! もっと褒めなさい! 崇め奉りなさい!」 「……正直侮っていた。我の油断が招いた結果だ。受け入れよう。そして……」  グラ子が高速で動く。鎧を着ているのに、音速の四十倍くらいか。  そこそこだな。サファイアの動体視力では追いつかない。 「消えた? ちょっとどういうことよ!」 「落ち着いて! 防御魔法よ!」 「もうあんまし魔力残ってない!」 「残せっつってんだろ!」 「あれで倒れないとかありえないのよ!」  言っているうちに背後に回られてしまう。 「うしろだ!」 「へ?」 「ここからは……手加減抜きだ!」  サファイアの背中に蹴りが突き刺さり、思いっきり体勢を崩される。 「い……ったいわね!」 「はああぁぁぁ!!」  乱打が続き、さらに倒れかけたサファイア。その足を掴んで振り回される。 「ちょ!? うわわわわわわわ!?」 「終わりだ!」 「きゃあぁぁぁ!?」  すっ飛ぶサファイア。危険なので、衝撃を殺して受け止めてやる。 「おっと、危ねえ。無事か?」 「ああぁぁ……ん? 先生?」 「おう、先生だぞ。最後まで防御魔法を解かなかったな。偉いぞ」  回復魔法をかけながら、俺にできる精一杯の優しさで、頭を撫でてやる。  もうちょいガキの女神なんかを褒める時にするもんだが。  なんかこいつは見た目よりガキくさい言動だからな。ついそうしてしまう。 「ん、まあ……当然よ…………ありがと」 「よし、選手交代だ」 「では次鋒、ローズがお届けしましょう」  サファイアはベンチで休ませる。  カレンがふりかけ食わせようとしてくるので、拒否しながら戦闘を見よう。 「新たなる脱衣闘技、お見せします」  マントの下は白のマイクロビキニ。そこまでは変わらず。  だが魔力によって、マントが宙に浮いている。 「ほう、なんか思いついたみたいだな」 「いきます」 「よかろう。我が闘争本能を満たせ」  先程のグラ子とほぼ等速で駆けるローズ。 「接近戦主体か? だが遅い!」  背後のローズに向けて回し蹴り。だがその足が届く前に、マントが回転しながらグラ子を捉える。 「なに!?」 「いきます。瞬間脱衣!」  瞬時に全裸になったローズのラッシュが始まった。  動きが、目に見えて良くなっている。  地道な修行とヴァンパさんとの戦いで、何か掴んだのかもしれない。 「ふん、舐めるな露出狂が!」  繰り出される拳。だがマントが視界を遮る。  一歩退くグラ子を、マントに身を包んだローズが追う。  その両手には炎の魔術。 「フレイムドライバー!」  螺旋を描く烈火の一撃。まともにくらって、爆煙に飲まれるグラ子。 「ぬぐうおおおぉぉ!?」 「おぉ、魔力が瞬間的に上がったな」 「ええ、服を着ていますからね」  いつの間にかビキニも着ている。そこから導き出せる答えは。 「そうか、マントを魔力で操って……」 「魔法を使う時だけくるまっているのです。しかも着せ替え機能と、服の回収機能もつけました」 「面白い。いい発想だぞ!」  サファイアは圧倒的な戦闘センス。いわば野生の勘だ。  対してローズは創意工夫。できることが多いから、選択肢も組み合わせも多彩だ。  頭の回転は早いタイプなのかもしれない。もしくは研究熱心か。 「やるじゃないローズ! そのまま決めちゃいなさい!」  しかし、優勢だったのはそこまで。もともと本番で使ったことのない技能だったんだろう。持久力がなく、ローズ本人のスタミナも多くはない。 「動きが鈍くなってきたな。受けよ我が秘剣! ビーナスボンバー!」  完全に手からビームを出している。秘剣の意味がわからん。  あと技名がダサい。魔力的にはそこそこだな。 「障壁!」 「馬鹿め! 貴様は圧倒的に経験が足りんのだ!」  サファイアがやったことを、そのまま魔術障壁に向けて放つ。  グラ子がやったのはそれだけ。なのにサファイアの一撃より威力がちょっと上だ。  四十八位だっけ? そこそこ強いんだな。 「しまっ! うああぁぁぁ!?」  これにてローズ脱落。素早く回収して回復。ベンチに寝かせる。 「お疲れ。よくやった」 「負けは負けです」 「それでも前に進んでいるさ」  現時点で完成している必要はない。ここは再教育施設。  進歩しているということが大切なんだよ。 「あまりにも未熟。次はどちらだ?」 「わたくしがお相手いたしますわ」  なんか昔のお嬢様口調に戻ってないか。  追い詰められると口調が素になるんだよな。 「ほう、少しはできるようだな。歩く所作だけでわかるぞ」 「あら、それは光栄。ならば、油断せず本気で来ることをおすすめいたしますわ」 「カレンってあんなにがっつりお嬢様言葉だったかしら?」 「最初はあんなだったぞ。徐々に世界を救う使命と、女神っぽい口調を突き詰めていって普通になった。今は俺の補佐だし、普段から気を遣ってんじゃねえかな」  わたくし、と言っているのはその名残。カレンっぽくていいと褒めた気がする。 「無用な気遣いですね」 「まあな。色々気負ってんじゃねえかな」 「ちゃんとケアしてあげなさいよ?」 「わかってるさ」  話している間に戦闘は始まった。  正面からの打ち合い。完全なる接近戦だ。 「なんだこいつは……練度が他の連中とは明らかに違う」 「これでも修練を積みまして、おいそれとは負けませんわよ」 「ふん、もとより勝ちとは奪うもの。負けを待つなど言語道断。ゆくぞ!」  グラ子が壊れかけの鎧を脱ぎ捨て、半分特攻のように打ち合いを続ける。  攻撃を喰らいつつも前進するグラ子。  逆にカレンはじりじりと後退を余儀なくされていた。 「あー……まずいな。自己再生持ちか」 「どういうことです?」 「あいつ治癒能力が高い。ほっといても再生するタイプだ。カレンは相性悪いぞ。現状ふりかけと魔力を撃ち出すくらいしかできん」 「一撃で倒すしか無いってこと?」 「もしくは再生能力を遮断する技能が必要だ」  カレンは攻撃を避け、いなし、カウンターを叩き込む。  ふりかけスプラッシュも混ぜるが、効果は薄い。  再生のほうが早いんだ。 「どうした? もうスタミナ切れか?」 「いけませんわね。ここまで力が落ちているとは。ですが、いくらでもやりようはありますわ」  足で撹乱しようとも、グラ子の反応速度が上回る。  駆け回る分だけカレンの体力が減っていく。  そこを見越してグラ子が迫る。 「今ですわ!」 「なに!?」  突如動きを変え、腕を取って投げ技から関節技へ。 「ぐう!?」 「このまま大量の魔力を流し込めば、内側からのダメージで、再生能力も止まるはず!」 「見抜いていたか! しかもこれは……なんだ? 本当に能力が低下して……?」  実戦の勘……能力が拮抗している相手との戦い方は抜け落ちていない。 「やるな。このままいけば勝てるかもしれない」 「カレンに信頼を寄せすぎです」 「ん? そうか?」 「弱体化してんでしょ? 全盛期とか知らないけどさ、わたしらと変わんないわよ?」  無意識に全盛期基準で考えているのか。  今の実力は見た。そのうえでいい勝負に見えるが。 「よくやった。褒美に我が全力をお見せしよう」  グラ子の体が発光していく。内側から溢れる力が漏れ出しているようだ。  目から光がビームみたいに出てるし。 「ありゃちょっとやばいな」  爆発が起こり、中心にいたカレンはモロに食らってしまう。 「うあああぁぁ!?」 「くっ、くははははははは!! せめてこの姿を目に焼き付けて散るがいい!」  倒れているカレンに、未だ敵意が消えないグラ子。ちょっとやばいな。 「止めた方がいいんじゃない?」 「アレは三対一でも勝てませんよ」 「ここらが潮時か」  カレンももう疲労困憊だ。続けても何もできないだろう。  二人の間に入り、カレンを回復してやる。 「悪いなグラ子。ここまでだ。お前の勝ち」 「ふざけるなよ。こうなってしまっては……魔力が切れるまで止まらんぞ!」  身体そのものが三倍くらいになって、電球みたいな光り方してんな。  どういう原理なんだろ。人間型じゃない女神が、形だけ人に似せていたのかも。 「先生……わたくしはまだやれますわ」 「やっても大怪我したら意味ないだろ」 「どちらかが果てるまで終わらん! この滾る力を……全力を持ってぶつけ合うこと! それこそが我が望み!!」  グラウンド全体が激しく揺れている。  魔力の波が地形にまで影響しているのだろう。 「うるさい。今日はもう終わり」  拳を軽く腹に一発ぶち込んで、グラ子の魔力をふっ飛ばす。 「なばあはあぁ!?」  身体まで粉々に吹っ飛ばないように調整した。  うずくまっているが、命に別状はないだろう。 「魔力も全部散らした。帰るだけの力は残しておいてやったから、今日はもう終わりだ」 「ば……か……な……なんだお前……の……その力は……人では……ないのか?」 「全員保健室行くぞ。一応変な怪我してないかチェックだ」 「覚えていろ……必ずや……貴様らを倒しにやってくる」 「できれば二週間ぐらいしてから来てくれ。鍛えておくからさ」 「軽いな……忘れんぞ……さらばだ!!」  グラ子もいなくなったし、とりあえず異常がないか確認して、休ませる。  反省会は……夕食で、もしくは明日でもいいな。今は生徒の疲労回復第一だ。
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