9 / 9

青ひげ4-2

 大変長らくお待たせしました。  オークションの開幕です。  アナウンスを受けて会場に向かう。  会場には五百人ぐらいいるだろうか。  着ている服の質感だったり、従者を連れていたりと、誰も彼もが一目でお金持ちだと分かる。  オークションは札を挙げて買値を言う。そして一番高額を上げた人のものになると単純なルールだ。  まずは代表兼進行役として、青髭さんの挨拶から始まった。 「今回の品も一流品ばかりだ」  水のようなアクアダイヤや有名な鍛冶職人の業物、魔女殺しの花で作った秘薬、あとはイーブイ・ギアも何点かあった。  記憶があってもなくても私には馴染みのないものだっただろう。  なんとなく高価なものということだけは、ひしひしと伝わってきた。 「さてもう一つ聞いてくれ。隣街のニペリッパの子ども消失事件は六都騎士が投入された。もうじき解決するだろう」  ジャンクさんは隣の人にそのニュースについて尋ねる。   「街中の子どもたちが笛の音に誘われてどこかに消えてしまったという事件ですな。何らかの怪奇が関与しているという噂もありますな」  ヤギのようなヒゲをはやした男はそう答えた。 「事件は解決されるだろうってことで、貿易ラインの規制が解除された。そのおかげで、すごいお宝が流れてきた。それが今回の目玉だ」  少しだけ声を大きくした青ひげさん。  会場はあれやこれやものを言う声に包まれる。 「何だと思いますか?」  なんとなく、周囲の雰囲気に合わせて、聞いたみたけど、ジャンクさんはすまし顔で、さぁねと言っただけ。 「メロ、疲れたの」  メロは軽く足をジタバタさせている。  絶妙な間を持って、青ひげさんは会場を手で制する。 「人魚姫伝説は皆知っているな。王子を殺めろと言った魔女が人魚に渡したナイフがあったろ。それが今回の目玉だ」  そう言って錆び付いたジャックナイフような物を掲げる。半信半疑のざわめきは、さっきよりも大きく響く。 「俺は昔、海賊だったのはだいだいの奴は知ってるな。そのとき、人魚姫の怪奇をこの目で見た。だから保証しよう。これが本物だと」  疑惑が一気に解消される。  青ひげさんの一言で、誰もが信じたようだ。  そんな挨拶のあと、早速オークションが始まった。  最初は真珠のネックレスだ。 「欲しい物があったら言いなさい」 「い、いいですよ」  どもる私と、わかったなのですと素っ気なく返すメロ。    しばらくの間、私たち三人は何も喋らずに会場の雰囲気を味わっていた。   「次は両刃の鉄の斧だ。特に紋などは入っていないな。良い斧だが特に著名な職人の品じゃないな。出品者は、えーと、黒い羽の女だ」  柄が赤い大斧。  名前を名乗らないで出品すると、特徴だけ言われるらしい。  ジャンクさんが目の色を変えた。 「まずは五万デミから」 「五百万デミよ」  いきなりの法外的な額に会場が困惑する。  ジャンクさんは椅子に座ったまま、よく通る声で言う。 「あたしぃは鍛冶職人をしていたことがあるけど、その斧はすごい一品よ。五百万デミでも安いものよ」 「おもしれぇ、五百十万デミだ」  そう名乗りをあげたのは青髭さんだ。 「俺も目利きには覚えがある。確かに良い斧だ。コレクションに欲しい」 「あたしぃは実用よ。五百五十万デミ」  その後、五百六十万、五百七十万と順に上がっていき、最終的に一千万デミでジャンクさんが落札した。今日の最高額を大幅に更新だ。 「お金あるんですか」  私のワンピースは三十万デミだ。メロの服も合計十数万。いくらお金持ちだからといって、一千万デミなんて払える訳がない。 「無いわ。どうやって作ろうかしら」  そういうジャンクさんは、とっても悪い顔をしている。 「オカマの鍛冶職人よ。これは一旦保留にしてあとで俺と話し合おう」 「いいわよ」 「他に名乗りをあげるやつはいるか  いるわけない。会場にいるのもかなりのお金持ちばかりだろうけど、この二人だけ金銭感覚が狂っている。 「ならとりあえず、最初の額で落札としておこう」  その後のオークションは、法外的な跳ね上がりを警戒してかあまり盛り上がらなかった。  結局、目玉商品だった人魚姫のナイフは、青ひげさんが落札した。  なんとなく悪いことをしたような気がして、周囲の視線が痛かった。  オークションのあと青髭さんの家にお呼ばれした。  青髭さんの家は、マナヒィア産業ラインの片隅にある。  いや正確には家じゃない。そびえ立つという表現が相応しい古いお城だ。 「マナヒィアは人魚姫に恋した王子が住んでいたというのは知っているか? この古城こそが王子の家だった」  さらっと言っているけどすごい話しだ。おとぎ話に出てくるお城なんて。  ジャンクさんといい、青髭さんといい、なんだか金銭感覚が狂ってしまう。 「このお城に一人でいるなのですか?」 「何度か妻をもらったこともあるが、今は一人だ」  聞いちゃいけない内容かと思ったが、意外にも青髭さんはあっさりと答えた。  そして無数の鍵の束を取り出すと、どれだったかなとガチャガチャ音を立てながら探す。  少しして、お目当ての鍵が見つかったみたいだ。ギーっと鉄の門を押し開け、中に入る。  感想はとにかく広い。広過ぎて、他に言葉が浮かばない。 「部屋のほとんどを持て余しちまってる」  ため息をつくように言う青髭さん。 「俺たちは商談だ。子どもには面白くないだろう。よしこれを貸そう」  そう言って鍵の束を私に渡してきた。 「一番小さい鍵の部屋以外は自由に遊んでいいぞ。まぁろくに掃除してないから汚いがな」  見ず知らずの私たちにこんな大切な物を渡せるなんて。 「行くなのです」 「あ、こら待って」  真っ先に飛んでいってしまうメロ。なんとなくデジャヴ。 「一番小さい鍵の部屋は入るなよ」  そう釘を指す青髭さん。  部屋のあちこちに蜘蛛の巣やホコリやらが溜まっている。  いろんな部屋がある。鎧やら武器のコレクションの部屋。女物の洋服の部屋。  どこからか、微かに声が聞こえる。この部屋かな。 「俺は昔海賊だった。風鉄戦争よりも前の話しな」  どうやらここは、ジャンクさんたちがいる部屋の隣のようだ。 「昔は夢の不老不死に憧れたもんだ」 「あたしぃとは大違いね。あたしぃの夢は昔から変わらない。平和な世界で死ぬことよ」 「そりゃ結構なことだ。俺も死に場所が定まらないなぁ」  あんまり盗み聞きするのもよくない。そう思って離れようとしたとき、ジャンクさんの次の言葉に引き寄せられた。 「あたしぃは風鉄戦争で死ぬつもりだったわ」  ってことは戦争の経験者なの!?  驚いて声を漏らしてしまったが、ジャンクの強さから妙に納得した。 「経験者か。すごい経歴だな。もう少し若ければ手合わせ願いたいところだが、あいにく年だからな。代わりに何か話しを聞かせてくれ」 「タブーよ。話せばきっと六都騎士に殺されるわ。あたしぃもあなたも、もし他に聞き耳を立ててるだれかがいたら、ね」  え、しかも私のこともバレている? 「それはごめんだな。そういえば、タブーといえばこれ知ってるか」 「いえ知らないわ。変わったタトゥーね」 「俗称はタブー・ギアだ。イーブイ・ギアをタトゥーのように人体に入れる技術だ」  直接、体に?とジャンクさんは疑わしい声を漏らす。 「そうだ。媒介がない分、メモリ本来の力をフルで引き出せるってわけだ」 「それじゃあ過負荷よ。体に毒だわ」 「なーに、サソリだって踏まなきゃ毒尾を刺しゃしない。使い方を間違えなきゃ力が手に入る。で、この銃みたいなのを使えばタブーポートを彫ることができる」 「いらないわ。というかだんだん商談に持っていくのね」 「もともとそのつもりだからな」 「で、あなたが本当に欲しいのは何」 「気づかれていたか。俺は……」  そのときメロが私の背中を叩いて名前を呼んだ。  私は声をあげて驚き盛大にズッコケた。 「アンヌ姉。こっちが一番小さい鍵の部屋みたいなの」 「こら、ダメでしょ」  今の音で盗み聞きしてたのが青髭さんにもばれたかな。よし逃げよう。  そうして他のところへ移動した。
いいね!
いいね!
いいね!
いいね!
良い
エロい
萌えた
泣ける
ハラハラ
アツい

ともだちとシェアしよう!

この小説を読んだ人におすすめの作品

ロッカーを開けて、異世界へと旅立とう
1
3
完結済/5話/4,257文字/20
2017年11月1日
伝説の英雄譚ーその英雄騎士団の記憶ー
連載中/118話/1,397,184文字/0
2018年3月7日
放課後たまごを買って帰るようお使いを頼まれたより子は、寄り道で奇妙なお店に入ってしまう。
1
1
完結済/1話/1,925文字/20
2018年1月8日
一人の少女から始まる、熱血ヒロイックアクションストーリー。ニチアサ特撮の熱さをここに!完結しました!
完結済/88話/318,376文字/0
2018年3月6日
神話
連載中/26話/8,685文字/0
2019年1月1日
不幸すぎる少女が幸せをつかむまでの話
連載中/1話/609文字/0
2020年8月29日