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青い薔薇 5

 少女は、豪華な調度品に囲まれた部屋の中にいた。知らない場所だ。  自分の村から離れ、攫われてここにいる。そこまでは自分でも分かっていた。 その部屋は明るく清潔で、とても攫ってきた人間を入れる部屋だとは思えなかった。彼女の知る限りでは、人間を拉致して監禁する場所は暗くてじめじめした部屋の中だったからだ。待遇も厚かった。食事は必ず暖かい豪華なものを給仕が持ってくるし、部屋の内装もホテル並みだった。そんな場所に閉じ込められて、少女は自分の格好を見た。  いつも着ていたポンチョも、厚い色鮮やかなスカートも、足を守る靴も、頭を守る帽子も、すべてが体から離れて、一枚のワンピースに変わっていた。黄色く華やかなワンピースだが、少女はそれが気に入らなかった。しかし、脱ぐわけにはいかなかった。着替えがなかったからだ。  少女は、ここに来る前に一緒にいた考古学者の身を案じた。彼はいったいどうなってしまったのだろう。ここにいるのは少女一人だけだ。一緒に生まれ育った姉も、村の人間も誰一人いない。少女は一人だった。しかし、ここに連れられてきて、自分があの村から攫われて監禁されていることは理解できた。外にいる人間がそう話していたからだ。  少女は、この場所から逃げたかった。考古学者や姉に会いたかった。しかし、その希望を叶えてくれる人間は誰一人いなかった。  少女は、自分の身にこれから何が起こるのか、知りたかった。自分がどうして村から離れたこんな場所にいるのか、知りたかった。怖くて、不安だった。体を支える手が震えている。  少女は、考えた。おそらく、自分が攫われたのはシリンゆえだろう。あの考古学者はシリンのことを研究していた。そこで少女は考古学者と知り合った。彼は村を荒らすことなく、村に溶け込むように皆と仲良くなっていった。しかし、その考古学者も少女と一緒に村から姿を消すことになった。シリンを知るものだからだ。少女をさらった人間はこう言っていた。少女を庇う考古学者にこう言っていた。 「その娘と一緒に来てもらおう、クリスフォード博士。あなた方の研究は、すでにもう、我々のものなのだから」
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