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第十五部-ダンジョン攻略2

「ここが次の階層…、ねえ? 敵の気配が一切無いんだけど」  美玲は皆が思っていた事を、いち早く口に出す。 「って事はこれで終わりか?」  周囲を警戒しながら、ティルは難しそうな顔をしながら結論を急ぐ。 「そんなに焦んなくても良いだろ。取り敢えずは色々とこの階層を見てみよう」 「陵の言う通りだな。一応、纏まって動いた方が良いか?」  クリスタルは陵に問う。 「そうした方が良いだろうな。さっきの敵も結構面倒くさかったし」  陵はそう言うが、その言葉に反する様にあっさり倒してしまっている為、あまり説得力がない。 「陵が言うのなら、それで良いと私は思うが…」  クリスタルはティルとローズに視線を向けて訊ねた。 「問題ねえな」「そうだな」  二人共、一様に陵の言う通りにするつもりな様だ。 「ま、じゃあ警戒しながら行こうか」  前方にクリスタルを、後方にティルを、陵と美玲を真ん中に、そのほんの少し後ろにローズ、という隊列でダンジョンを進んだ。 「…何もねえな」 「…だな」  暫く歩き続け、ティルの呟きを聞き、陵は同意を示す。 「ちょっと、しゃがんでて」  陵は周りに告げると、光線銃サブマシンガンを辺り一面に撃ちまくる。だがしかし、何の反応もなかった。 「うーん…、どうしたら良いんだろ?」  反応が何も無い以上、撃った陵も真剣に悩まざる得ない。 「…バギーを出して、一気に奥まで駆け抜けようと思うんだけど、皆はどう思う?」  このままのんびりと歩いて、時間を浪費するのは避けたい。 「良いだろ」「問題無いと思う」「歩くの面倒くさいし」「問題無い…な」  陵の言葉に全員が賛成を示す。 「じゃあ、それで行こう」  陵のアイテムボックスから、バギー車が取り出された。 ☆☆☆ 「で、行き止まりまで走った訳だけど…」  とある大扉の前で、陵はバギーを停止させる。かなりの距離を走ったのだが、敵の影は一切無かった。 「考えるも何も、開けるしかねえだろ?」  ティルは何かを考え出した陵に問い掛ける。 「そうだな。さっさと行こうか」  ティルの言う通りだと、彼もバギーを手早くアイテムボックスに戻し、大扉の前に並んだ。 「ティルかクリスタルか、この重そうなの開けられる?」 「ふむ…、ティルがやった方が良いだろうな」  陵の質問に、クリスタルはティルを推す。 「そりゃあな。俺はクリスみたいに結界を張れる訳じゃねえし。んじゃあ…開けちまうぞ?」  ティルは周囲を見回して、大扉に手を掛ける。 「良いよ」 「んじゃ」  ティルは大扉を殴り壊し、吹き飛ばした。その次の瞬間、クリスタルの守護結界が張られる。…が、何も起こらなかった。 「…あれ、ダンジョンコアだな」  陵は部屋の奥に-祭壇の様なそれに-置かれている半透明な円体のそれを見て結論付ける。 「…何処かに罠があるのかもよ?」 「ありそうなんだよなあ…」  ここまで大きな扉を見て、それに似合う部屋を見て、罠が無いと考えるのは、些か無理があった。 「クリスタルは美玲と、俺はティルとローズと、あの祭壇っぽい場所まで転移しよう」  罠を警戒し、彼は部屋を歩かない選択をする。 「じゃあ、行くよ」  各自、転移を行い祭壇の前に移動した。 「取り敢えず、俺と美玲が触ってみるから…」 「私とティルが護れば良いのだな?」  陵の言葉にクリスタルは自らのすべき事を決定する。 「そうだね。じゃあ…陵」 「ん、精神攻撃系かもしれないから、一応気は抜かないように」 「おっけ」  美玲と陵は互いに言葉を交わし、ダンジョンコアに触れた。 ☆☆ 「精神攻撃系かな? やっぱり」  陵と美玲は辺り一面が全て真っ白な部屋に立っていた。 「ようこそ、終わりのダンジョンへ」  彼らの前に、白髭を蓄えた男性が現れた。 (胡散臭いな…) (ね)  陵と美玲は互いに視線で会話をする。 「胡散臭いとは…酷い言い草だな。…ん、なんだと?」  白髭の彼は彼らの思考を読んだらしい。…が、それもすぐ様不可能になる。  "相思狂愛"がその能力をオフにしたから。 「…ここのダンジョンコアは特別なんだな。今までのダンジョンコアにお喋りをするのは居なかった」 「だろうな。私はダンジョンの意思では無いのだから」  陵が口を開くと、何やら面倒な事実を彼は吐き出した。 「…そう面倒くさがるな。私の事は惑星の意思だと思えば良い」 「いや、十中八九面倒くさいよね。出来れば関わりたくないよ」 「最後まで話を聞け」  美玲が嫌味を言う。それが気に触ったようで、ムッとしながらも彼は反発する。 「じゃあ、さっさと要件を話せよ。前座は要らない」 「…何故、そうも先を急ぐ?」 「お前に興味が無いから、それ以外にあると思う?」  惑星の意志からすれば、彼らが急ぐ理由が全く理解できない。  彼らからすれば、見ず知らずの他人の言葉に耳を傾ける方が理解できない。 「…ならば、お前達が欲しいものを一つやろう。であれば私の話を聞いてくれるか?」 「そんな物ないよ、あったとしても…お前には頼まない。後、さっきは流したけど、人の思考を勝手に読む不届き者を信じるのは…ちょっと難しいかな」 「ぐぬう…」  "相思狂愛"が勝手に発動して、勝手に対応した、つまり、彼らの気に入らない事を白髭の彼は行なったことになる。 「…まあ良いや。このダンジョンの歴史は少しだけ気になるからね、私達の質問に答えてくれる? そこから話を始めようよ?」 「うん? まあ、構わないが…」  彼は美玲の言葉に少しだけ困惑する。 「じゃあ、このダンジョンが惑星の記録に無いのは何故?」  陵と美玲の立場上、シンの"惑星の教科書"という能力は知っている。 「それは、私の友である最高神の…その妻の遺体が安置されているからだ」 「…最初っから爆弾発言出たよ」  この世界の最高神の遺体が、"始まりのダンジョン"に安置されているのは陵も美玲も知っていた。だがしかし、妻が居たという話は聞いた事がない。 「最高神亡き後、惑星の私は彼に頼まれた妻の保護を行った。だが、最高神亡き後では…彼女も存在し続ける気力も無かったのだろう。あっさりと…彼が死んでから100年後には、既に息を引き取っていた」 「…なるほど、奥さんも力のある神様だったんだ」 「裏切り者が来ないように、地上での痕跡を全て消した。私の意思も…ダンジョンコアへと押し込み、地中深くへと消えた。亡くなったあとは…ずっとそのままだ」 「…そう、わかった。ありがとう」  多少要らない情報も含まれたが、それでも彼らは黙って聞いていた。 「…で、貴方の望みは?」 「特にはない。…が、私の後ろにある、彼女の遺体は丁寧に扱ってほしい」 「ん、わかった。じゃあ…もう良いよね?」  美玲は現世に戻りたかった。強引に戻る事が出来ない訳では無い。 「…ありがとう。お礼として、君達には、僕の記憶をあげよう」   ☆☆ 「戻った。…何か、頭にいっぱい入ってきたから気持ち悪い…」 「わかる…」  クリスタル、ティル、ローズの姿を確認して、少し青白くなった顔の、その額を抑える。 「やはり、精神攻撃の類か?」 「いや、親切心が…ちょっと重たい物だった、って感じかな」  クリスタルの心配そうな言葉に、美玲は苦笑を返す。 「…ちょっと、座らせて」 「俺も座りたい。というか、休憩したい…」  美玲も陵も、半強制的に地面に座り込まざる得なかった。
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