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第四部‐初めての出会い①

 あれから3日が経ち、その早朝。 「ん…、…時間ですね」  レイは自身が横になったベッドから起き上がった。 「んう…ふあ…相変わらず早いわねえ」  背中合わせでレイとミリは眠っていた為、レイが起きた事により、ミリも目覚めてしまった。 「起こしてしまいましたね…」 「ふあ…気にしなくて良いわよ。せっかく早く起きたのだから、先に一仕事終わらせちゃうわ」 「ミリも働き者ですね」  レイはこの街を手に入れてからは、彼女は良く働いていると思う。 「貴女に言われても嫌味でしかないのだけれども…。ああ、レイ、今日はティルについて行ってくれるかしら? …もちろん朝食の後よ」  だがしかし、屋敷を1人で管理し、ティルに訓練を付け、アリス達の面倒を見ているレイ程では勿論ないのだ。 「ティル…と言いますと、とうとうスラムに行くのですね?」 「ええ、スラムに行くのよ。今はレオンが居ないから…護衛って形ね」  ティルが昨日の夜、ミリに"明日、行ってきます"と告げたのだ。拾ってきた少年の問題はもう取り除けたのだろう。 「わかりました。昼食は一応作っておきます。詳細はアリスに聞いてください」 「ええ、わかったわ」  レイはベッドから降りて、地に足を着ける。そして、自らが着ている寝間着を、いつもの白いワイシャツと黒いズボンに変えた。  ミリもそれに追随する様に地面に足を着け、レイよりもゴシック調の白いワイシャツを着込み、一般市民が着るような赤いドレススカートを履いた。勿論ロングだ。 「…シンは、起こさなくても良いわね」 「そうですね。目に見えない所で何かをやっているようですから」 「やっぱり? 何か最近大人しいと思ったのよね。第二皇子だって、シンが万全の状態なら帝国に投げ返してそうだし…」  物理的にである。 「…結局、主が話すまで待つしかありませんからね」  レイもミリも、シンが話さないのならそれで良いと考えているのだ。一々嫌々ながらに話されても対応に困ってしまうだろう。  だから聞かない。 「じゃあ、行くわよ?」  ミリはチラッとレイの方を見た。 「ええ、行きましょう」  レイもその視線に返し、2人は共に寝室を後にした。  ☆☆☆☆ (…気を使わせたか?)  彼女らが出ていってから暫くが経ち、シンは目覚めた。それと同時に彼女らが寝室に居ない事も理解した。 (流石に…最近は無理し過ぎているのだろうか?)  まだ鈍い頭を起き上がらせ、ベッドに座り直した。  最近、シンが新たに始めた事は、"惑星(ほし)の教科書(あるきかた)"を用いて、自身が新たに手に入れる世界に欲しい存在を取捨選択する事だ。  その取捨選択をするに当たって、様々なモノを調べなくてはならない。それらの情報は恐ろしく莫大で、シンが"多重思考"を用いても簡単に終わらない程なのだ。  その並列している数、なんと幾千以上。  ミリやレイが気が付いたのだから、つまり、日常生活にも少しだけ影響が出ている。 (…ミリの元へと行こう)  シンはふらふらと、彼女が居るであろう書斎に向かう事にした。  ☆☆  屋敷の玄関前で…。 「レイ様、今日はよろしくお願いします」  ティルが言い、少年と共に頭を下げた。 「ええ、ティルに何かあっても困りますからね」  レイは素直に受け止める。 「…ところで、彼の名前は決まったのですか?」  そして、少年をちらりと見てからレイは訊ねる。 「はい。彼の名前はホリンにしました」  どうやら、ティルは今まで面倒を見続けた少年に対し、"ホリン"と名付けをしたようだ。 「なるほど、では、これからホリンと呼ばせていただきます」 「わ、わかりました」  レイが少年(ホリン)にそう言うと、ホリンは動揺しながらもそう返した。  ホリンはティルよりも偉い存在と話す事を慣れていない。しかも今目の前に居るのは、ティルを毎日の様にあっさりと殴り倒しているレイである。  動揺には焦りと恐怖が入り交じっていた。 「ホリン、そんな顔したら失礼だろうがっ!!」  だが、そんなホリンにティルの叱責がとんだ。 「はっ、はいっ!!!!」  動揺には怒られたショックも入り交じってしまった。 「お前が食べ物を噛めない時に、噛まなくても飲み込めるようにって食べ物を作ってくれたのはレイ様なんだぞっ!?」 「うっ…、はい。…ごめんなさい」 「第一、取って食われんならもう食われてる。それから、謝るのは俺にじゃねえ」  目に見えてホリンはしょぼんとしていた。犬耳が見えていたら、きっとヘタっているだろう。 「ごめんなさい、レイ様」  ホリンは言われた通りに謝った。 「はい、確かに聞き届けました」  レイがホリンの頭を撫でてそう言った。そんなレイにホリンは心底安堵する。 「ホリン、今日は貴方が主人公です。貴方がスラムに居る子供達を説得する鍵です。だから…肩の力は抜いておきなさい」  そして、レイはホリンに目線を合わせる。 「は、はいっ!!」 「では、ティル、行きましょう」  ホリンの声を聞いて、レイはティルの背中を押す。 「わかりました。…ありがとうございます」  ティルはホリンのモチベーションを上げてくれたことに、レイにお礼を言った。 「ふふ、貴方は少し聡明過ぎます」  あまり背丈の変わらないティルの頭にも手を伸ばし、クシャっと撫でた。  そして彼らは、屋敷の敷地から外へと出たのだった。 ☆☆☆ 「さて、ここからが本番ですか」  そして、スラム街の入口となる路地の前にたどり着いた。 「ホリン、俺に後ろに居てくれ。レイ様は後ろでお願いします」 「好きにやりなさい」 「…はい」  ティルが初めてシンに意見し、行う許可を得た。それを成功させるのか、はたまた、失敗させるのか…。  _____やるんだ。  ティルは心に固い決心をして、ホリンを連れてスラム街へと向かって行った。  すると、そんなティルを牽制するように石が投げ付けられた。 「ぐっ…待ってくれっ!!」  ティルは避けられたが、あえて避けなかった。だが、そんなティルを守る様にホリンがその石を体で遮った。 「ホリンっ!?」  ティルは自身を信用してもらう為に、まずは自身の体をボロボロにしようと考えていた。それは、周りに居る汚れた存在達と同じ立場で、自らが話す為だ。  だが、それをホリンに遮られた。しかも、あろう事か、ホリンの頭からは血が流れていた。 「俺はここでリーダーを務めていたガイダだっ!! 死にかけてたガイダだっ!! 兄貴なら俺達と共に生きてくれるっ!! 現に俺がこうやって生きてるんだっ!!」  ホリンは旧名を名乗り激昴する。とても大きな声で、喉が枯れるくらいに吠えた。 「本当にリーダーなのか…?」 「お前は…、良かった。…間に合ったんだな」  このスラム街で、次にストリートチルドレンのリーダーとなる筈だった‐ホリンはそう記憶している‐男の子がホリンの目に前に現れ、そして安堵する。 「間に合ったってどういう事だ?」 「兄貴には話してませんでしたね。俺達は年長がリーダーになるんですよ。彼は俺の次に…」  ティルは知らなかった事を突然説明されて、理解した。"年長が先に死ぬ"事を。 「そっか、お前らは年上から死んでいくんだな?」 「はい。でも、間違ってないですよね? 俺達は14を超えるとだいたい死にます。でも…俺より年下は生き残る。ここでは短い生涯だけど…それでも人間らしい生き方が出来てると思いませんか?」 「…って事は、お前の栄養失調って…」 「ははは…兄貴ならわかりますよね?」  ホリンは自身が食える物も自身よりも年下な子供に分け与え、そして働いた。だから餓死寸前だった。 「路地から出る寸前で倒れちゃって動けなかった所を兄貴に拾われたんです。…ありがとうございました」 「俺は運んだだけだ。わりいな、自分がやった事にも自信が持てなくて」  ストリートチルドレン達が見ている中で深々とティルにお辞儀したホリン。だが、それすらもしっかりと受け止められないティルは少しだけ心に痛みを感じていた。 「…すまねえ、リーダー…その、1人、もう死んじまいそうなんだ…」  だが、現リーダーはすまなさそうに言った。 「え?な、なんでっ!?」 「病気だ。…実はな、何処かの国の騎士か知らねえんだけど…俺達に食べ物を恵んでくれてるんだ。けどよ…治らねえんだ…」  年上から死ぬのがルールだろっ!? とホリンは叫んだが、今のリーダーの男は悔しそうにそう言った。  ホリンからは"なんでっ!?"という言葉が表情からありありと伝わってくる。  つまり、餓死寸前では無く、病死寸前だと言う事だ。 「おいっ!! そいつの所に案内しろっ!! まだ間に合うかもしれねえっ!!!」  ティルは自身の親が恐ろしい存在である事を知ってる。だから…叫んだ。 「…頼む、現リーダーっ!!兄貴は信用できるんだっ!!」  ホリンが今のリーダーに土下座した。"大人は皆ろくでなしだ"けど"信じて欲しいっ!"そう切に思った。 「…わかった。兄貴で良いか?」 「おう、…それで良い」  現リーダー役の男の子にもそう言われたが為に少し驚いたが、何とか感情を殺して返事をした。 ☆☆☆☆ 「…すまないな。助けてやれなくて」  丁度その頃、スラム街のとある行き止まりでは、女の子が簡易ベッドに寝かせられていた。  そして、そんな女の子の手を壊れ物を扱う様に握る、年若い騎士が居た。 「…ううん…、…お姉さん…が…くれた…食べ物…美味し…かった…よ…?…」 「ふふ、そう言ってくれると嬉しい。だが…そんな言葉は要らないんだ。…今回ばかりは騎士を選んだ私が悔しいよ」  年若い騎士は一般騎士よりも恐ろしく強い力を持っている。そして、"女性"で"魔力が上手く使えない"欠陥品の様な騎士だ。  言わずともわかるだろうが、彼女は恐ろしく鍛錬をし、積み上げてきた。  そんな彼女からポロっと漏れた言葉にはどれだけの重さがあったのだろうか? 「・・・」  そんな事を口にしながらも女の子の頭を撫でた。 「…お姉さん…凄いんだね…」 「努力してきたからな。マトモに食べる事すら出来なかった君達に…凄いと思われなかったら恥だろう」  彼女が本気で思っている、嘘偽り無い本音だった。  だが、そんな-女の子から見て-優しかった彼女の顔が一変する。そして、瞬時に彼女の両腕にはバックラーが装着された。  彼女は本能レベルで、レイという恐ろしい存在に気が付いた。 (…これは勝ち目が無いだろうな)  彼女が心の中で自嘲気味に呟く。だが、それでも逃げようとしなかった。 (ここで置いて逃げる選択肢は無い。…最悪舌を噛んで死ねば良いさ)  そして、彼らが来るであろう行き止まりとは正反対の曲がり角を彼女は見つめた。 「クリスタル様っ!?彼らは味方ですっ!!! 武器をお下げくださいっ!!」  その曲がり角から1番初めに姿を表した現リーダーは、闘気が溢れ出している彼女を見て慌てて叫んだ。 「…味方…だと?」  リーダーの言葉に呆気に取られた。 「はい」 「…すまない。そこの白いシャツに黒いズボンの婦人はそこで待機していてくれないか?」  だが、それでも冷静さを欠かなかった。本能が警鐘を鳴らすレイにだけは、そこで待ってくれるように彼女は頼んだ。 (…素晴らしい人材ですね)  レイは指示された様に大人しく曲がり角寸前で待機した。一刻の猶予も争う状態で彼女も言い争う気は無い。それからティルと同じ位の年である彼女に内心で敬意を表した。 「現リーダーで良いな? こいつは今すぐに連れて帰る。それから…ここの孤児を全員、代表の館に連れてこい。ホリンが残って説明してやってくれ。一刻の猶予もねえから走るぞっ!!」  そんな中、ティルは彼女をすり抜けて女の子を自身の腕の中に抱え、切羽詰まった様に指示を出した。 「はいっ!! お任せ下さいっ!!!」 「うしっ、行くぞっ!! 後もう少しだから気張れよっ!!!」  ティルはきっと大人達が治してくれると信じて、女の子を丁寧に抱えたまま走り出した。 「あっ!? おいっ!!」 「クリスタル様、今は猶予がありません」 「むっ…、そうか…わかった…」  彼女は突然かっさらおうとするティルを止めようとしたが、現リーダーに言われ、止めるのをやめた。  彼女は誰がどう見ても瀕死だ。リーダーが味方だと言っていた以上、死ぬ寸前である以上、自身もそうするしかないと理解出来たからだ。  当然それは、あの女の子が死にかけで、奴隷にされても働いていけない事を彼女は理解しているからだ。  何をするにしても、女の子を救わなければ、女の子を持っていく意味が無い事を理解していた。 「今はホリン兄貴って呼んだ方が良いか?」  ティルが猛スピードで走っていったのを見届けてから、現リーダーが言った。 「ホリンで良いよ。俺は兄貴に助けられただけだし」 「…ホリンは本当に信用出来ると思ってるのか?」 「思ってる。だから…皆にも来て欲しいんだ」 「・・・」  現リーダーは悩んだ、本当に信用しても良いのかを…。 「ホリンだったな? 本当に信用出来るのか?」  騎士の彼女は厳しい目付きで言った。貴族が孤児を騙して奴隷にしてしまう事も多くないからだ。 「大丈夫です、信用出来ます」 「君は孤児が貴族などに騙されて奴隷にされる事実がある事も知っているのか??」 「…兄貴に限ってそれはねえよ。だって、兄貴も俺達側なんだ」  ティルの境遇を知っているホリンは、彼が自分達に理解を示してくれる事も知っていた。  そして、少しだけ騎士に対してホリンは怒った。 「ホリンっ!!止めてくれっ!! クリスタル様は俺達を助けてくれたんだっ!! 食事もくれたし…自分のアクセサリーとかも露店で売ってさ…」  騎士とは言え、稼ぎは少ない。だから、少しでも露店で自身の持ち物を彼女は売り捌き金に変えていた。  彼女は自身の親が自分の生活を保障してくれる事を見越して、ストリートチルドレンに食べ物を買い与えていた。  自身の装飾品を売っても自身の生活に影響は出ない。"私は子供だから食事などは親が面倒を見てくれる"、そう考えて事だった。 「それは…その、ごめんなさい…」  流石にホリンは謝らざる得なかった。 「ああ、いや…良い。そこまで気にしてない。…あの女の子は助かると、ホリンは本当に思うのか?」  彼女は更に聞いた。 「思ってます。兄貴が代表の息子って事になってるんです。兄貴は出来るだけ親様に頼らないんですけど、非常事態の時はなりふり構わず頼んでくれるんです」  ホリンは最初の方は歩けなかった。それでも普通より早く歩ける様になったのはティルが彼の面倒を見たからであり、更に言えば、リハビリをする為の道具を、シンに頭を下げて作ってもらったことが原因だった。  その時にティルが頭を地に擦りつけて、シンに頼んでいた事をホリンは知っていた。 「それで、私は動いても構いませんか?」  今まで放置されていたレイは彼女に問い掛けた。 「あっ!? 本当に申し訳ないっ!!」  彼女は綺麗に90度腰を曲げて謝る。 「いえいえ、…では動いても問題はありませんね?」 「ああ、態々付き合ってくれた事に感謝する」  付き合ってくれた、とは彼女の指示をレイが聞き届けてくれた事だ。 「構いませんよ、少しだけこの場で話をしませんか? どうやら貴女は慕われている様ですし、警戒を緩めるという意味でも…どうでしょう?」  レイはストリートチルドレン達が安心してついて来れる様にと、提案した。 「…ここで?」 「はい、この様に」  レイはあっという間にテーブルを1つと椅子を4つ用意してしまう。それを見ていた彼女は当然驚くが、顔には出さなかった。 「…ここまでされてしまっては断れないだろう」 「それは良かった。ホリン達もですよ、出来るだけ美味しそうな匂いのする物を出します。ですから、他の子供が集まって来たらそれらを与え、屋敷に連れて行けるように勧誘して下さい」 「わかりました。お前もだぞ?」 「あ、ああ、わかってる」  ホリンは現リーダーの男の子に言う。そして、レイと彼女は正面から対峙する様に向かい合って座った。 ☆☆☆ 「…すまない。少し緊張している」  それから暫く、彼女らは談笑を続けていた。テーブルには美味しそうな飲み物とクッキーが並んでいる。  そんな中、彼女はレイを前にして少し緊張していた。 「いえいえ、貴女は年若いのに素晴らしい腕前ですね」  レイが実力を隠しているのに彼女はそれを感じ取れてしまっている。それは凄い事なのだ。 「そう言ってもらえると助かる。私の父がそういう職業で色々と仕込まれているのだ」  苦笑をして彼女は返す。 「それは何とも、ふふっ、将来有望ですね」 「ははは…」  レイは本心でそう言うが、彼女にはそれが本音か世辞かはわからない為、流す事しか出来なかった。 (それにしても…よく教育されている娘さんですね。先程も子供達の変わりに毒味をしていましたし…)  レイが出したクッキーに初めに手を付けたのは彼女だった。それは間違い無く疑っての事だろう。当然、飲み物もいち早く彼女が手を付けた。  子供達が緊張していた事もあり、自然と彼女が一番初めに手を付ける形になっていたが、そこで他が食べるまで待たなかったのはそう言う事だとレイは理解していた。  その為に少し笑みを浮かべる事もあるが、彼女は本気で笑ってはいない。 (心から笑っていない…そう見抜かれるのは未熟だと言うのでしょうが、この年頃の娘でここまで出来れば文句なんて言われないでしょう)  レイは自身が信用されていない事も理解していたが、彼女を屋敷に招きたいとも思っていた。 「クリスタルさんで良いですか? 笑みはもう少し他人に気取られない方が良いと思いますよ?」  そこで敢えて欠点を指摘する事にする。 「…参ったな、バレていたのか」  すると、クリスタルと呼ばれた彼女はお手上げポーズを取った。 「ええ、そしてアドバイスを1つ。笑みを作る時は感情から作るのです」 「感情から??」 「はい。貴女が楽しいと思った出来事を頭の片隅に考えながらお話をするのです。さすれば、自然な笑みを作る事が出来ると思いますよ?」  因みに、今のレイはそれなりの笑みを浮かべて話している。いつもは表情を出さないが、今回の様に出す事も出来る。 「…失礼だが、参考までに何を思っているか聞かせてくれないか?」 「そうですね。…私は自身の教え子が新たな事を出来た時や…夫が私を妻として迎え入れた時でしょうか?」 「…なるほど。男女関係の話は良くわからないが…教え子というのは何となく想像出来た」  クリスタルにその手の話は一切無い。それは彼女が自国の男を全て断っているからに他ならない。 「では、よろしければ参考にしてください」 「ああ、ありがとう」  素直にクリスタルは礼を言った。腹を探り合っている最中に"楽しい事を考える"、そんな発想は彼女には無かったようだ。 「それから、出来れば貴女を屋敷にお連れしたいのですが…どうでしょう?」 「…そうだな。ここで断っても無礼だろう。孤児達が屋敷に移動する時に、共に訊ねさせて頂きたい」  クリスタルには当然、孤児達がどんな扱いをされるのかを見届けたいという想いもあった。 「ふふっ、構いませんよ。ホリン、そろそろ良い匂いに釣られてきた頃でしょうから、声を掛けて来なさい」  そんな彼女の思惑を理解しつつも、レイはホリンにそう指示を出したのだった。
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