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第一部‐洞窟を手に入れる。

 陵達は人街が近場にある山に辿り着いていた。 「この山のどこかに、洞窟があれば良いんだけどな…」  陵は人街が比較的近くにある山を見てそう呟く。近くにあるとは言っても10km以上は離れているようだが…。 「主、最悪私の力で穴を開けてしまえば良いのでは無いか?」  鬼神はそんな陵にそう提案した。 「…それも良いかもな?」 「私はそれで良いと思うよ?」  美玲もそれに同調した。 「崩れない頑丈な場所を探さないといけない」  そんな彼らに口を挟むように聖神がそう言った。地盤が硬くなければ穴を開けた所で崩れてしまう。 「…やっぱり、そういう事を考えるんだったら元々ある洞窟を使いたいな」  陵は聖神にそう言われ思い直した様に呟く。 「でも現実問題、これから別の似たような地形を探すのは面倒くさいよ??」  美玲の言う通りで、人街に近い山などそもそもあまり存在し無い。 「それもそうなんだよなー。…まあ、取り敢えず探してから考えようか」  若干投げやり気味にそうボヤく陵。だから、取り敢えずは山の周りに洞窟の様な物が無いかを探し始めた。 ☆☆ 「見当たらないね〜?」  山の麓から段々と登りながら探索を始めたが、美玲の言う通りで中々洞窟に近い物は見当たらなかった。 「いや待て、先客がこの地に居るようだぞ??」 「は?」「ふえ?」  鬼神が突然そんな事を言い出して陵と美玲は間抜けな声をあげた。 「…盗賊かもしれない」  聖神がそう告げる。 「「はあっ!?」」  陵と美玲は驚きながらも面倒臭そうな顔をする。 「ええ…面倒な事には関わらないべきだよね?」  美玲は3人に"面倒臭いから関わらないでおこう?"と遠巻きに告げた。 「だが、その者達は洞窟を持っているぞ?」 「「!?」」  だがしかし、鬼神の一言でそんな考えも吹き飛んでしまった。 「…奪っちゃおうか」 「でもさ、良い盗賊さんだったらどうするの?」  陵が決めかけていた思考に、ストップを掛けるように問いかけた美玲。 「ああ、義賊的な? …確かに居そうだよな」 「取り敢えずお邪魔してみるってのはどうかな?」  美玲は続けて陵に提案する。 「…ちょっと危なくない?」 「じゃあ聖神さん囮で。…ゲスい言葉を口にしたら銃で仕留めちゃえば良くない??」  確かに聖神は10人中8人位は振り向きそうな位に美人だ。 「良いよ。それで」  聖神さんも割と乗り気な様で…。そんな中、鬼神さんに了承を得るべく陵は目を向けた。 「私もそれで構わない」  鬼神も問題が無さそうだ。 「じゃあ、私が合図したら聖神さんはその洞窟に近付いてね。ゲスい発言をしたら、皆に見えるように大きな丸を作って」 「うん」 「で、私は合図が出たらスナイパーライフルで遠くから狙い撃つから」 「私は?」 「鬼神さんは聖神さんが丸を出したら突貫して良いよ。陵は…」 「俺は美玲の護衛だな」  遠くから狙い撃つとなると、近くに敵が近付いてしまっていたら全く気が付けない。故に、陵を美玲の壁役として配置する事になった。 「じゃあ、まずは私が位置取りをして、それから聖神さんは洞窟に向かって行ってね。どこら辺からが洞窟に見通しが良いか探そっか」  美玲が完全に仕切ってしまっていた。鬼神さんも聖神さんも普段からほわほわしている彼女を見ているだけに少しだけ内心で驚く。  それから美玲は長い光線銃-スナイパーライフル-を取り出し、盗賊が住み着いている洞窟の前で、見張りをしている男2人をスコープ越しに見た。 「聖神さん、行っていいよ」 「うん」  美玲がそう指示を出し、盗賊の本質とやらを見るべく聖神が動き始めた。  鬼神は小陰に隠れながらもすぐに飛び出せるように、一定の距離を保ったまま移動を開始した。  美玲達が居るフィールドは木々が生い茂っている森だ。その為、視界がとても悪い。まるで木々がビルの様に乱立するせいで射線を遮ってしまうのだ。  …だから美玲は木の上に登り、そこから狙う事にした。…それで幾らかはマシになったと考えてはいるが、視界が狭い事に変わりはない。  そんな中、聖神や鬼神には銃の存在を弓の様なものだと説明し、射線には極力入らないように頼んだ。  やがて美玲の視界には聖神がその見張りと話している光景が見受けられた。…が、すぐに腕で大きく丸が作られた。  次の瞬間、美玲の光線銃は火を吹く。盗賊の頭を一瞬にして、"どちゃっ"という音と共に吹き飛ばした。  更にそれを見た鬼神が盗賊の拠点に入り込んだ。入口は鬼神の刀によって細切れにされていた。 「陵、私達も行くよ」  美玲はアイテムボックスから光線銃マシンガンを2丁取り出した。片方は陵が作り出した偽物で、あくまで人を殺せる程度の能力しか備えていないが、それでも連射を出来るという点からそれを選んだ。  本物はお高い鎧も関係無く吹き飛ばせるので、"神具"と呼んでも怒られない程の性能を有している。…が偽物は鎧を吹き飛ばせないとの差がある。 「はいよ。…前衛は俺がやるから」  陵は鬼神の刀を2本-右に刀を左に小刀を-持つ。そんな彼を見て準備万端だと判断したのか、美玲は共に洞窟の入口へと転移した。  陵らが洞窟の前に辿り着くと、気持ち良い位の盗賊の悲鳴と刃物が肉を切り裂く音が聞こえる。 「…俺達要らなくね?」 「でも人を殺すのを人任せには出来ないでしょ?」 「そうだな」  外からでも聞こえる悲鳴にそんな感想を漏らす陵に対して美玲がそう言う。彼らは手段を問うつもりは無い。だが、ここで人任せにしてしまっては自身らが卑怯者になってしまう、そんな感覚を漠然と抱いていた。  だから、中へと足を踏み入れた。  腕が吹き飛んで首が無かったり、剣の腹を刀で切り落とされていたり、首だけが落とされているものもいたり、そんな漠然とした風景が彼らの目の中へと映りこんだ。  されど、それに対して何も彼らは思わない。  グロテスクな絵面なら既に人以外で見て来ている。知らない人だから所詮は対岸の火事。  …だからだろうか?  いや、それは筆者にもわかり得ない。  パァん!  どう考えても撃ち漏らしにしか見えない1人を、美玲は目の色を変えずに銃撃する。 「鬼神さん、何か焦ってたのかな??」  洞窟を歩いていると、トドメを刺し切れていない盗賊がちょくちょく目に映る様になった。 「…何かあったんじゃないか?」  陵は刀を機械の様に淡々と振るい、トドメが刺されていない存在の首に擦り付ける。 「…こっちか」  陵は右手甲にある鬼神の紋章に導かれる様に、迷わずに鬼神の元へと向かった。  聖神が膝を着いて肩を震わせている光景が目に入った。鬼神は…1人の男の子を抱えていた。 「…泣いてる?」 「なんで??」  陵も美玲も何事だと思う…が、それも直ぐに理解した。  聖神の前には四股を切り取られ息絶えている人だった亡骸が存在したから。 「…その人は?」  美玲は重い空気に声のトーンを合わせて訊ねる。 「…彼の母親だった」  鬼神が抱えている子供の母親だったそうな。 「そう…なんだ」 「神になったのに…治せなかった…」  聖神の顔には恨みが湧き出ていた。それはこんな目に合わせた盗賊に対してではなく自身が治せなかったことに対してだ。  聖神は治すことにプライドを持っている。…普通なら四股欠損しようが頭と心臓が残っていれば…即死でなければ何とかなった筈だ。  でも聖神の目の前にある亡骸は違かった。  …既に死んでいたのだ。  死んでいて尚、自身の子供から少しでも気を逸らすために性的な行為を蛮族の男と繰り返していた。  彼女は足や腕が無いながらも懸命に男達の興味を引く為に喘ぎ声を出していたのだろうか…。  亡骸にはそのような痕跡も青アザも…いや、大半の傷は血に塗れて見えなくなってしまっているが…。  わかり易く言ってしまえば()()()()()に成りながらも蛮族共の相手をしていたという事になる。  鬼神や聖神がこの部屋に駆け込んだ際に、息子の名前だけを彼らに告げて成仏してしまった。  …治せる治せないの領域では無かったのだ。 「そっか…その子はどうするの??」  美玲は聖神に問い訊ねる。…ギリギリ乳離れした年頃の様にも見えた。 「…捨てる訳にはいかない」  捨ててしまえば死んでしまうのは自明の理だ。 「…美玲、話が長くなりそうだから俺と鬼神で盗賊の頭領を殺してくる。鬼神が持っている子供は美玲に預けてくれ」  だが、そんな聖神と美玲の会話に割り込む様に陵は告げる。 「うん、お願い」  美玲は鬼神から子供をひったくる様に奪うとそう言った。  その言葉を聞き、陵は紋章から刀を取り出して強制的に鬼神を刀の中に吸い込む。  陵は"狂気神刀"と呼ばれる刀を肩に担いで、その痛ましい部屋から出るのだった。 「鬼神、力加減は間違えるな」 『…わかっている。そんな事で癇癪を起こす馬鹿ではない』  鬼神の声は静かだった。感情を極力出さない様にしている事が、良くわかるくらいには平坦だった。  陵は洞窟の最奥の扉を開けた。どうやらここの頭領は、奥で1人引き篭もっているタイプらしい。 「おいおい、ここまで来たって事は俺の部下を全部殺っちまったって事かあ??」  中にいた厳つい男がそう言う。 (…ボスっぽいな)  陵はそう思う。されど何も口に出さずに前へ前へと進む。 「おいおい、なんか答えたらどうだ??」  その頭領らしき男は業物の様に見える剣を取り出した。だがしかし、それを見ても陵の動きは変わらない。 「しけたツラしてんじゃねえぞっ!!」  とうとう黙りこくった陵に堪忍袋の緒が切れたのか、その男は陵に剣を振り下ろした。  ザシュッ!!  所詮、形の無い2流3流の剣。  鬼神から毎日の様に刀の振り方をレクチャーされ、完璧に動きを覚えていた陵の敵ではない。 「・・・」  振り下ろされる前に男の懐に入り込んだ陵は、ただ一突き、それは大の男を、それの心臓と肺を軽々と貫いた。 「・・・」  そして油断なく刀を引き抜き、男から距離を取った。  やがて男が息絶えるのを確認、その死骸をアイテムボックスへと放り込んだ。 『容赦が無いな』 「容赦しないといけない理由があるのか?」  陵は鬼神と会話のキャッチボールをしながら盗賊の住処を歩き回る。  他に使える物があれば良いな…と。  結果、多少の金銀財宝を見つけたがそれ以外には収穫は無かった。 ☆☆  それから陵は美玲の元へと戻った。 「…あ、陵」 「どうする事になった??」 「この子…フィルドって言うんだけど、私と聖神さんで面倒を見る事にしたから」  どうやらそんな感じで、残された子の未来は決まったらしい。 「…わかった。出来るだけ協力するから」 「ありがと、で…住む場所についてなんだけど、聖神さんがこの洞窟全部を浄化させる事が出来るらしいから」 「予定に変わりは無しって事だな?」 「そう言う事だね。この子が大きくならないうちは、拠点の移動なんてしたくないからね」  美玲が抱えている子供は2歳くらいだろうか?? 少なくとも、今までの美玲らの様にずっと歩き続ける訳にはいかないだろう。 「そっか、じゃあ、俺と鬼神で死骸を片付けてくる。最後の仕上げは聖神に任せたから」  それだけを言って陵は再度美玲と別行動を始め、鬼神を刀から解放した。 ☆ 「まずは外に運び出す所からだな」  陵はそう言って、上に着ていた服を脱いで上裸になった。 「…何故?」 「結構血でギトギトになってて着てられないんだ」  頭領を刺し殺した時、陵はモロにその血を被ってしまったのだ。かと言ってこれから死体の運び出しで汚れるのに、新たに別の服を着ようとは思わない。 「あー面倒くさい」 「…仕方無いだろう」  鬼神と陵は1人ずつ頭と胴体を持って‐胴体は地べたに引き摺りながら‐外へと運んでは1箇所に集める。  後で燃やすつもりのようだ。  外と洞窟の中を50から70回ほど往復し、彼らは死体を全てかき出す事に成功した。 「仕上げは任せた」 「うむ」  鬼神は陵の指示に従い、死体の山に鬼火を投げた。
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