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第一部-裏-確保した奴隷達の教育方針。

 シンに確保された奴隷達はそれぞれの能力や意欲に合わせた教育を受けさせられていた。  例えば身体変化が出来る種族にはそれを自在に使いこなす為の特訓を。  例えば特殊な能力を持っている子にはその能力の使い方を。  例えば魔力が多い子には出来るだけ多くの魔法の使い方を。  例えば魔力の無い子には魔力以外で扱える能力を。  因みに"魔無し"と呼ばれる魔力を持っていない存在は1000年に1度の単位で現れると言われているが、何故かシンの手元には2人集まった事も明記しておく。  また、シンが確保した子供達の中には未だに目を覚まさない子も存在する。 「ミリ、人造神族の少女と人型キメラの少女はどうなっている?」  シンは地下の研究室に入り、そこでのお目付け役になっているミリに訊ねる。 「ご覧の通りよ。…全く変化は無いわね」  ミリはその眠っている2人の少女に目を向けて言う。 「やはりそうか。…私が直接手を加える他無いのだろうか?」  そんな2人の少女を、シン自らの手で更に改造すると言っているのだ。 「私が眷属化させたら…目を覚ましたりしないかしら??」 「…それはわからない」  仮にも神祖の吸血鬼であるミリが2人の少女の体を眷属化した場合、何も起こらないとは思えない。 「逆に悪影響を及ぼす可能性もある。…困ったな、明日から国に殴り込む手筈なのに」  国に殴り込んでいる間に少女達の面倒を見れない事が問題である。シンが少女らの体をいじるにしても、やるなら付きっ切りになるだろう。 「少女らには悪いが一端保留だな」 「…そうね」  シンはそう決断し、地下から1階へ、家から外へと出た。  ここは"ヘブンズガーデン"、子供の天敵になるような魔物も盗賊も存在しない。だから、思う存分に子供達に遊ばせ学ばせる事が出来る。 「父上、母様、次は何をすれば??」  シンの姿を見てそう訊ねたのは魔無しで子供の中で最年長者のティルだ。  シンとミリは子供達の義父と義母の役割を担っており、だからティルはそう言ったのだ。  因みにティルはエルフであり、ラフタでは異能と呼ばれるような能力を持っている妹がいる。  兄妹共に目と髪の色は薄じろい金色である。 「剣は学んだな?」 「はい、レオン師匠に」 「他には?」 「敵の探し方をアイ様に」 「…で、やる事が無くなったのか。偶には遊んでも良いと思うが?」  実はティルかなり勤勉な子で他の子の様に遊んだりしない。いや、それだと性格が尖っている様に聞こえてしまうがそれも違う。  ここ数日で他の子に慕われる程には、しっかり下の子の面倒も見るし相手もする。だから、決して尖っている訳では無い。 「…俺はもっと力が欲しいです」 「ティルの言う力とはいったい何だ?」  ティルがそう言いシンはそう返した。もしココで暴力のみを欲するのであれば矯正しなくてはならない。 「それはわからないです。…出来るだけ自分の物にしたいです」  ティルがわからないと告げた、それはシンにとっては正解だった。 「む…そうか、わかった。そこまで言うのなら色々と教えてやろう。この世界の理から外れるような力も…な」  シンは基本的にはのびのびと彼らを暮らさせて恩を売り、そして最後に臣下にしてしまおうと考えている。  報酬として貰い受ける惑星を、たった一人で管理するのは面倒だからだ。 (だがまあ…彼が欲するのなら与えても良いだろう)  シンはそう考える。…例え力が彼の未来を縛る事になっても…。 「ティル、他の子供達はどこに居る? 顔を合わせておきたい」  更にティルにそう告げた。 「今の時間は…皆揃ってお爺様の魔法の授業を受けていると思います」  ティルが言うお爺様とは、かつて最高神の友達だったワニガメの事である。 「わかった。ティルもついて来なさい」 「え?あ、はい」  シンはそう告げて、ミリとティルと共に爺の魔法教室へと向かった。 ☆ 「土の魔法は主に〜〜」  魔法教室をやっている青空教室の場に顔を出すと、そこで子供達に魔法を教えていたのは紫髪赤目の青年少女だった。  彼女はシンが爺に面倒を見てやってくれと、レオンに連れていかせた女子である。 「爺は後ろで見ているだけ…か?」 「あ、はい。難しいお話はお爺様がするみたいです」  ティルがそう言った。 「いい感じに教えられてるじゃない」  ミリがそう言う。 「そうだな。さて…少し顔を出して来ようか」  シンはティルとミリと共に、授業に使われているボードの反対側から授業の邪魔にならないように青空教室の中へと入った。  シン達が授業に入って来た事を竜人族の青年少女は気が付いたが、爺が"気にするな"と視線を送った為に無視する事にしたようだ。  幼い少年少女達は盛んに手を挙げ、話し合い、意見を出す。  偶に子供達が鋭過ぎる質問をして竜人の青年少女が答えられなくなる。するとそこで爺が入ってくる。  そんな事の繰り返しだった。  子供は総勢50人、一人一人名前はそのうち語られるかもしれない。  因みに異能持ちのティルの妹はここには居らず、レイから護身術を教わっていた。  お察しの通りティルと同じ様に彼の妹も魔無しなのだ。 「さて、皆さん後ろをご覧下さい」  授業が一段落したのか、竜人の青年少女は教えていた子供達にシン達の方を向くように言う。  すると、子供達はミリ達を見て"母さん"だの"母上"だのと‐呼び方は決めていないが為に色々な呼び方をされていたが‐口々に言い始めた。  ミリだけに反応した訳では無く、当然シンやティルに対しての呼び掛けもあったが、それでも、1番子供達の面倒を見ている彼女の事を呼ぶ声が圧倒的に多かった。 「ミリ、任せても良いか? 私はティルに色々と仕込もうと思っているからな」  シンは子供達に家族としての刷り込みをミリにさせている。 「ええ、良いわよ」  ミリは微笑みながらそう返し、子供達の元ヘと向かって行った。  "家族としての刷り込み"などと少し怖い表現をしているがそんなに危険な事はしないので悪しからず。  ただ、触れ合って仲良くして裏切りの無いように…という話である。自身が育てた存在に裏切られる事は絶対に避けなければならないからだ。  それからティルの手を取りシンは全く別の場所へと転移した。 「ち、父上?」 「なまじ年を取ってしまっているからか、お前は今の平穏過ぎる現状に納得していない。…違うか?」 「…はい」  シンの問い掛けにティルはそう答える。 「別にそれが悪いとは思わない。…今は15だったな?その年で自身の感情の根底を理解出来ているのは素晴らしい事だ」 「・・・」 「…私の側で私の為すことでも見てみるか?」 「え?」  ティルは思いがけない提案に口を開けざる得ない。 「言葉のままの意味だ。…ただ、私から離れる事は許さないが…」  旅をさせるわけでは無い、それでも色々な物が見せられるだろう。 「…どうして俺だけ?」 「年の関係もあるにはあるが…基本的に誰であっても同じ事をするだろうな」  シンは何もティルだけを特別扱いしている訳では無い。他の子らがそう望んでも同じ様に対応する筈だ。 「そうですか…」 「明日だ。明日の朝に私はとある国の一部を奪い取る。だから…明日までに決めろ」 「…?」  シンの話が大き過ぎてティルは話について行けてないが、何も間違った事は言っていない。 「決意が決まったら来い。…また後で会おう」  そう言ってシンはティルだけを他の子らの元へと転移させた。 「…アイ?」  アイはティルだけに見つからない程度に気配を絶って、シンの後ろに立っていた。 「1人2人、僕の子にしたいなーって」  アイも育成には興味がある様で、何人かに自身の持っている技術を教えたいと思っていた。 「才能のある子でも居たのか?」 「まあまあかな? かくれんぼで隠れるのが上手い子も何人かいるし、後、ちょっと隠れ方とか息の殺し方とか教えてるし」  アイは子供達がかくれんぼをして遊んでいる所にちょくちょく乱入したりしていた。…勿論彼女は鬼役で、自らの感知能力に制限も掛けているが…。  流石に隠密神が年端もいかない子供に本気を出すのはヤバいだろう。 「まあ、アイも楽しそうだからあまり何かを言う気は無い。…が、やり過ぎるな?」 「大丈夫だよ。武器の握り方とか教えてない…あ、まってティルの妹の…アリスだっけ? あの子には弓の使い方教えちゃった」  エルフ繋がりだからか、ティルがアイに気配の掴み方を教わっている間に、弓矢の触りだけを妹のアリスに教えてしまったらしい。 「…確かにアリスが百発百中の矢を撃てるようになったら凄い事になりそうだな」  シンはアリスが目系の異能を持っている事を思い出した。色々な物が見えるアリスに百発百中の弓、…中々強そうに聞こえる。 「あの子の異能力って何なの? シン兄が"異能"って言うんだし、多分凄い能力なんだよね?」 「いや、私もラフタで異能と呼ばれる様な能力は沢山持っている。アイも幾つか持っているだろう??」 「え?僕? どれが異能なのかわかんないよ」 「その程度だ。ただ…強力な異能である事に違いは無いがな」  ここで話されているアリスと呼ばれる女の子が持っている異能は"見たいと考えた物"を見えるようにしてしまう能力である。  魔力とは何ら関係が無い能力だ。年端もいかない少女だからか見える物-正確には見たいと思った物-が少ないため制御も出来ているが、見たいものが増えれば制御出来なくなるかもしれない。  それも少しだけシンの頭を悩ませていた。  使い方をあらかじめ知っていて、十全に本能のままに使いこなす事の出来る能力なのか、それとも、教えられなければ使いこなせない様な能力なのか。 (暫くは放置しか無いだろう)  シンはそう結論を出すしか無かった。 「明日はアイとレオンにも働いて貰うからな」 「国攻めだっけ?」 「正確には代表の一人を討ち倒すだけだな」  代表の一人とは、シンらが攻め入るグランパレス共和国で1番地位の高い存在だ。  グランパレス共和国は代表が5人程いてその5人が国を廻しているのだ。シンはその内の一人を今回の奴隷の件を口実に討ち倒してしまおうと考えていた。そして、それなりに良い物が手に入ればなあ…とも。 「でもさ、明日はどういう手筈なのか僕は聞いてないよ??」 「…そうだったな。今から決めてしまおうか」  シンはアイの頭に手を置いて共にレオンの家の前へと転移した。  こんこん…  シンはレオンの家をノックする。暫くしてレオンが家の扉を開けた。 「取り込み中だったか?」 「いんや? …いや、取り込み中って言えるかもな」 「明日の件について色々と決めて起きたい事があるのだが…、今は平気か?」 「おうよ。ちょっとフィリに言ってくるから待っててくれ」  そう言ってレオンはバタバタと家の中へと入って行った。 「おし、行けんぞ」  そしてレオンは戻ってきた。 「なら、私の家に行こう」  そうしてレオンとアイとシンはぞろぞろとシン宅へと向かった。 「おかえりなさい。主」 「おかえりなさい。パパ」 「・・・」  家の扉を開けると3人に出迎えられる。  レイ、アリス、ジュリルの順だった。  アリスは先程も説明したようにティルの妹である。そして、ジュリルは魔物と交わらされていた女だ。  ジュリルは言葉は話せなくなったものの、今は基本的にミリのお付きのメイドとして色々と頑張っているのだとか。  …ミリに百合っ気がある事は明言しておく。 「アリスは何故?」  アリスにはメイドの真似事をしなくてはならない理由なんて無い。それなのに、ジュリルと共にメイド服を着ていたから、シンはレイに訊ねる。 「アリスがやりたいと言いましたから。主の方針ではやりたいと言ったことをやらせてみるとの事でしたが…?」 「アリスがメイドか。…まあ、色々と手を出してみるのは良いだろうな」 「そういう事です。すぐに辞めてしまうかもしれませんからね。…ところでこれから何を?」  シンがレオンとアイを連れて家に来た、これは何処かに戦いに行くようにも見受けられる。だからレイは訊ねたのだ。 「ああ、これから何かを始めようって訳じゃない。明日攻め込むにあたって色々と決めておこうと…な」 「ああ、なるほど。特に決めることがある様にも思えませんけどね」 「しっかりと話しをするのも必要だろう」 「…それ、お話する事が主題になってませんか?」  レイに指摘され、思わず顔を背けるシン。 「…いや、話さなければいけない事はある事も事実だ」 「…別にその程度で目くじら立てる気もありませんが」  ※この後はしっかりと国攻めについてを話し合いました。
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