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第一部‐裏‐略奪し尽くす。

「ここのようだ」  地下に足を付け通路を歩き、シンはとある部屋の前で立ち止まった。 「んじゃあ、ぶち壊すか」  レオンが神剣(グラン)を振り上げた。 「いや、私がやる」  だが、そんなレオンをシンは止める。 「んだよ…」  少しつまらなさそうにするレオンを無視して、シンは扉に手を触れた。  扉はヒビが次第に入っていき、その亀裂の間隔が狭くなっていく。やがてその扉は細かなブロックの様に崩れてしまった。 「お前っ!!何者だっ!!」  流石、研究施設だけあって護衛の騎士が居るらしい。 「…うるさい」  シンは着込んでいたコートを触手状に変質させ、騎士らの頭を貫いた。 「…なるほど、彼女が人造神族か」  騎士が沈黙し邪魔者を排除した事を確認し終えてから、シンは様々な管が引っ付いている少女を見つけた。 「流石に…こんな少女にこれを背負わせるのは駄目だろう」  少し慈悲を込めながらもシンはそう呟く。 (…帰ってミリと相談する事にしよう)  シンはそう思いながらも彼女を管から外して抱え込んだ。そして"ヘブンズガーデン"へ通ずる道を開ける。 「主?道を繋ぐとは…珍しいですね」  その道はシンの家のリビングルームに繋がっており、レイは偶々、その場で服作りをしていた様だ。 「この子を受け取って貰えるか?」 「は…はあ? どこから攫ってきたのですか??」  レイはシンに渡された幼子を見てそう聞く。 「後で話す。もう何人か連れてくるだろうからそのつもりで」 「わかりました。後で説明して下さいね」  シンは通ずる道を閉じ、更にその施設の奥に目を向ける。 「…人型キメラはそこに居るのか」  そしてそう呟き、レオンに後ろを見張らせながらもまた奥の扉を破壊した。  次に目に映ったのは、暴れないように…との事なのか、鎖で縛り付けられてる少女だった。だが、先程の少女とは別で幼子とは呼べそうになかった。 (色素が全部抜けている。それに…)  シンはその様々な変な色が浮き出ている少女を見てそう呟く。…その少女は髪は完全に色素の無い白髪と化していて、更に言えば肌には青アザに様な見るに堪えない色合いが浮かんでいた。 (これは…殴られた跡ではない。…強引に別種の遺伝子を注ぎ込まれた結果、拒絶反応により色が変わってしまったのだろう)  そのアザは普通の人が見れば生理的嫌悪を催す様な、それ程のものだった。 (どこの世界も…研究者は自身を実験台にする者は少ない。…覚悟が無い癖して神秘に迫ろうとする)  そう思うと同時に、シンは研究者に強い嫌悪感を抱く。  これが仮に…研究者自らが自身の体で実験をしているなら彼は嫌悪感も何も抱かないだろう。…だが、他者の未来を潰して、いや…研究をする存在が安全圏にずっと居続けたまま、力を手に入れようとする傲慢さに彼は嫌悪を抱いた。 (覚悟が無いだけの頭でっかちが調子にのった良い例だろうな。…これは)  シンはそう思いながら丁寧に少女の鎖を破壊し、抱き抱えた。  この地で過去に起こった事も視た結果、彼の考え方に新たなピースがハマった。  _____別に善を成すつもりは無い。…けれども、これは違う。  シンが完全にこの施設の関係者を"埃"とみなした瞬間だった。  シンは再度"ヘブンズガーデン"へと通ずる道を作り出し、レイに少女を渡す。レイは少し苦い顔をしていた。  更にシンは"隠密神アイリス"を召喚した。 「あれ??前振りなしで召喚なんて珍しいね? シン兄」 「この施設の実験体以外を全部処理してきてくれるか?」  実の妹の様に扱っている彼女に、人の枠を完全に超えている彼女にそう指示を出す。 「…うーん、実験体ってどうやって見分けるの?」 「そうだな。…いや、好きに取捨選択してくれて構わない」  気持ち的にはこの施設を全て壊してしまいたい所だが、その思いを考え直してアイにそう告げた。  もしかしたら自ら実験体になっている存在も居るかもしれないし、他者では無く、自身に身体改造を行っている者も居るかもしれないと思ったからだ。 「…シン兄は?」 「施設の実験資料を集めながら破壊して進む事にする」 「ふうん、わかった。じゃあ、行ってくるね」  アイはそう言って姿を消した。いや、厳密には気配を消しただけだが、それでもレオンの目に彼女の姿は映らなくなっていた。 「さて…私達も行こうか」 「…おう」  レオンは少しテンションの低い返事をしたが、シンは気には留めなかった。 (処理…ねえ?)  アイは地下通路を走りながらそう考えていた。 (でも、シン兄は言い直した。…僕に要望は伝えたけどそれ以上に僕の直感で動けと言った)  それはつまり、先に見て聞いて歩くだろうアイの意思をシンが尊重したという事だ。  アイは"隠密神"であって"暗殺者"では無い。彼女がやろうと思えば暗殺などはきっと容易い事だろうと思えるが…。 (人が居る?…魔力が無い?けれども生きてる?)  アイは人を探知し、それが奇妙な存在である事を理解する。 (雰囲気的にエルフだと思うんだけど…。ま、行ってみればわかるよね)  扉を静かに壊してアイはその部屋へと入る。すると、そこには2人のエルフがケージの中に入れられているのが見えた。 (…ふうん?彼らを使って研究でもするのかな? ま、回収はシン兄に任せて僕は次に行こう)  アイはその部屋から飛び出し、そしてまた別の人気に釣られるように移動した。  すると、女性の悲鳴が聞こえてきた。まあ…アイはだいたい何が行われているかはわかっているのでそのまま部屋へと入り込む。  そうしてアイの目に映ったのは、一人の女性が人型の魔物と無理矢理に交配させられている光景だった。  当然、女性はいやいやと咽び泣いている。 (これは…良いよね)  アイは一瞬、その女性が何かの大罪を犯した結果でこんな扱いを受けているのでは?と考えたが、別にそれならそれで後から処理すれば良いと思う。 (取り敢えず、魔物と周りで見ている人達と…部屋を処理しとこう)  アイはそう思い、総計15体の死骸をその地に転がした。 (さて、次…)  次は沢山の人が豚箱の様に詰められているように思える場所に向かった。  その道すがらにもバタバタと死体を転がし歩いていたのだが、まあ…それはどうでも良いだろう。  いつも通り静かにその部屋の入り口を切り裂き、中へと飛び込もうとする。  …が、止めた。  そこにはケージに詰められた存在しか居なかったから。 (外しちゃったな…)  自身が気配系の能力で間違えた事に少し哀しくなった。  それからアイは走り回り、総計200程の死骸を地面に転がす事となった。 ☆☆☆ 「ふむ、ここに牢屋か籠か…まあ、どちらでも良いか」  シンはそんなアイを追いかける様に様々な部屋を覗いていき、2人の閉じ込められている少年少女を見つけた。  シンは先程と同じ様に"ヘブンズガーデン"へと繋げて、その少年少女を投げ込む。  …何事も無かったかの様に牢屋を壊してしまった。  投げ込んだ後、シンは再度自身の目を完全解放し、何一つとして取り残しのない様に人や物を探し始めた。  先にアイが通っている事を考えると、人は生きている存在だけ見つければ良いので楽なようだ。  逆に物に関しては目を皿の様にして探索していた。 「うん?…これは、幻獣の卵か」  シンはまたもや別の部屋で面白そうな物を見つける。 (…取り敢えず仕舞っておこう)  更に別室へと彼は進む。すると白濁な液体が秘部から溢れ出したままに放心している女性を見つけた。 「…レイプ後じゃねえか…」  静かについて来たレオンがそれを見て思わず声を漏らす。 (後ろの魔物と行為に及んでいた? …しかも無理矢理…か)  シンはそう思いながら、なるべく感情を殺しながらその女性の記憶を読む。 「貴女はまだ生きたいか?」  その後にシンから出た言葉はそれだった。そしてその女性の首にはシンの装備が変形して作られた大鎌が添えられた。 (望まないのならば…一思いに殺してしまおう)  悲惨な研究の材料にされた女性を見てそう思う。 「…あ…え……う…」  女性からは言葉が出てこない。後天的な言語障害だろうか?? (喋れないのなら…表層の思いを読み取ってしまおう)  シンはそんな女性の様子を見て会話は不可能と判断、思考を読み取る事で決断する。彼女はシンからレイに手渡された。 「…次に行こう」  シンは他に使えるのものは無いかと確認したが、何故かここにある機材が全て破壊されていた為に回収出来るものは無く、その部屋を後にする事になった。  彼らは更にアイが駆け抜けたであろう場所を進む。  すると、今までもそこそこにアイが殺したであろう死骸が転がっていたが、それ以上にそれらの数が増え始めていた。 「相変わらず鮮やかな手口なこって」  レオンは転がっている死骸の絶命具合を見てそう呟く。そんな彼をシンは無視し更に先に進む。 「…奴隷倉庫とでも言えそうな場所だな」  シンはかつてアイが一切触れなかった-正確には扉だけ破壊した-部屋へと足を踏み入れる。  その部屋は一つの大きな牢屋があり、先程の女性の居た部屋も相当な臭いだったが、それ以上に臭かった。  そして子供ばかりだ。…全員が何一つ服を着ていなかった。 「これはひでえな」 「子供だけか?」 「シンの方がわかんだろ?? …どうする気だ?」  レオンはシンに指示を仰ぐ。 「レオンはヘブンズガーデンでミリやレイと共に水場を作って彼らを洗ってくれるか?」 「…わかった」 「じゃあ、任せた」  シンはそう指示を出し、"ヘブンズガーデン"へ続く大きな大きな道を作った。  そして牢屋を壊して子供達をその道に誘導させ、レオンと共に"ヘブンズガーデン"へと送り出した。  シンはレオンを送り出した事により1人になった。アイは彼と同じ施設内に居るのだろうが、彼には感知が出来なかった。  それからまた、先へ先へと通路を進んだ。 「次は何が…また幻獣の卵か」  転がっている卵をテキトウに集め、纏めて自身が作り出した空間に仕舞う。 (襲っておいて正解だった。大人では無く子供ばかりが手に入ったのは良かったな)  更にそう思いながら歩く。 (卵もだな)  大収穫だとシンは思ってしまっていた。 「ん?」  シンの視界には、()きている研究者らしき女が目に入った。 「お前はなんだ?」  シンはその女に目を合わせる。 「ひいいっ…」  彼女は腰砕けになっており、シンが覗き込むとより一層怯えた表情をした。 (…漏らしてる)  そう思いながら周りを見回してみると"仕方無いな"とシンは思う。  辺りには首だけがかき切られている人型のみが複数残っており、それからシンは"恐らくアイは"隠蔽"を使って切り落とされるタイミングを合わせたのだろう"と考えた。  自分以外の首が人知れず勝手に落ちたように見えるのだから…こうなっても仕方ないだろう。  彼女に触れてそのまま"ヘブンズガーデン"へと転移させた。 (先に進もう)  シンは更に先に進む。  するとこの施設の1番端にたどり着いたのか、アイが折り返して来た所でシンと合流する。 「あ、シン兄、全滅させたよ」 「よくやった。…他に奴隷は居たか?」 「うーん…多分居ないと思うよ」  アイが居ないと言うのなら、シンが探しても見つからないだろう。 「なら良いか」 「良いんじゃない?」 「なら、このまま外に出るまで、拾えるものは拾って行こう」 「はいはーい」  そうやって彼らは、この施設で使えそうな物全てを持って行ってしまうのだった。
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