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第一部‐彼らの関係。

「主、提案があるのだが…」  鬼神が陵に問い掛ける。  あれからなんやかんやあって、陵と美玲と鬼神は更に森の中を進んでいた。 「…何だよ」 「不老不死と呼ばれる物に興味は無いか?」 「…なんで?」 「いやなに、不老では心許ないだろう? 無敵と言う訳では無いが…その、頭を貫かれても死ななくなるのだ」  鬼神には鬼神の思惑があるようだが、陵は元気が無くなっていてそれに気が付くことも無い。 「そっか…俺と美玲は死ななくなれるのか」 「うむ…だが、その…」 「味方なんだろ? お前。今なら何となくわかるよ。だから良いんじゃないか?」  陵は前を歩いていた鬼神に投げやりにそう言った。  "何となくわかる"、こう告げた陵の中では"相思狂愛"の能力が発動していた。  この能力には陵と美玲を危険から遠ざける能力もあるらしく、鬼神の言葉には危険性は無いと判断したようだ。 (今の彼は…怖い)  鬼神の前に居るのは美玲に泣きついていた陵では無い。雰囲気の変わった-言い換えれば覚醒したと言っても過言では無い-彼に少しだけ鬼神は気圧されていた。 「美玲〜♪」 「陵〜♪」  とは言え、彼らは変わらずイチャイチャではあったが。 「あ、陵っ!!キノコがあるよっ!!」 「美玲…キノコは…」  美玲は楽しそうに森を歩いており、陵は彼女が手に取ろうするのを止めようとする。 「大丈夫、"鑑定"は食べれるってさっ!!」 「え…そんな事までわかるのか??」  陵は美玲にそう言われて、自身でも試してみることにした。 「…"食事可能"って表示が出るのか」  更に瞳に映った情報を見てそう呟いた。 「鬼神、火は起こせるか?」  陵は何かを思い、鬼神に聞く。 「…鬼火であれば」 「じゃあ、キノコを取ってきたら焼いて」 (便利扱い…)  陵がそう言い、鬼神は内心で呆けるしかない。  そう、陵はキノコを口にしようとしているのである。 「な…なんだ?」  鬼神は"じっ…"と陵に見つめられてたじろいだ。 「"食事可能"だってさ」 「ひいいっ!?!?」  特に気負った様子なく陵はそう呟いた。対象にされた鬼神は恐怖のあまりにイケメンフェイスを歪ませて叫んだ。…喰われてはたまらない。 「え、ちょっ…、鬼神さん食べれちゃうの??」 「どうやら…俺達の体に入っても異常を来たさない物は何でも"食事可能"って出るらしい」 「え、じゃあ、私は? 私は??」  美玲は無邪気に両手を広げてそう言った。 「…"エラー"?」  その結果に、思わず美玲は首を傾げる。 「…え??」 「人は鑑定不能って事かな??」 「うーん…どうなんだろ??」  彼らは2人して頭を悩ますしかないようだ。  "相思狂愛"が"鑑定"の能力を阻害してしまっているだけなのだが、当然彼らに知る由もなく…。 「まあいっか、人は食べないから」 「そうだな。何も問題無いな」 「じゃあ、キノコ狩りにレッツゴーっ!!」  こうして美玲達はキノコ狩りを始めるのだった。  それから暫くして、彼らは多種多様なキノコを手に入れた。 「鬼神さんお願いしまーす」 「う、うむ」  美玲がそうお願いし鬼神が頷く。そして鬼神は火玉を作る。 「ふーん…そうやるのか…」  陵は鬼神が掌に火玉を作り出した動作と全く同じ動作で火玉を自身の手元に作り出した。  そう、これこそが彼が天照大神から貰った能力の1つ、"射影"の能力だ。 「ふええ…陵、凄ーい!!」 「…何か思ったら出来た」  美玲はそんな陵を見てそう叫ぶ。彼もびっくりしていた。 (なん…だと? 彼は魔力すら持っていないのに…それなのに魔力のある火を…私の鬼火を真似ただと…?)  だがしかし、1番驚いていたのは真似をされた鬼神だった。 「主はいったい何が真似られるんだ?」 「わからない。まだこの世界に来たばかりだから」  世界に来て早々、色々とあり過ぎで忘れそうになるが、彼らが異世界に来てまだ3日しか経っていない。 「…そうか」  鬼神はそう言って口を塞いだ。  陵にこの話題は禁物だ。そして陵自身、もう帰る宛が無い事も地球に戻った所で居場所が無い事もわかっていた。  地球の何処に老けない人間が住めるだろうか??…そんな場所は存在しない。 「んん…まあ、味は悪くないかなあ??」  美玲は勝手に鬼神の片手にある火の玉に、キノコを引っ掛けた枝を突っ込んで焼いてから口に入れていた。 「お、おいっ!? 菌とかあったら不味いだろっ!?」  流石にこれには陵も慌てた。…いやキノコは菌糸類だろ…。 「"食事可能"って表示されてるし、私の本能も平気って言ってるよっ!!」 「…お願いだから腹を壊さないでくれよ?」 「大丈夫だよ〜」  美玲は全部食べ終わってからすぐに陵に抱き着く。 「…キノコくさ」 「ひどいー、酷すぎない??」 「…つーか、2日も風呂入ってないと臭いが…」  陵はキノコ臭さだけでは無い事に気が付いてしまった。 「あー…うん。水浴びしたいね…」 「だよな…」  陵も美玲も風呂に入りたくて仕方が無い。 「ああっ!?」 「どうしたっ!?」 「神様にお家貰ってたっ!!」 「ああっ! そうだったっ!?」  美玲がアイテムボックスに入っている家の存在を思い出し、陵も同調する様に叫ぶ。 「主ら、その…敵が来てしまっているのだが…」  鬼神はそんな若人らしくふざけている彼らにそう告げた。 「鬼神さんだけじゃ足りないの??」 「いやいや、そんな事は当然無い。どう対処するのかと…」 「私達…殺し合いってした事ないんだよね…」 「…そうだったのか」  鬼神はそれを聞いて、"あれ?"と思わざる得ない。 「だから、お手本を見せてくれると嬉しいな〜…なんて」  美玲はそうお願いするようにそう言った。 「…わかった。私がお手本を見せよう」  鬼神はそう言って、陵と美玲を敵が出てくるであろう方向から自身の後ろに下げた。 「…これで少しは敬ってくれるだろうか」  鬼神は誰に聞かれる間もなくそう呟き、1本の刀をとある空間より取り出した。美玲のアイテムボックスみたいなものである。 「うわーカッコイイ刀だねっ!!」 「真似られそうだな」  鬼神は自身の主らの声を聞きながら、敵が出てくるのを待つ。  やがて、敵である四つ足の魔物が鬼神に2体ほど襲い掛かった。  その2体は爪に風を纏い、"風爪"と呼べそうな攻撃を繰り出した。…が、あっさりと鬼神はそれらを2等分ずつに斬り裂いてしまった。  流石鬼神と呼べる腕前だった。 「どうだっただろうか、主…」  鬼神は感想を貰おうと後ろを向く。すると、陵の掌には鬼神が持っている刀が握られていた。更に言えばその反対側の腕で先程の"風爪"を行っていた。  鬼神の開いた口は塞がらなかった。 「良いなー…、私も出来たりしないかなあ??」  美玲はそんな陵を見て羨ましそうに頷いた。 「…出来そうな感じしないか?」  陵はそんな美玲にそう返す。 「「・・・・・・」」 「「何か出来そうな気がするっ!」」  そう言って彼らは様々な方法で、自身らが持っている能力を共有しようとする。…結果出来た。 (彼らに力を与えた神とはいったい…)  鬼神は彼らのはちゃめちゃな行動にそう思うしかない。 「なあ…っ!?」  鬼神は、更に彼らが突然一軒家を取り出した事に驚いた。 「神様、マジで感謝」 「今度あったら御礼だけじゃ足りないよね…」 (だから、その神様とはいったいっ!?)  鬼神はそんな彼らの会話を聞いて心の中で叫ばざる得なかった。  因みに、小さな社みたいな家だった。 「鬼神さん、その…見張りをお願いしちゃダメかな?」  美玲は鬼神にお願いする。 「寝ずの番だけなら任せるが良い」  鬼神だって神様である。基本的に睡眠は必要としなかった。 「ありがとっ!! やっと陵と一緒に寝れるっ!!!」  美玲はそう言ってはしゃいだ。 (こういう行動は年相応に見えるのだが…)  鬼神は美玲のそんな反応を見て思う。 「…じゃあ、お願いします」 「私に任せよ」  美玲はスキップをしながら、先程取り出された家の中へと入って行った。 (とは言え、相変わらず私は便利道具扱いか…)  鬼神は高そうな袴の様な服を身に纏い、刀を持ち、更に座る場所を作り、寝ずの番をする事にしたのだった。 (主と仰ぐ相手を間違えたかもしれん)  鬼神はそう思うが、既に切ることの出来ない契約を彼らと結んでしまっているのだ。後悔、後に絶たず。  ☆☆☆ 「陵〜、久しぶりにぐっすり眠れそうだね〜」  美玲は家に入るなり、居間に居た陵に抱き着いてそう言った。 「風呂場もあったから、しっかりと体を洗ってからな」 「はーい」  陵にそう言われ、大人しく美玲も頷く。眠るにしても体は綺麗にしたい。  それから風呂にお湯を貼って、陵と美玲は()に風呂に浸かった。  風呂は古臭い木々によって作られた物だった。最新気鋭の綺麗な風呂場では無い。  それでも満足だった。 「うう…疲れが取れる〜…」 「だな…」  美玲も陵も一緒に入っているというのに、お互いにエッチな空気は全く出していなかった。 「…はあ、でも、本当に陵が居てくれて良かった」 「そう? 俺は…結局美玲に助けて貰っただけだったな」  昨日も美玲に泣きついてしまったし…と、陵は思う。 「ええー?私だって助けてもらってるしお互い様だよー」 「そう言ってくれると…助かる」  美玲は少し傷心気味の陵の手を引いて抱き寄せた。 「どうどう?美玲ちゃんのおっぱいは?」 「…いつも通りだな」  何が"いつも通り"なのかを小1時間問い詰めたい。 「ん…ちょっと待って」  陵はそう言って、浴槽に座っている美玲に背を向けて寄りかかった。どうやら本格的に美玲に甘えるつもりのようだ。 「陵も甘えんぼうだねえ?」 「抱き着いてきたのは美玲だろ?」  寄りかかった陵に、美玲は抱きつき直した。 「・・・」 「・・・」  長い間浸かっていれば、当然、浴槽のお湯はぬるくなってしまう。 「そろそろあがろっか?」 「だな」  陵が立ち上がって、美玲も立ち上がる。そのまま脱衣場?みたいな場所で、彼らは用意しておいたタオルで体を拭いた。 「制服とか…今使ってるタオルとか…洗わないとな」  陵がそんな事をボソッっと呟く。 「あ、そうだった…」(手もみ洗いなんて上手くできるかな…)  美玲はそれを聞いて、自身に服を手洗いした経験が無い事を思い出す。現代日本なんて洗濯機があれば…って話なのだろう。 「美玲は手で洗った事ある?」 「ううん…手でゴシゴシなんてやった事ないよ」 「じゃあ、俺の言う通りにしてくれるか?」  陵はどうやら経験があるらしい。あるらしい、と言うよりも少し人より家事が出来るだけだったりするのかも…。 「うん、教えてくれると嬉しいなーって」  そうして美玲が陵に教わり始めると、案外手馴れた動きをしたので陵は少し驚く。  すぐに理由はわかった。能力を共有しているのだと…。  陵の"家事"の技能を美玲が使っているという事に気が付いたのだ。  その結果案外早くに服は洗い終わった。洗い終わったが…制服のシワを伸ばすための道具が無かった。 「アイロンは無いもんね…」 「仕方ないから何処かに干しとくか」  陵は制服として着ていたYシャツを、廊下の引っ掛けられそうなところに引っ掛ける。 「ハンガーはある??」 「無いー」 「だよなああ…」  陵は思わず頭を抱えそうになる。 (どうやって干せば…) 「陵?Yシャツは諦めよう?? 神様が私達の棚を入れてくれたって言ってたし」  そんな陵に美玲はそう言った。態々皺が目立つ服を着る必要も無いだろう。 「…何か、そんな事言ってたな」 「何処に棚を出せば良い?」 「俺達の家にある棚なら…居間で良いんじゃないか?」 「じゃあ、出しに行こう」  美玲は陵の手を引っ張って居間に移動する。 「ほいさっほいさっ」  そんな変な掛け声と共に、美玲は陵達が見慣れた2つの棚を地面に置いた。 「…本当に神様は俺達の棚を持ってきてくれたんだ」 「そうっぽいね〜」  早速美玲は棚を開けて中身を確認する。 「うおおおー、私の服も下着も全部あるっ!!」 「へえー、中身も完璧なのか」  陵もそう言いながら確認した。そして、やっと服を身に付けた。 「美玲も服着て。…というか、服を着ないで服を洗ってた事に何も疑問を持たなかったな…」  そう、彼らは風呂から上がってからはずっと全裸なままだった。 「ん〜、これでどうだっ!!」  美玲は新たな服を身につけてそう言った。白いTシャツにピチピチのGパンという、シンプルな服装だった。 「ん〜…良いんじゃない?」  対して陵は黒いジャージを着ていた。 「「性格出るなあ…」」  2人して、2人が着ていた服装を見合わせて思わずそう口に出す。 「陵さんや、もう少しカッコイイ格好しない?」 「美玲さんこそ」 「私はほら、上からジャケット着ればそれなりになるけど」  "陵のジャージ姿に何を着せればオシャレになるのだろうか?"美玲は思わず考えてしまう。 「ん〜…でも、ほら、魔物とか居るし動きやすい服装が良くない?」  対する陵は"デートに着れそうな服を破きたくない"と考えていたり…。 「じゃあ、じゃあさ、街中に行った時は着替えてくれる??」 「それはわかってるよ」 「なら良っか」  服の話はここで終了になった。 「じゃあ、次は寝床なんだけど…」  そう言いながら陵は居間から外へと出て、ちょろっと覗いただけの畳の部屋に移動する。そこは和室だ。 「…ここの押し入れにあるのかな?」 「多分そうだと思うよ? …開けてみるか」  陵は押し入れを開けた。すると、中には敷布団などの1式が詰まっていた。 「美玲、もう寝ちゃおう。布団は…1つで良い?」 「うん。…部屋着に着替えてくる」 「はいよ」  陵とは違いジャージ姿では無いため、美玲は寝間着に着替える為にさっきの居間の所に置いた棚の所へと戻った。  それから戻ってきた美玲は完全な部屋着だった。半袖にショートパンツ、本気で寛ぐ気である。 「じゃあ、寝ようか〜」 「うん、陵〜布団に入れて〜」  美玲が着替えている間に布団を敷いていた陵。そんな彼が先に布団の中に入ると、彼女が掛け布団を持ち上げるのを要求する。  陵は美玲を招き入れる様に布団の中に誘い込んだ。 「…陵が温かい…」 「…美玲は抱き枕でお願いします」  美玲が布団の中に入り、そんな美玲を陵は布団の中で抱き締めた。 「あ…ちょっ、流石に引き締まってないからってお腹ばっか揉むなっ!!」  布団の中で美玲の腹を陵は掴んだようだ。 「ええ…俺は結構好きなんだけど??」 「…そんなこと言うと爆食いして太るよ?」 「今のままで良い」 「女の子にそれは禁句だって。怠けさせる為の禁句だよ」  美玲は口を尖らせて告げる。誰だってそのままで良いなんて言われたら怠けてしまう。 「何か、前もそんな事言ってたな」 「ま、サバゲーやってたしフィールドを結構走り回ってたりしたから、あんまり贅肉は無いと思うけど…」 「…そっか」  陵は揉むのを止めて、腕の中に美玲をガッチリホールドする。 「そうそう、最初からそうしてよ」 「そうする…」  陵の腕の中で美玲は芋虫の様に動いて、背中を陵に向けた。 「おやすみ」
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