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第一部‐鬼神との邂逅

「ん…ん…」 「あ、陵、おはよー」  長らく眠っていた陵が目を覚まし、美玲がそう言う。 「美玲の太もも…」  自身の頭が美玲の太腿に置いてあることに気が付いて、フニフニしながら呟く。 「うわあ…キモ」  陵の発言に美玲はバッサリと辛辣な言葉を浴びせた。 「ふあ…気持ち良く眠れた」  陵はそんな美玲の言葉を受け流しながら、"ふにゅー"と体を伸ばす。 「陵、お腹空いたならご飯にしない??」 「あ、そうしよっか」  美玲の提案に陵は頷き、美玲はアイテムボックスから1日分の食べ物を取り出した。 「…これ、本当に1日分なのかな?」  だがしかし、その量に唖然としてしまった。 「残りはどうなってる??」  陵がそう言い、美玲は間違えて2日分を取り出してしまったのかとアイテムボックスの中を確認する。 「うん、…ちゃんと10個あるよ」 「三食分だし…いや、それでも多いよな」  陵も美玲も目の前に並ぶ大量のサンドイッチを見て、思わずその量に首を傾げる。 「ま、量が多いのは悪くないし、良いんじゃない??」 「…そうだな」  美玲の一言で、陵も考えるのはやめたようだ。 「じゃあ、いっただきまーす!!」  そんな陵を尻目に大きなサンドイッチを手に取り、美玲は咀嚼し始める。 「じゃあ…俺も」  陵も美玲と同じように大きなサンドイッチを銜えた。 「…美味しい」「上手い…」 「「流石神様」」  そんな感想を口々に言い合って、どんどん食べていく。やがて1つを全て食べ終えた美玲は新たなサンドイッチに手を…伸ばさなかった。  サンドイッチは大量にあるのにも関わらず、1個だけで思った以上に満腹になってしまったようだ。 「陵はもう1個欲しい?」  美玲は陵に聞く。 「…俺も1個で良いかな」 「じゃあ、仕舞っちゃうね」  美玲は返事を聞くなり、さっさとサンドイッチの山を仕舞ってしまった。 「そういや、美玲。敵は来た?」 「来てない。ここは特殊な場所なんじゃないかな??」  美玲は何の根拠も無くそう告げた。 『お主はよくわかっているではないか』  すると、そんな美玲の言葉に反応する様に、不意に陵と美玲の頭には、聞き知らぬ声が響く。 「誰っ!?」「・・・」  美玲は咄嗟にハンドガン型の光線銃を取り出し、辺りを牽制する様に振り回した。 『落ち着け、神具を振り回すでない。私はこの祠の主だ。そして我が名を鬼神と言う』 「祠の…主??」「…神様?」  美玲と陵はお互いに顔を見合わせながら、その声に問い返す。 『うむ、今は私を信仰する存在も居ないがな』 「でも…俺達に用があって出て来たんだろ?」  陵は真剣な声音でそう言った。 『もちろんだ。私を解放して欲しい』 「却下。貴方が裏切らないとも限らないだろ?」  鬼神と名乗る存在の言葉をあっさり拒否してしまう。 『…むう、そこを何とか…。力になると約束しよう』 「無いな。どうして被食者が捕食者を解放するんだ? そんなの、只の口約束じゃないか」  陵は鬼神の事を信用する気は全く無かった。 『…なら、どうすれば良い?』 「どうもしない。俺達はこのまま立ち去るだけだ」  陵はそう言って、美玲に"出て行こう"と目で合図する。彼らは座っていた場所から立ち上がった。 『ここは私の土地だ。…主らが異世界人である事を知っているからこそ、ここに招き入れた。そして…勝手に出る事は叶わん』 「…お前、まさか召喚した奴らと繋がってんの?」 『い…いや、そんな事は無いっ!!』  陵の怒気が凄い勢いで膨らむのがわかり、鬼神は慌てて否定する。 『わ、私はその敵勢力の様なものだ』 「だったら勝手にやってろよ、巻き込みやがって。お前らのせいでこっちは家に帰れねえんだよ、それがわかって言ってんのか?」  陵はまだ見えぬ声にかなりの怒りを含ませて告げる。 『むう…それはすまないとしか言えん。やったのは私では無いからな』 「・・・」(そんな言い方無いだろ…)  陵はふざけるなとしか思えなかった。 『なら…私を解放した暁には主らの剣となってやろう。それでも不満か?』 「…あのなあ?何度も言ってるだろ? 信用出来ないって」  何とか解放してもらおうとする鬼神に変わらずに陵はそう言う。 『ならば、契約ではどうだろうか?』 「…聞いてから決める」  次に鬼神はそう告げ、陵は一応話を聞く気になったようだ。 ☆ 「…なるほどな、神様の眷属になるようなもんか」 「老けなくなっちゃうんだね」  鬼神の説明を受けて、陵と美玲は口々にそう言った。 『うむ、但し少し違うのが一つだけある。私と対等な眷属契約を結ぶのだ。だから厳密に言えば眷属契約では無い』 「その契約も信じられるとは思えないんだけど?」 『む…むう…、この世界の人なら…これで理解を得るのだが…』  鬼神は陵の返答に頭を悩ませざる得ない。世界が違う、と言う事は常識から認識の齟齬が発生する。 「やっぱり信用出来ないから、早くここから出してくれないか?」  陵は言う。やはり相手にするだけ無駄だと彼は考えたようだ。 『むう…そこを何とか…』 「美玲、光線銃を貸してくれる?」  未だに言い渋る鬼神に嫌気が刺した陵はそう言い、美玲からハンドガンを手渡される。 「これで祠をぶち壊せば出て行けそうだよな?」 『やっやめてくれっっ!? そんな神具で攻撃されてしまっては私は消滅してしまうっ!?!?』 「知らない。お前が…うん?」  陵は更に言葉を続けようとした際に、ハンドガンに特殊な仕掛けがある事に気が付いた。  撃鉄の部位に"チャージ"と書いてあったのだ。  陵はもしかして…と思い、撃鉄を引かないで撃った。すると光線が飛んで行き、何かに阻まれて火花を散らした。 『や…やめてくれ…頼む…』 「じゃあ、出せよ」  陵は次に撃鉄を引いて構える。すると少しだけ自身に脱力感が襲った。何かが自らの身体から引き抜かれた様な、そんな感覚だった。 『お、お願いだっ!!頼むっ!!!私はまだ消えたくないっ!!!絶対に裏切らないっ!!!だから、そんな巨悪な神具を使うのはやめてくれっ!!!』  鬼神がその光景を見てとうとう泣いて懇願し始めてしまった。 「「・・・」」  陵と美玲は思わずそんな声を聞き、顔を見合わせ、ぱちくりとしてしまう。  彼らは完全に鬼神を自身の上位種だと考えていたからだ。よもや泣かれるとは思っていなかったのだ。 「あの〜えっと、陵?」 「解放しろって?」 「嘘じゃないと思うんだけど…」 「後からその気になるかもしれない」 「「・・・」」  お互いに口に出しながらも頭を抱えそうになる。 「じゃあ、美玲。俺がこいつと契約するから、もし乗っ取られたりしたらこれで撃ち殺してくれ」  陵はそう言って、チャージされたハンドガンを美玲に放った。 「…うん、その時は後を追うから安心してね」  放られたハンドガンをキャッチした美玲は"ニコっ"と笑ってそう言った。そして、その銃口を陵の喉に後ろから当てる。 「ああ、頼む。…そういう訳だから、契約するなら今だぞ?」 『…そこまで悲痛な覚悟を持たれても…』  頼んでいた鬼神も、流石に今の覚悟を見ては飽きれざる得ない。そもそも彼に悪巧みをしようなどという考えは無いからだ。 「俺達からすると…神様ってそんなもんだけどな」  陵は心の中で自身に能力や武器を与えてくれた神様を想う。そして"人では有り得ない力"を彼女は持っていたなと思う。  彼が神様だと言うのなら、彼の意思しだいで簡単に好き勝手されてしまう事も理解していた。 『…うむ。その台座に触れよ』  鬼神はそんな陵と美玲の考えに何も言えなくなった。…が、それでも自身の外へと出る唯一のチャンスだと思い、陵に指示した。 「よっと、…これか??」 『うむ』  やがて陵はその台座に触れた。すると幾千もの鎖に縛られている男の姿が陵の瞳に映った。  封印されていた空間が開いたのだ。 「…あそこに居るのがお前なのか?」 『うむ、破壊してくれないか?』 「出来るかわからない」 『先程持っていた神具があれば壊せるだろう』  陵が鎖を壊せるかわからないと告げるのに対して、鬼神は壊せると告げた。 「美玲…サブマシンガンちょうだい?」 「え?…うん」  美玲は光線銃サブマシンガンを陵に手渡した。そして陵はそれを手に持ち中へと入っていく。彼女もいつでも彼を殺せる様にと構えたまま、彼と共にその鎖に縛られている男の元へと歩いた。 「…取り敢えずやってみるか」  陵はサブマシンガンの銃口を鎖に当て、そして放つ。バキいっと音が鳴り、撃ち抜かれた鎖は粒子状になって消滅した。 「美玲、全部壊したら…」 「うん、…いつでも覚悟は出来てる」  それは、もし鬼神が牙を向いたら…と言うものだった。  そうして陵は1本1本を丁寧に壊していくのだった。  それから全てを壊し終え、鬼神の解放に成功する。  陵も美玲も解放されたばかりの鬼神に銃口を向け、いつでも戦える様にと構えていた。  だが、鬼神は陵に頭を垂れ、 「我は鬼神、貴方の名は陵で良いだろうか?」  そう告げた。 「…だとしたら?」  陵は突然の鬼神の行動に、危機感を抱く。 「我、鬼神は彼を自身よりも上位の神々だと定義し、盟約をここに結ぶ」  そんな危機感を嘲笑うように鬼神は契約の言葉を発する。それと同時に彼らが座っていた床は光りだし、更には陵の右手甲に鬼の顔文字を浮かび上がらせた。 「おいっ!!…これはなんだ??」  勝手に何かをされた事による怒りと焦燥を、無理矢理押し殺した声が鬼神に掛けられる。 「それは私が陵を契約者として認めた証だ。喜べ、不老になったぞ?」  そう言い立ち上がった男‐額に2本の角を生やした‐は得意げにそう言った。  黒髪黒目と、背丈は陵の身長-170cm-を軽く超えているが、まさに陵や美玲と同じ日本人の顔だった。…しかも整っていた。  バギいっ!!  しかし、陵は本気で鬼神の顔面を殴った。今の言葉の意味を的確に理解できたのなら、殴って当然であろう。 「なっ、何をするっ!? 流石に…」  鬼神も流石にキレそうになったが、それ以上の言葉を口には出さなかった。 「俺だけ不老になったって、意味ねえだろ…」  陵は鬼神と何かで繋がった事を理解した。…本能的に切れぬ何かで結ばれたと…。  そして、したと同時に美玲に置いて行かれることも理解してしまった。…理解した途端に涙が止まらなくなった。 「りょ、陵っ!?」  後ろに居た美玲がそんな陵の声音を聞いて大慌てだ。 「美玲にも置いてかれるのか…?」 「だ、大丈夫だよっ!!きっと私も不老になる方法があるってっ!?」  美玲はそう叫んで陵を抱き締める。 「大丈夫だって…」 「…でも、美玲はどう思ってる? 不老なんて…良いものじゃないのはわかってるだろ?? 俺は…なったけど、美玲が不老になって俺の隣に居てくれれば嬉しいけど、でも…でも…」  元々不老になると言われていたから、それになる覚悟はあった。だが、1人でなるとは思っていなかった。  そしてそれは、考えない様にしていた不安も溢れさせた。 「ん…、大丈夫。それは平気だよ」  老けないと言う事は、彼はこれから先、沢山の人々を見送る側に立たなければいけないということだ。  そして、陵はその道から美玲だけに"来るな"と言おうとしたのだと、当然彼女はわかっている。だから、彼の為に自身もそれだけの覚悟をしたのだ。たった一瞬で…。 「…あれ?」 「…なにこれ?」  陵と美玲が1つの光り輝く〆縄によって繋がっていた。…これは陵と美玲の間に発現したとある能力が原因である。 「なん…だと…」  鬼神はその強力過ぎる能力の発現に思わず平伏しそうになった。 「あ…れ…?」  陵の右手甲にあった紋章の半分が消えてしまっていた。 「…ん?」  その半分は美玲の右手甲に移動してしまったようだ。 「何…これ?」 「…"鑑定"」  陵は虚ろになりながらも自身のステータスを見て、鑑定を掛けた。  ・名前 リョウ・アイウラ  ・種族 人族?  ・性別 ♂  ・年齢 17  ・Lv.39  ・職業 神使役の贋作者  ・スキル  鑑定  家事Lv.4  ・ユニークスキル  言語翻訳  模倣Lv.1  射影Lv.1  投影Lv.1  絶対記憶  体力超回復  ステータス偽装  ・ゴットスキル  不老  ・???スキル  相思狂愛  ・名前 ミレイ・マイズミ  ・種族 人族?  ・性別 ♀  ・年齢 16  ・Lv.39  ・職業 神使役の射撃者  ・スキル  鑑定  射撃  索敵Lv.5  ナイフ術Lv.7  ・ユニークスキル  言語翻訳  転移Lv.5  アイテムボックス  ステータス偽装  ・ゴットスキル  不老  ・???スキル  相思狂愛 「"相思狂愛"?」 「何…この能力??」  陵の涙も止まり、美玲と共にポカンとするしかなかった。  "相思狂愛"、この能力はシンの"能力創造"に並ぶ程の恐ろしい能力であり、狂人にしか許されない力である。そして今回、奇跡を呼び起こした力だ。  それを彼らが知るのは…いつ頃になるのだろうか?
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