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第一部‐裏‐盗賊の居る洞窟。

「シン、マジもんの盗賊じゃねえか?」  レオンは盗賊の住処だと思われる洞窟を見て言った。 「…偽物があるのか??」  レオンの問い掛けに思わずシンはそう返す。 「そうじゃなくてよ。財宝溜め込んでそうだよなって話だ」 「ああ、なるほど。…確かにそういう点では当たりかもしれない」  確かにこれだけ立派な巣があるのなら、財宝は期待出来るかもしれない。 「…とは言え、財宝があってもあまり意味は成さなさそうだが」 「シンからしたら要らねえだろうなあ…。…街に入ったら使えそうじゃね?」  レオンは確かにと思いつつもそんな事を思う。 「…国に関わるのが面倒くさい」 「シンのお目当てはそんな多くねえだろうよ」  シンは人の国に行くという事実だけでうんざりしそうになる。 「まあ良い。盗賊の死体は全て回収しろ? …良いな?」 「おうよ。俺が先に行かせてもらうぜっ!!」  レオンはシンにそう告げて、その住処だと思われる洞窟に襲い掛かった。  一方シンはゆっくりとその後をついて行くのだった。 ☆☆ 「おらよっ!!」  先に突貫したレオンは素手だけで、中にいた盗賊を圧倒していた。 「化け物めっ!!」  誰かがそう叫ぶ。 「知らねえなあ?はっ!!さっさと死んじまいなっ!!!」  その叫びのお返しは力任せの拳だった。まるで車が果物を踏んだかの様に拳の先にあった頭は潰れる。 「おらおらおらっ!!」  時には剣ごと手刀で叩き割り、時には拳で槍ごと叩き壊す。そんな事をしているレオンだが、彼の本分は愛する妻を守護する騎士である。  専門外な行動にも関わらず、洞窟内にいる盗賊では数にすら含まれない程に実力差があった。  そんな後ろからはゆっくりとシンがついて来ていた。 「おい、これって元々ダンジョンの場所だったんじゃねえか?」  レオンは先にある、地下に向かう為の階段を見つけてそう言う。 「…そうかもしれないな」  シンはレオンにその中に飛び込む様に促す。 「はいよ、人使いが荒いこって」  一方、レオンはそれを聞き次第に突貫した。 「お前っ!! どこのどいつだっ!?」 「うっせえ、黙れ」  地下に降りた途端に近場に居た男-叫んだ-をフルーツの様に押し潰した。 「っち…胸糞悪い光景だな…」  思わずレオンがそう呟いてしまう程には、その空間には残虐な爪痕が残されていた。 「なるほど…ここの盗賊は奴隷を集めていたのか」  その後から入ってきたシンは、残虐な性行為に及んだであろう痕跡を見て、眉一つ動かさずに呟く。 「しかし…だ、レオンは悪魔だろう?」  レオンが嫌がるほどの光景なのかと、シンは疑問に思ったらしい。 「俺だって嫌なもんはあるさ。この世界の狂ってる所は神々もこいつらと大して変わんねえって所だろうよ」  シンの問い掛けにレオンはそう返す。そう返しながらも自身らを捕まえた神々を思い出して苦い顔をする。 「レオンの呪いが無ければフィリカに手を出されていただろうって話か。…まあ、恐らくそうだろうな」  シンはこの世界の傲慢な神々を思い出して、否定は出来なかった。 「おかしいって思わねえんだろうな。男も女も、等しく苦痛を感じるってのに」 「そうだろうな。…それより、奴隷か…残りは居ないのか?」  シンは辺りを見回したが、普通の光景を見てる分には何も無いように見えた。 「下に居るんじゃねえか?」 「…あったな」  シンは少しだけ自身の瞳に力を入れる。すると、あっさりと隠されていた階段を見つけた。  シンは小型の土玉を撃ち、その階段を塞いでいた板を粉砕する。 「んじゃあ、いつも通りに行かせてもらうぜっ!!」  レオンはその塞がれていた階段に一切足を着けずに、地下へと飛び降りた。  案の定、その場には大量の敵が待ち構えていた。 「敵さんめっちゃ居るじゃねえか。はっ、かかって来な」  なんて言う割りには、その周りにいた人型を自ら殴りに行くレオン。  レオンの拳が当たる度に頭は吹き飛び、身体の上下は別れ、刃物の破片は飛び散る。 「おらよっ」  1人の頭を持って、手裏剣の様に回転させて、敵に向かって投げつける。  投げられた方は既に遠心力の勢いにより息絶えていて、その勢いでぶつけられた方も内蔵がグチャグチャになる。 「お、この小部屋…随分と豪華じゃねえか」  殴って投げてを繰り返していたレオンは、1つの豪華な部屋の前に辿り着く。 「おい、シン? …って居ないのかよ」  入る許可をシンから貰おうとしたが、シンはついて来てなかった。 「入っちまうか」  レオンはその豪華な扉を蹴り壊した。 「なっ!! お前っ、どうしてここまで…」  中には一人の厳つい男がいた。 「全員ぶち殺してきたからに決まってんだろ??」  レオンを見て焦る男にレオンはニヤニヤと笑ってそう言う。 「てめえに聞きてえのは奴隷の在り処と財宝だ。大人しく出せば許してやんよ」  更にそう続ける様にレオンは言った。…彼の中に"許す"という文字は無いようだが…。 「奴隷はこの下だ。財宝も…」  レオンの威圧に気圧されて、大の男が声をすぼめながらそう言う。そう言いながら更に下に繋がる階段を指差した。 「そんじゃまあ…ご苦労さんっ!!」  レオンは彼を用無しと判断して殺そうとする。…が、それはシンによって止められてしまった。 「おいおいおい…こんなゴミ屑を生かしとくなんて言わねえよなあ??」 「昂ってるのか知らないが…一旦口を閉じろ」  シンはレオンを睨み、気圧し、黙らせた。 「私の部下が失礼したな。…お前の取引相手はいつ頃来る?」  シンはその頭領だと思われる男を蹴り飛ばし、壁に叩き付けてから、その顔を覗き込んだ。レオンよりも余程手荒く手厚い歓迎だった。  そう、シンが気になっていたのは財宝にしろ奴隷にしろ、何処かに取引相手が居なければ無用の長物になるという事だ。 「な…なん…ゴハッ!?」  なんで?そう問い訊ねようとした男の腹にシンの拳が突き刺さる。必要な事以外は口を開かなくて良い。 「早く言え」 「…グランパレス共和国だ」 「ご苦労」  シンは突き刺さったままの拳から彼の体内に火を送り込み、内臓から燃え尽きさせた。 「さて、次に行こう。…それとレオン? 無駄な事は口に出すな」 「…おう」  シンはレオンを本気で睨んでから、先程の男が告げた地下へと入って行った。 「奴隷は…1人しか居ないのか?」  シンは地下へと入ると同時に生体反応を感知し、そう呟く。 「…労働力には便利だと思ったのだが…」  そう呟きながらも生きていると思われる者の所へと歩いた。 (ほう?…竜人族か、珍しいな。…うん?この女の子は竜になれる竜人なのか?)  シンは目で視た者の能力を、この世界の一般的な竜人族と比べてみる。 (なるほど…、この子が普通では無いのか。…餅は餅屋と言うくらいだ。爺さんの所に連れて行ってみるか)  何故通常の竜人族よりも屈強な彼女がこの地に居るのかが、シンは気になったようだ。  この女の子…もとい少女は、完全な竜化が出来る竜人だった。この世界の一般的な竜人は、竜化出来たとしても精々身体の一部だけなのだ。つまり、通常よりも竜の遺伝子が強い娘なのだろう。 「レオン、この子を爺さんの元へと連れて行ってくれ」  年齢的には子供だが、もう既にシンよりも身長は有りそうだった。 「んあ?…わかった」 「転移させる」  シンはそう言い、盗賊の住処であるこの地から"ヘブンズガーデン"へと、レオンと女の子を転移させた。 (さて…ゆっくりと財宝探しでもしようか)  一人になったシンは、財宝の在りそうな場所を片っ端から探して行くことのしたのだった。 ☆☆☆ 「あ…あの、私はどうなるのですか?」 「さあ? 俺に聞かれてもわかんねえよ」  レオンは女の子にそう返す。知らない物は知らない。 (紫の髪に赤い目…面白い色合いしてんな)  レオンはそんな彼女の外見を見てそう思う。 「まあ、取り敢えずついて来な」  更にそう言って手招きし、爺の所へと歩いた。暫くすると、恐ろしく強大な体を晒している爺の所まで辿り着いた。 「おい、爺さん。シンから届けろって言われたんだが」  大きな亀に聞こえるように大きな声でレオンはそう言う。 『我に…?』  その大きな顔がレオンの居る方向を向き、同時に彼女の事をも視界に移した。 「ひいいっ!?」  当然、彼女はその巨悪そうな顔から、レオンの後ろに隠れるように逃げ込んだ。 『シンめ…我を年寄り扱いするのか…?』  シンと同じ様に彼女の能力を覗き、そう呟く。 「まあ、実際年寄りなのは変わんねえだろ? …で、こいつは欲しいのか?」  そんな爺にレオンは茶化すような声音から、真面目な声音に早変わりさせて決断を迫る。 『その女子は貰っておこう。…のう? ()()()()()()よ?』  そう告げる爺の言葉に彼女は更に固くなる。自身の正体がばれたからだ。 『それについて、我は気にせんからのう。それよりも…我の持てる技能をお主に授けてやろうか?』  ワニガメの様な巨悪な面が、少し笑みを含み、更に恐ろしい顔へと変化する。 「・・・」  彼女はどうやら震えていて声も出ないようだ。無理も無い、通常の生き物である彼女が、かつて最高神の友であった彼の本物の姿を見ているのだから。 「ゼラン」 『承知しました』  そんな彼女の精神状態を、レオンはゼランの能力を使う事により落ち着かせる。 「ほら、一旦深呼吸しろ」 「は、はひっ!? スーハースーハー…」  そして、何とか彼女の意識を取り戻すことに成功したようだ。 「少しは加減してやれっての。こいつは多分一般人だろ?」 『それもそうだのう。…とは言え、シンの心遣いを受け取らんわけにもいかん』  爺はその巨大な身体を、小さな小さな人型に変身させ、人の良さそうなおじいちゃんになった。 「その格好とあの格好は似ても似つかねえよなあ…」 「仕方なかろう。これくらせねば怖がられるんじゃから」 「あーはいはい。んじゃ、後は任せるぜ」  レオンはそう言って、自身の後ろに隠れていた彼女をひょいと持ち上げる。 「今日からはその爺さんに従うんだな」 「え…ああ…」  彼女の顔は蒼白となり、息が今にも止まりそうになっていた。…そんなにも怖かったのだろう。 「うむ、後は任せてくれれば大丈夫じゃ」 「…本当に大丈夫か?」  レオンはそんな爺さんの答えに思わず首を傾げそうになったが、それ以上は何も言わなかった。 ☆☆☆ 「財宝は…私だけでは価値の無いものばかりか…」  一方シンは、更に下の階層に置かれていた財宝を手に取り、観察しながらもそう呟いた。 (金銭を回収する意味はありそうだが…)  換金しなくても済むのだから、街に入る際に楽になるだろう。 (…いや、金銭ばかりだな)  シンは財宝のあちらこちらに手をつけたが、何処を見ても金貨銀貨の様な物ばかりだった。  材質だけで見ればシンに意味は当然無いが、金銭的な意味合いとしては十二分にある。 「主、レオンを連れて参りました」  レイがそんなシンの後ろに突然姿を現した。…レオンを連れて。 「態々ありがとう」 「いえ、では失礼致します」  レオンを置いてレイは帰ってしまった。 「この後はどうすんだよ?」 「ここの盗賊と取引していた存在を潰す。と、同時に色々な物も手に入れられそうだな…と」  シンが態々レオンの拳を止めたのはそれだけが理由だった。 「相手が国であっても??」 「当然だ、貴族だろうが王族だろうが関係ない」  そうは言うが、実はシンは王族や貴族であったら良いなと思っていたりする。  搾り取れる物が多いからだ。奴隷が居るのなら尚良し、手間暇かけて奴隷も育成していこうと考えていた。  自身の妻であるミリに眷属にしてもらおうと考えていたりも…。 「世界終わっちまわねえか不安だぜ」 「逆に聞くが、この世界に未練があるのか??」  レオンの呟きにシンは問い掛ける。 「ねえよ。そんなもん」 「…だったら気にする必要も無いだろう??」 「とは言え、自分からぶち壊しに行こうとは思わねえよ」 「私には必要な事だ。…それに、地球の最高神からの依頼はそう言う依頼だ」  シンは自身の利益と、最高神らの依頼が沿ったようなものだったからこそ引き受けただけだ。  偶々"勇者召喚をしたバカをよろしく。あと、出来れば要らない悪は消しといてくれると助かるかなあ…なんて"と最高神に言われただけである。  最高神は言外に必要悪は残せと言っていることになるが、世界がそれが存在しなければ成り立たない…とでも言えるほどの必要悪以外は消しても問題ない。  因みに天照大神から引き受けた依頼は"男女の保護"で、報酬は"最高級品の着物"である。  こちらは割と現実的な物品が取引されていた。  …天照大神が上手いことシンにその気にさせたせいでもあるが…。 「まあ、そういう事だ。暫くはこの洞窟でのんびりとする事にする」  シンは自らが殺した盗賊と取引をしているであろう何かを待つことにしたようだ。 「ここに来るとも限らねえだろ?」 「これだけ色々あればここに来るだろう」  奴隷にしろ財宝にしろ運ぶ為の馬車が無いのだから、ここまで何者かが来るだろうとシンは考えた。 「でもさっき、関わんのめんどくせえとか言ってなかったか?」 「ああ、国に関わるのは面倒だ。ならば始めから敵対でもしてしまえば良い」
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