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第一部‐異世界召喚。

 シンと地球の最高神が取り引きの話を進めている時間から少しだけ遡る。  キーンコーンカーンコーン!  日本のとある学校では、その日の終わりを告げるチャイムが鳴り響いていた。 (はぁ…やっと終わった…)  その中に居る1人の男子高校生はそう思う。 「陵、帰ろう?」  声を掛けてきたのは、そんな彼と付き合っている彼女の美玲だ。 「あぁ…そうだな早く帰ろう」 「陵が遅いんだよ!?」  彼は荷物をまとめるのに、少し時間を掛けてしまった。 「悪い悪い、まあ…そう言うなよ」  彼‐陵‐がそう言いながら、美玲の額にデコピンを喰らわせようとする__  ガンッ‼ 「ッつ~!!!」 (ヤバイめっちゃ痛いっ!)    ______陵がデコピンしようとした指に合わせて、彼女は頭突きを繰り出したようだ。 「陵のそれにはもう慣れちゃったもんね〜」  涙目になりながらも美玲が言う。頭突きをした張本人もそれなりに痛そうだ。 「お前…これめちゃくちゃ痛いぞ?」 「彼女にデコピンしようとした君が悪いのさ」 「…どこのキャラだよ」 「え〜結構決まったと思ったのに…」 「これで何が決まるんだよ…」 「………知らない」  涙目になるくらいならやらなければ良いのにと思う。それと、何を話してるのかよくわからない。  ______突然、彼らの足元が光り出す。 「ねぇ…陵、これ何?」  美玲が光りだした地面を見て訊ねる。 「…これって異世界転移かな?」 「あ、それフラグ______」  ______時既に遅し、彼らは地球から居なくなった。 ☆☆ (んっ?ここはなんだ?)  陵は自身らが、見知らぬ空間に居る事を理解する。 「やあやあ、大丈夫?じゃないよね?」  何処からともなく、彼らにそんな声が聞こえた。 (あんたは確か…) 「そうそう僕達、一度出会ってるよね」 (確か…あれは車に跳ねられた時じゃなかったか?)  陵はそんな声の主と出会ったことがある。 「うん、そうそう偶々君の魂が僕の所に来ちゃったからね」 (いや…その前に…だ。別にあんたに会ったの一回じゃないだろ?)  陵曰く、その1度だけではないようだ。 「あれれ?やっぱり気付いてたんだ?」 (そりゃあそうだろ、俺達が秋〇原に行くたびに遭遇するんだから)  どうやら彼らと声の主は秋葉原でしょっちゅう出くわしていた。  実は陵はライトなオタクで、美玲はサバゲープレイヤーらしい。そんな2人の共通の趣味を満たせる地が秋〇原だったせいだ。それも相まって、彼らはお金が溜まると秋〇原に…となっていた。  最近は、今聞こえる声の主に出会う為…というのも秋〇原に目的の1つだったり。 「あらら、案外聡いんだね。でも時間が無いから、これからの説明だけさせてもらうね」  そうしてその声が彼らに説明したのは4つ。  1つめはこれから別の世界に飛ばされてしまう事。  2つめは自分にこれは阻止できない事。  3つめは俺達を気に入ったから能力や武器を少し与える事。  4つめは向こうに飛ばされたらすぐに逃げ出す事。 「今回の異世界転移はイレギュラーじゃないんだ、誰かが何かの理由で呼び出したんだよ。こんな事する存在が良い存在な訳がない」  その声の主は怒気を含ませてそう告げる。 (それくらいはわかってる。大丈夫だ) 「良い?わかったね?絶対に逃げ出してね、その為の能力も渡したからね?絶対だからね?」 (何でここまでするんだよ、()()?)  陵はそこまで至れり尽くせりに面倒を見てくれる声の主に問う。 「ほらやっぱり、君は僕が神様だって気付いていても、一緒に漫画喫茶とかメイド喫茶とか行ってくれたじゃないか」 (…あんな美人さんが秋〇原歩いてたら色々とアウトだろ?) 「うん? あぁ…そう言う事か、次からはモブを突き詰めた格好で行かないといけないね」 (神様がそんな所行くなよ…) 「別に自分の趣味くらい好きにしたって良いじゃないか」 (いや、まあそうなんだけどな?幻滅されるぞ?) 「僕はそんくらいじゃ消えないから平気さ、でも君達居なくなるとつまんないなぁ…」 (はは…それは悪い) 「んーん君達のせいじゃないからね、気にしないで」  その声の主はそうは言うが、とても悲しい声音だった。  やがて見知らぬ空間が思いっ切り歪んだ。 (…あ、そろそろ時間か?) 「うん、そうだね、もう会えないかもしれないけど、じゃあね」 (そうだな、じゃあな)  その空間が崩れ去ると同時に、彼らは異世界へと旅立ったのだった。  あまり時は経たずに、彼らは彼女と再開出来る事を今はまだ知らない。 ☆☆  一方、彼らを見送った声の主‐天照大神‐は…。 (はぁ…よくもやってくれたよねぇ? 彼らと居るの楽しかったのにさぁ…)  今回の件、彼女は最高神にしっかりと伝えに行ったようだ。その結果、最高神がシンに依頼を出す事になったのだが、そんな事はどうでも良い。  実は天照大神、その異世界とやらに神話や伝承のごとく殴りこもうとしたが、他の神々に止められている。 (…こんな事出来るの、神かそれに準ずる者しか居ないんだよねぇ)  彼女はこんな事を行った存在を本気で恨む。  普通の人々では異世界の存在を感知することは出来ない。だからこそ、行ったのが神々に準ずるだけの強大な存在である事は理解出来ていた。 (_________見つけ出して消滅させてやるよ…)  こうして天照大神が、恐ろしい程の怒りをその世界へと向ける事になってしまった。 ☆☆ (ここは…何か高そうな…。あぁ…城か何かか?)  陵は新たな地に足を踏み入れて考える。何人かのクラスメイトも共に、この世界へと転移してきた事を理解した。 「美玲、大丈夫か?」  自身の彼女にそう問い掛ける。 「問題ないよ。でも、どうしよ…」  美玲は流石に焦っている。 「俺と神様との会話は聞いてた?」 「聞いてた、何も言えなかったけどね」  恐らく、転移までの時間上の問題で彼女の口は塞がれたのだろう。 「話が早い。美玲、取りあえずステータスと唱えて」  陵は取り敢えず、予想の域を超えない、存在しているかもわからない事柄を実行する様に美玲に言う。 「「ステータス」」  するとステータスが出現した。そして互いに彼らは見せ合った。  ・名前 リョウ・アイウラ  ・種族 人族  ・性別 ♂  ・年齢 17  ・Lv.1  ・職業 贋作者  ・スキル  鑑定  家事Lv.4  ・ユニークスキル  運命共同体  言語翻訳  模倣Lv.1  射影Lv.1  投影Lv.1  絶対記憶  体力超回復  ステータス偽装  ・名前 ミレイ・マイズミ  ・種族 人族  ・性別 ♀  ・年齢 16  ・Lv.1  ・職業 射撃者  ・スキル  鑑定  射撃  索敵Lv.5  ナイフ術Lv.7  ・ユニークスキル  運命共同体  言語翻訳  転移Lv.5  アイテムボックス  ステータス偽装 (抜け出す為のスキルは用意してくれてるな。神様、本当に助かった)  陵は自身のステータスを見て、そう安堵してから周りの人を"鑑定"する。  偽造の参考にする為のステータス見ようとしていた。  ・名前 リュウスケ・ジングウジ  ・種族 人族  ・性別 ♂  ・年齢 17  ・Lv.1  ・職業 勇者  ・スキル  剣術Lv.1  火属性魔法Lv.1  水属性魔法Lv.1  風属性魔法Lv.1  土属性魔法Lv.1  光属性魔法Lv.1  ・ユニークスキル  言語翻訳  今彼が見ている男は比較的高校エンジョイ組の奴だ。 (………思いっきり勇者だな。…他の奴は?)  ・名前 ナナ・ニノミヤ  ・種族 人族  ・性別 ♀  ・年齢 16  ・Lv.1  ・職業 勇者  ・スキル  火属性魔法Lv.1  風属性魔法Lv.1  空間属性魔法Lv.1  光属性魔法Lv.1  ・ユニークスキル  言語翻訳 (これは…皆勇者パターンか?)  そう思いながらも陵は偽装パターンは決めた。 「美玲、俺の偽装したステータスを見て自分なりに偽装しろ」  そう告げて陵は自身のステータスを美玲に見せた。  ・名前 リョウ・アイウラ  ・種族 人族  ・性別 ♂  ・年齢 17  ・Lv.1  ・職業 勇者  ・スキル  家事Lv.4  ・ユニークスキル  言語翻訳 「これを参考に…こう?」  それを参考にした美玲の偽装ステータスはこれだ。  ・名前 ミレイ・マイズミ  ・種族 人族  ・性別 ♀  ・年齢 16  ・Lv.1  ・職業 勇者  ・スキル  索敵Lv.4  ・ユニークスキル  言語翻訳 「そうそう、そんな感じで良いよ」(さあ…相手を騙し通せるかな?)  陵は相手が看破系の能力を持っていないことを願った。…が、そもそもの話、かの天照大神が与えた能力が、ただの人如きに破られる筈もなかった。  見た目麗しいと思われるドレスを来た女性が転移者の前に現れる。 「ここはどこなんだっ!?」  その女性に先程鑑定されたリュウスケが叫んだ。 「ここはラフタという世界のグランディス帝国です。また、私はその国の王女をやらせていただいております。」 (……俺達を転移させたこの国は確信犯らしいな)  訳もわからずに連れてくる事を想定している点から、陵はそう決定づける。 「地球じゃ…ないのか?」 「ええ、ここはそのチキュウとやらではございません。今回、貴方達を召喚した理由は、この世界に魔王が生まれた為、貴方達勇者の力を使い倒してもらう為です」 (今回って事は初めてじゃないのか…)  陵は更に危機感を募らせていく。 「…俺は一般人だぞ?」 「いいえ、ここに召喚された人は皆、強力な力が与えられています」 「どうしてわかる?」 「皆さん、ステータスと唱えてください、そうすれば貴方達の力が分かります」 「「「「「「「「ステータス!」」」」」」」」  彼らがステータスを見て喜び、その間に王女はそれぞれを見て廻っていた。  だが、陵達のステータスを見た途端に露骨に嫌そうな顔をする。 (……怖っ! まあ…すぐに出て行くから良いけどな) 「美玲、この後すぐに、俺達から出て行くように言うけど良いよね?」  そう思って陵は美玲に聞いた。 「うん、良いよ。…いや〜怖いね、あの人」 「ほんとそれな」  そんな事を彼らが話している間に、王女は召喚された者達の中央に立った。 「皆さん、ステータスを見る時間は一旦止めにしましょう。この中で私に何かある方は手を上げてください」  王女様はわざわざ意見の時間をくれるらしい。陵は手を上げた。 「そこの方」 「俺達に戦う力が無いのはさっき王女様が見たからわかるだろう?俺達はこの集団を下りさせてもらう」  陵がそう告げると周りに居る貴族が礼儀がなって無いだのなんだのと騒ぎ出す。 (あいつら、全員ぶち殺したい)  陵は陵でもうかなりイライラしていた。…勝手に呼び出したのはお前らだろう…と。 「貴方達はこれから先どうやって生きていくおつもりで?」  王女は彼らの問い訊ねる。 「俺達は既に付き合っていてな、料理でも出しながら、一緒に稼いでいこうと思ってるよ」  完全に嘘とも言い切れないような嘘を陵は吐いた。そんな未来も良いかな…と彼は口に出しながら思った。 「…わかりました、今夜はこの城にお泊りください。明日の朝、ここの城からお出しいたします」 「ありがとう、このまま戦闘に参加していたら間違いなく死んでたよ。助かった」  陵は表面だけのお礼を告げた。内心、ぶち殺したい衝動を抑えながら。 「では、他に意見はありませんでしょうか?……ありませんね?ではこの後、食事をお出ししますので、あちらのメイドについて行ってください」  そう言って王女は質疑応答の時間を閉じ、メイドの居る方向へと手で示すのだった。 ☆☆☆☆  それから3時間程時間が経ち、食事を終えた陵達はメイドに泊まる部屋へと案内されていた。 「では、リョウ様、ミレイ様、こちらでございます」 (…普通の部屋だな…)  陵は部屋を見てそう思った。 「わざわざ案内してくれてありがとうございます」  美玲がそう言うと 「これは私の仕事ですので。明日の朝、室内の時計で6時に貴方達を迎えに来ます。それまでに準備をし終えてくださいませ。では、失礼させていただきます」  メイドは頭を下げて今までの道を引き返そうとする。 「ああ、ありがとな」  そんなメイドに陵はそう言って、美玲とともに部屋に入っていった。 ☆ 「あ、美玲、そこ閉めて〜」 「ん?はいはい」  バタン!  部屋は閉め切られた。 「はぁ…疲れた〜…取り敢えず明日までの我慢だね」  美玲がそう言う。 「そうだな。…でも偽装されたのを見せたら、予想通り要らないって言われた」 「そうだね~! でもさ、それ以上に私は陵に聞きたいことあるんだけど」  美玲が陵にこう言う時はだいたい怒るパターンだ。 「…何?」 「何で、秋〇原でしょっちゅう会ってたあの人が神様だって知ってたの? 知ってたなら教えてくれても良かったんじゃない?」  そう、美玲は知らなかったのだ。 「悪い、俺もあんなところで会うまでは全く確信無かったし」  陵もあの場面で初めて、彼女が神であると確信したようだった。所詮、"ああ、もしかしたら人じゃないのかな?"程度である。 「そうなの?」 「そうそう、納得した?」 「…一応…納得した…?かな?」 「大丈夫だよ…美玲…俺は美玲に依存してるから」 「…それくらい私も知ってるよ…私も陵に依存してるから」  そう、彼らは互いが互いに依存してる。ここまで依存したのは高1の夏のあの事件が原因だっただろう。 (俺と美玲が付き合い始めたのは中2の頃の夏だ。  もう何がキッカケだったかなんて覚えてない。    その中2から高1までは普通だった…と思う。  普通に遊んで普通にデートして…。  でも、その普通も、高1の夏に偶々俺が家族と車で出かけている時に交通事故に合ってしまった事で変わった。  俺以外交通事故で全員死んだ。  いや…まあ…保険とか沢山出たから、1人になったけど、生きて行くのに不自由はしなかった。  でも、その時に美玲が「ねぇ…私の家で住まない?どうせ、親公認なんだし、その…何というか…どう?」  あの時の顔が少し紅くなった美玲の言葉も表情も全て明確に憶えてる。  そこから俺は美玲に依存した、し続けた。  でも、俺はこうやって美玲に依存する自分が嫌いじゃない。  だって美玲も俺に依存してるって言ってくれるから…。)  陵は美玲に対して夢想する。…彼にとって彼女は何よりも大切なものであり、1つ想えば、無限のように想いが湧き出てくる。  それから暫く話していると、陵は眠ってしまったようだ。  そんな陵を見て、美玲は口を開いた。 「………ねぇ陵?聞こえないと思うけどさ。  私はね、陵よりも陵に依存してるよ?  陵が私に依存し始めたのは高1の夏だけど、私が陵に依存したのは中2だよ?  あはは、早過ぎだよね…。  あの時の私は学校のクラスでハブられてた。  ハブられた理由なんてしょうもない理由だったと思う。  その時に陵は私と一緒に居てくれた、味方してくれた。  それでね、私は陵だけと関わっていたいって思ったの。  そこから私は陵に告白した、陵は受け入れてくれた。  そして私の陵への依存は始まった。  だから、私は陵より陵に依存してる。  でも、私は陵に依存する私は嫌いじゃない、だって私が陵に依存しても陵は受け止めてくれるでしょ?」  美玲は陵に聞こえるように独白し、そして彼の大切さを再確認する。  そして最後、陵の頬にそっとキスをした。  この世界を生き抜く為に…。
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