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第零部‐地球に行こうとする。

「レイ、少し付き合ってくれないか?」 「?…構いませんが?」  翌朝、突然シンにそう言われて、レイは何か心当たりが無いかと考えたが、身に覚えは無かった。 「何故、態々外へと?」  レイはシンに外に連れられてから、更に疑問に思う。 「私の性格の中枢になっている人格が地球人である事は話したな?」  だが、今度はシンがそう訊ねた。 「…それは、もう殆ど思い出せないと仰られていましたよね?」  シンの中にある記憶が完全に統合しかかっているせいで、その全ての記憶が曖昧になろうとしていた。 「ああ。…ただ、夢に見てな?」 「なるほど、思い出したうちに行ってみたいと?」 「そういう事だ」  シンは夢の中で自身の記憶を、偶々垣間見ただけだった。 「わかりました。お供しましょう」 「ありがとう。じゃあ、行ってみよう」  シンは自身の夢の中で見た"赤い鉄塔"目掛けて、異世界から地球へと転移をした。…当然、レイと共に…。 ☆☆ 「…誰だ?」  だがしかし、何者かによってシンの転移は阻まれてしまった。転移先が見知らぬ白い空間になってしまったのだ。 「私は地球の最高神と呼ばれる者だよ。初めまして、君は何者だい?」  白い髪に茶色い目を蓄えた1人の男が、シンとレイの前に現れた。 「何者かと言われると難しいな。貴方は何用なんだ?」 「私は君がいきなり転移してきたから止めに来たんだよ」 「…何故わかった?」  止めに来たと言われてしまえば、シンは地球には転移出来ないのかと少し悲しくなった。 「あー…それはねえ、君が転移してきた先が私の世界の人々を攫った世界だからだよ」 「ああ…あの世界は勇者召喚なんて物もあったな」  シンは世界ラフタにそのような物があった事を思い出す。 「そうそう、で、警戒していたら君達が来たって訳だよ」  地球の最高神はそう告げた。 「…残念ながら、私はあの世界の住人では無いんだ」  そんな最高神に対して、シンはそう返す。 「つまり無関係?」 「…まあ、一言で言えばそうなるな」 「あーそう…それは困ったなあ」  最高神は頭をがしがしと掻きながらそうボヤいた。 「うん、よし。それで行こう。君に素晴らしい報酬をやるから勇者召喚した馬鹿を捕まえてくれないかい?」  だが、その上でシンに対して依頼をしようとした。 「…報酬による」 「報酬はね…惑星1つかな」 「…随分と大きな報酬だな」  流石にシンと言えども、大き過ぎる報酬には唸らざる得ない。 (…怪しい。もし彼が最高神だと言うのなら、私は彼の年の功に勝てるとは思えない)  最大レベルでシンは彼を警戒していた。敵対すると厄介な相手になる事は間違い無い。 「いやー…正直言って要らないからさ。…管理するのも面倒くさいし、だから半分押し付けみたいな感じだよ」 「…参考までにどんな惑星か聞いても?」 「人が居ない惑星かな。全然世界としては進んでないよ」 「…最高神、その惑星を持っている理由は?」  仮にも神である彼が、要らないとまで言っている理由が気になった。 「簡単だよ。私達地球の神々がその世界を滅ぼしたんだ」 「つまり戦勝地だと?」 「そんな感じかな。でも、そんな土地は要らないからねえ…」  シンは滅ぼした理由を聞かない事にした様だ。 「…その地に何か仕掛けがされている訳では無いな?」  その問い掛けは、その惑星に興味を示したからだ。 「もちろん。そんな事すらしてないくらいには放置してるからね」 「言質が取った。それならその報酬で私達は依頼を受けよう」  報酬欲しさに、シンはその依頼を受ける事にしたようだ。 「よし、じゃあ決まりだ。…「最高神様。妻である私に内緒で事を進めるとはいったい何事でしょうか?」」  何処からとも無く美声がその白い空間に響き渡り、最高神は首をまるでロボットのようにカクカクと声のした方へと向けた。  シンと後ろに控えていたレイも同様にそちらに顔を向ける。すると、そこには3対6枚の翼を持つ、天使の姿があった。 (綺麗な方ですね)  レイが思わず反射的にそう思ってしまうくらいには美しく、そして神々しかった。 (最高神よりも存在の格が上だ。…恐ろしく彼女は強い)  対してシンはその天使にそう思う。 「すみませんね。私は地球の最高神の妻で"原初の天使"と言います。地球の最高神と同様に人のような名は持っていません」  更にチラリとシンを見てから、天使はそう告げた。 「私の名はシン、後ろに控えているのはレイだ。よろしく頼む」  シンはそんな原初の天使に名乗りを上げる。 「今回私が此処に来たのは2つほど理由がありましてね。その内の1つが、私の夫が報酬として与えると告げた惑星に私達の別荘を持たせて欲しいというものです」  原初の天使はそんなシンの名乗りに頷きを返してから告げた。 「…別荘?」 「ええ、地球はもう殆ど最高神の手を離れていますから、態々夫が地球を管理する必要も無いのです。今も既にその惑星には別荘がありまして、私がとても気に入っているのです。今までもそれだけの為に、その惑星の面倒を見ていたと言っても過言では無いくらいに…」 「ひいっ!ごめんってば、埋め合わせはするつもりだったよ?!」  原初の天使は流し目を地球の最高神に向ける。すると、最高神は言い訳のように叫んだ。それ程までに、その別荘とやら存在は原初の天使には大切な物だったようだ。 「…まあ、そういう事です」 「別荘の大きさは?」  シンはそんな原初の天使に訊ねる。 「10000平方mくらいでしょうか?」 「まあ、それくらいなら構わないか…」  惑星と言うくらいだから莫大な土地があるだろう。それくらいなら良いかとシンは思う。 「ならばそのようにお願いします。その代わりと言ってはなんですが、私は少しばかり土地の掃除をしてから貴方に惑星をお渡し致しますね」  原初の天使はそう告げて、姿を消してしまった。…もう1つの理由はなんだったのだろうか? 「はあ…、そんなに怒る事かなあ??」  最高神は原初の天使が消えた途端に、これみよがしに溜息を吐いた。 「私達に聞かれても困る」 「だよねえ…まあ、そういう訳だから、少しだけ土地をくれると助かるかな」 「…まあ、良いだろう」 「じゃあ、商談成立って事で。後さ、勇者召喚の件なんだけど…誰がやってるとかわかる? 普通はその世界の最高神がやってる筈なんだけど」  地球の最高神は今までの話を最初に戻した。 「残念ながら最高神はあの世界には居ない。他の神族に殺されたようだ」 「なんだって!? って事は勇者召喚は殺した神族が勝手にやったって事かいっ!?」 「そんなに驚く事だろうか?」  シンは叫んだ最高神に問い掛ける。 「そりゃあ驚くさ。それに…最高神が存在していないって事はその世界のトップが居ないってことだ。…誰に責任取らせんのさ」  思いっ切りあちゃーとでも言いたげな顔を最高神はしていた。 「はあ…、となるとシンが勇者召喚をした馬鹿を捕まえても意味は無いなあ…」 「ならどうすれば良い?」  シンはボヤきだした最高神に問い訊ねる。 「その世界に魔王は居るの?」 「…一応居る事になってるな」  シンは"惑星(ほし)教科書(あるきかた)"で手に入れた情報を思い浮かべながら、そう告げた。 「ならさ、魔王の討伐もお願いしていいかい? その裏に関わっているのも全てだ」 「…勇者召喚だけでは無かったのか?」  シンは少し不満を浮かべる。 「そこを何とか! あと、勇者召喚を行った主犯も消して良いからさ」 「…良いのか?」 「うん、最高神が居ないってことはどちらにせよ…私がその世界を管理する事になるから」  最高神は物凄く嫌そうな顔でそう言った。 「そういうものなのか」 「そういうものなの。何か持って行きたい物があったら、勝手にその世界から持って行って良いから、…だからお願い出来ないかな?」  最高神にそう言われ、シンは少し考え込む。それと同時に、ミリやレオンらを捕まえた存在が"最高神擬き"であった事を思い出す。 (なら…その憂さ晴らしをしながら最高神の依頼をこなすのも良いかもしれないな)  シンは密かにそう結論を出した。どうせ彼にはしなければならないことは無いのだ。 「まあ、出来るかはわからないがやってみよう」 「本当かいっ!? いやあ、助かるよ。これでまた彼女に怒られなくてすむよ」  彼女とは先ほど居た原初の天使の事である。 「で、どうすればいい?」 「向こうの世界に私が降りると色々と問題が起きそうだからねえ…」  最高神は少し頭を悩ませるようにそう言った。 「私の亜空間だったら問題無い筈だが?」 「あ、君、個人で空間を持ってるんだ。ならお邪魔させて貰おうかな。…今から」 「…今から?」 「え?その空間に私が転移できた方が色々と楽じゃない?」 「それもそうだな。…なら、このまま案内しよう」 「助かるよ」  そうして、シンは地球の最高神を連れて"ヘブンズガーデン"へと転移するのだった。 ☆☆☆☆ 「で?シン?私に何か言い訳は無いのかしら??」  シンが最高神を連れて家へと帰ると、ミリが怒気を浮かべながら問い掛ける。 「あーいや…その、すぐに帰る予定だったからな?」 「…それでも、この世界の主が何も告げずにどこかへ行くってどういう事なのかしら?」  そう、シンが転移した先を"ヘブンズガーデン"に居たメンバーは誰も知らなかったのだ。 「わかった。…昨日の分も含めて埋め合わせをしっかりとするから」 「埋め合わせなんてされても貴方の変わりにはならないわよっ!? 昨日と言い今日と言い、心配させてる自覚はあるのっ!? せめて行先くらいは告げて行きなさいっ!!」  ミリは割と本気で怒っているようだ。 「…悪かった」 「ミリ、今回は私からも謝ります。次から告げてから行きますから…ね?」  レイは慌ててシンとミリの仲裁に入った。 「…わかったわ。レイがそう言うなら」  レイの仲裁で、ミリはあっさりと身を引く。 「ええ。では最高神様、中へとどうぞ」  彼女が引いたのを確認して、レイは最高神を自らの家に招いた。 (!?…後ろに居る彼…最高神なの??)  ミリは顔に何とか浮かべないようにしながらも、内心でかなり驚いていた。 「はいはい、ありがとう」 「まあ、ここに来てる時点で用事は終わったようなものだがな」 「…君も釣れないねえ。ま、色々と細かな話も出来るならしちゃいたいからさ」 「あー…まだ何かあるのか?」 「もちろん」 (はあ…面倒だ。とは言え、引き受けてしまったからな)  そうして、シンは細かな話を地球の最高神と詰めていくのだった。
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