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第零部‐新たな仲間と・・・。

「おかえりなさいませ。主」  シンが4人を拾って家へと連れて帰ると、先に戻ってリビングルームで寛いでいたレイが口を開く。 「後ろの方々は…あの部屋に居たのですね?」 「ああ、女性達の服作りを任せても良いか?」  シンは後ろに居る3人にちらりと視線をやってからお願いをした。  4人の服装はあくまで肌を隠す為だけのものでしか無く、長時間着る事は、とてもではないが有り得ないと思える物だった。 「ええ、構いませんよ。ガウリエル」  レイは中級神ガウリエルを呼んだ。 「はっ…何でしょうか、レイ様?」  すると、何処からとも無くガウリエルは現れた。 「後ろに居る3名の女性を私の部屋へと案内しなさい。…丁寧に」 「承知しました。では御三方、私の後について来てください」  レイはガウリエルに任せて一足先に2階にある自身の私室に向かい、彼女はフィリカとリオンと吸血鬼の女性を先導して、シンの居るリビングルームから出て行ってしまった。 「自身の妻と離れるのは嫌だろうが…今は我慢してくれ」  シンは目の前の、悪魔のハーフであるレオンにそう告げる。 「…どうしてわかった?」  レオンはシンにそう言われた事にいささか不信の目を向ける。 「うん? 恋人だったのか?」 「…ああ、いや、何でもねえ。疑って悪かった。ああ、あいつは妻だ」  レオンはすぐに不信に思った事を謝罪した。  レオンが不信に思ったのはシンがフィリカの事に対して"レオンの妻である"事を断定した様な物言いをしたからだ。  だが、その後に"恋人だったのか?"と、シンが告げた事によって彼はあくまで気を遣って言っていた事を理解したのだ。 「そうか。それは良いが…こちらもレオンの服を作ってしまおうと思う。…何か要望はあるか?」  シンも多少疑心暗鬼になる事は仕方の無い事だと思っている為、さらっと流す事にした。 「あーいや…俺はあんたに従う。…なんつーかな、俺をあんたの部下にしてくれねえか?」 「…どうしていきなりそう言う話になる??」  シンはレオンの言葉に驚きを浮かべる。 「…あんたは多分、この世界の最高神擬きより強い。だから…あんたの剣となって働くから…俺を部下にしてもらえねえか?」  レオンの赤黒い肌も相まった威圧的な見た目は、シンの前に膝を着いた。 「…私が最高神擬きよりも強いのか」  レオンの言葉を聞き、そうだったのかとも思うが、それ以上に"所詮最高神擬きだから"という思考がシンの思考を占めていた。 「駄目なら諦めるけどな。…ここであんたらの不興を買っても意味ねえ」  レオンは更に続けてそう言った。 「いや、良い。認めよう」  しかし、シンはあっさりとレオンの申し出を受諾した。 「…マジかよ」 「まあ…弱くは無いからな。それに…私に騎士が出来るのも面白いなと思う」  シンは目の前の男が騎士である事を見抜いていた。しかもかなり腕のある存在である事と、自身が剣のみで戦ったのなら勝てないであろうことも。 「"弱くは"…か」 「世辞は言わない。…ふむ、ならレオンには騎士服を何着か渡そう。普段はそれを着ていてくれれば良い」 「ああ、わかった」  シンは内心で自身に剣を捧げる存在が出来る事を喜んでいたが、それでも完全に信用し切った訳では無かった。 「それから…契約しよう。これはレオンが私に危害を加える事の出来ない様にするものだ。…私が許可を出せばその限りでは無い」  シンが今提案した契約は"眷属契約"とはまた別の物だ。ただ単に、自身に危害を加えられ無いように…というだけの物だ。 「…わかった」(…仕方ねえな)  レオンはレオンでそれを聞き、諦めた。  もし…言われた通りの契約では無かったら? そんな事を考えもしたが、これから仕えていくとするならば、ここでその契約に対して口を出すという事は有り得なかった。  自身の妻と自身の安全を手に入れる為に…。 「我、汝らを守る事を誓う。故に汝は我の為に剣を振るう事を誓うか?」  シンは"契約"と呼ばれる能力を使いながら、レオンに問い掛ける。 「誓う」  レオンがそう答えると同時に、シンと彼の何かが繋がった事をお互いに理解する。 「…これにより、契約は成立した」  シンはその感覚により、そう告げたのだった。 ☆☆  一方、レイとガウリエルは新しく来た彼女らの寸法をせっせと図っていた。 「貴女の名前は?」 「・・・」  吸血鬼の彼女は未だに自暴自棄な目をしていた。 「腕を上げてください」  レイは彼女が答えないのがわかると、次はそう指示を出した。すると、彼女はあくまで機械的に腕を上げて万歳をした。 (聞こえていない訳では無いのですか)  レイはそう思いながら、吸血鬼の彼女のバストや背丈などの諸々の大きさを図っていった。 「次はリオンです。腕を上に上げてください」  レイが1人に付きっ切りになっている間、ガウリエルはフィリカの採寸を終えて、リオンの採寸に入っていた。 「あの…お手伝い出来る事があれば…」  フィリカは忙しなく働く、いかにも神様風な服装を着ているガウリエルにそう言った。  神様風、というのはギリシャ神話に出てくる女神様の様な服装だ。 「その件はあちらにいらっしゃるレイ様にお伝え下さい。私に判断する権限はございません」  ガウリエルはピシャリとそう言い放ち、リオンの採寸を行う。 「…わかりました。では、そうします」  フィリカはそう言われた為、レイの方へと歩いて行った。 「…でも、何で中級神様がここに居るの?」  リオンはガウリエルに訊ねた。 「私はレイ様に完膚無きまでボコボコにされ、降伏致しました。…今は敬愛する主ですが」  ガウリエルは特に気にも止めた様子も無くそう告げた。 (シンみたいな存在が2人も居るんだ…)  リオンはそれを聞いてそう思った。実はリオンは中級神を倒す事は出来ない。だから、少しだけガウリエルに対しても恐れの様な物を抱いているようだ。 (シンと言っていた彼は…簡単に壊してた)  自身を縛り付けていた拘束具を思い出してそう思う。 (レイと言われていた彼女は中級神様をボコボコにする存在…)  中級神であるガウリエルの話を反芻させながらそう思う。 (これは…ヤバい所に来ちゃったかもしれない)  ()()()()であるリオンは心の中に段々と焦燥を募らせていった。  ☆☆ 「レオンが使っていた武器はどんな形だ?」  レオンを引き連れ、地下の研究室の隣にある鍛治室に入ったシンはレオンに訊ねる。 「でっかい盾とでっかい剣だ」  レオンが言ったのを聞き、シンは鍛治室にあった特に目的も無く作り出された武器を漁り始めた。  この鍛冶室はユニコーンのユウに小屋を譲った直後に作られた部屋で、かなりの広さを誇っている。 「これはどうだ?」  そんな中、シンは1本の剣をレオンに向かって投げた。 「おわっ!?…ちょっと小せえ」  レオンは驚きつつも上手くキャッチして、シンにそう言った。 「…なら、これはどうだ?」  シン程はありそうな長さの十字剣をレオンに投げた。 「…よっと、んなあ、さっきから業物ばっかじゃねえか?」  レオンはそれを受け取って、シンにそう言った。 「そうなのか? 私以外は剣を打たないからな」 「…シンが打ってんのかよ」  彼は思わずその事実に破顔した。 「それは良い。…で?」 「俺はこの剣が良い」 「ならくれてやる。…次は盾だな」  シンはそう結論を付けて、次の武器を探し始めた。 「・・・」  レオンは何となくシンの性格を理解し始めた為、特に何も言わずに彼を待つ事にしたようだ。 「これはどうだ?」  シンは自身の身長と同じだけの大きな円盾を、レオンに向けて投げた。 「おわっっと!? …俺が取れなかったら周りがぶっ壊れんぞ…」  レオンは円盾を受け取ってそうボヤく。 「壊れても直せる」  そのボヤきにシンは興味が無さそうに返す。 「…重さも悪くねえし、大きさも悪くねえ。俺はこれで良い」  レオンはその円盾を持ってそう告げた。 「まだあるが見なくて良いのか?」 「ああ」  レオンがそう言ったため、シンはそれ以上は何も言わずに1階のリビングルームへと引き返した。 「主、こちらの採寸は終わりました。ですから…次は家を造りましょう」  レイが既にリビングルームに戻って来ていて、後から戻って来たシンを見てそう告げた。 「…そうだな」 「でしょう?…あとそれから、彼の採寸を終えたのならその結果を私にください。彼の分も私が作らせて頂きます」  レイはこのダンジョンに篭もり始めてから50年もの間、ずっと家の裁縫と調理をやって来た。  今では自信もある。それに加え、それらをする事が楽しいと心の底から思っていた。  その楽しみはシンにすら譲る気は無いようだ。 「あ…ああ、わかった。少し待ってくれ」  シンは紙を創造し、文字を浮かび上がらせ、それをレイに渡した。 「では、その様に」 「じゃあ、4人は私達の後について来てくれ」 「ガウリエルは待っていなさい」 「承知しました」  そうしてガウリエルを置いて、シンとレイ、それからその他の4人は家の外へと出た。 「さてと…どう造りたいとかあったりするか?」  シンは隣に居るレイに訊ねる。 「特にありません」 「なら…レオンとフィリカの家を創るのは任せても良いな?」 「もちろん構いません。一階建てで?」  レイは家を何階建てにするかを訊ねる。 「1階だ。後で私達の家のダイニングルームを食堂に改築しようと思う」 「ではその様な手筈で…」  レイはシンの言葉を聞き、レオンとフィリカを連れて自らの家の左側へと歩いて行った。 「さて、リオンと…吸血鬼だったな」  シンは残った2人にそう言いながら視線を寄越す。  するとシンが"吸血鬼"と告げた途端に酷く名前を告げない彼女は震え始めた。 「…どうした?」 「いや…来ないで…」  シンは拒絶する吸血鬼の、彼女の記憶を流し視る。 (これは…キツいな)  鮮烈に残っている記憶のみをシンは取り出しながら、それらの情報を"多重思考"という能力を使い、処理していく。  その記憶に対してそんな思考を持つ。  そして更に、シンの中にある様々な記憶が、彼女の記憶に呼応する様に"行動しろ"とシンに告げた。 (私の記憶達は…彼女を受け入れろと言っているのか?)  シンは自身の記憶までもが引っ張られた事により、自身も思考の海に溺れていく。 (いや…だが、しかし…)  別に故郷を壊されているのはなにも彼女だけでは無い。この程度でそう思っては収拾が付かなくなってしまうのだ。 ("直感"は…悪くはない。寧ろ良い事が起こりそうな予感しかしない) (未来は…流石にそこまでの未来は見えないか…)  流石にそこまでの未来は、シンにも見えなかったようだ。  そもそも、シンの目では過去は見えても未来はあまり見えない。それでも試したのは"見えたら良いな"程度の思いからである。 (まあ…容姿も悪くは無いし、私の記憶はそうなる事を望んでいるのだから、その様になれる様に動いて見ても良いかもしれない。…これも何かの縁だろう)  シンは最後に自身の思考をそう締めくくった。  下を俯いている彼女の目線に、合わせるようにシンは片膝を着いた。 「先程服の採寸をしていたレイも、私も君の周りから消えることは無い。君の居場所はここに作ってやる。…だから、私と共に来ないか?」  優しい目をして、シンはそう告げた。 (え?え?…これって求婚なんじゃ…)  リオンはそんなシンと吸血鬼の彼女を見て内心アタフタとしながらもそう思う。 「な…ん…で…?」  そんな中、初めて吸血鬼の彼女が口を開いた。 「…殺そう…と…しない…のよ…。だって…あんな態度…取ってきたじゃない」  どんどん、彼女の目には泪が溜まっていく。 「…君は殺されたかったのか?」 「…わからない…。…殺されるなら…仕方無い…と…思ってたわ」  更に一滴一滴と水玉が頬を伝い、地面へと落ちて行く。 「…そうか」  シンは何も言葉を掛けない。これ以上何かを告げる事は不必要だと考えているから。 「…ねえ? 本当に…居場所を作ってくれるの?」 「流石にああまで言っておいて…嘘でしたなどと狡い言い逃れはしない」  "そんな事、する筈がない"シンはそう強く思う。 「…ありがと」  彼女の強ばっていた力は完全に抜け去り、地面へと今にも倒れようとする。 「また起きたら…じっくりと話そう」  シンは弱々しく倒れ込んだ彼女を片手で地に倒れ込まない様に支えるのだった。 「…シンさん、で良いよね? 初めて出会った女性に随分と大胆だね」  リオンはその一部始終を全て見ていた為、思わずシンにそう言った。 「シンと呼び捨てにしてもらって構わない。…まあ、確かに一目惚れとも言えるかもしれないな」  シンは臆面も無くそう答える。今行った選択を自身が背負っている物のせいにする気は全く無い。 「ヒュウ、流石シン兄」  シンの後ろから、突然に彼の聞き馴れた声が聞こえる。 「アイ…か」  どうやら気絶から目を覚ましたようだ。 「その女の人…本当にそうするの?」  アイは少し目を輝かせながらそう言った。 「彼女が良ければ…な。ただ、弱っている所につけ込んだ形になるな」  シンはその事実だけに少しだけ表情を曇らせる。引け目を感じないわけが無かった。 「…シン兄って変な所真面目だよね。僕に対してもそうだったし」 「アイは…可愛かっただけだ。今も可愛いな」  そう言ってシンは空いていた手で、アイの頭を優しく撫でた。  実際、"シン兄"や"レイ姉"と言いながら慕ってくれたアイは、シンとレイの2人から見て、物凄く可愛い妹分だった。 「ふふふ~ん、って。そんな事してる場合じゃないでしょ?」  暫くの間を大人しく撫でられてたアイは、シンの腕を掴んでからそう言った。 「ああ、そうだったな。リオン、悪いな。今から作る建物にこれからは住んでくれ」 「ふえ?え?! あ、うん。…はい」  突然話し掛けられたリオンはあたふたあたふたとしながら返事をした。  そうして、シンは魔法を行使して木々によって組み上げられた家を造り上げてしまうのだった。 「…アイ、頼んでも良いか?」 「何を?」 「リオンにこの家の使い方を教えてやって欲しい。正確に言うと…水回りとかだな」  この家には"ラフタ"には存在していない物もくっ付いている。主に浴槽やシャワーヘッドなどだ。 「ああ〜…、そうだね。僕もレイ姉に教わるまでわからなかったもん」 「…駄目か?」 「良いに決まってるよ。シン兄はその人を連れてゆっくりしてて良いよ。あ…でも、また今度で良いんだけどさ。少し相談に乗って欲しい事があるんだ」  アイは少し申し訳無さそうにそう言った。 「ありがとう。相談は…そうだな、夜の時間になったら私の部屋に来てくれるか?」  当然、シンがそれを嫌がる筈もなく。 「うん、じゃあ、夕食を食べ終わって少ししたら、シン兄の部屋に行くね」 「ああ、じゃあ…そっちは任せた」 「はいはーい、任せてー」  シンはそう告げ、吸血鬼の彼女をお姫様抱っこして自身の家へと戻って行った。 「さてと…リオンだっけ?僕の名前はアイって言うんだ。宜しくね」 「え、あ、うん。よろしくお願いします?」  リオンは自分より明らかに背の低いアイに戸惑いながらもそう言った。 「あ、敬語は無くて良いよ。いやー、僕、友達欲しかったんだよね。だから友達になってよ」  アイは少し期待した目で、リオンを下から覗くように見上げる。 「え?あ、あたしで良ければ?」 「じゃあけってーい。まずは…そうだね、シン兄に言われた通りに家の使い方を教えるね」  アイはリオンを振り回すようにそう言って、シンが新しく建てた家の中に入った。 「うわーシン兄、流石だね」  アイは中に踏み込んで感嘆の声をあげた。  内装はシンやアイ、それからレイが住んでいる家ほど綺麗な物では無かったが、それでもしっかりとした木々で組み立てられていた。 「あの一瞬で…」  リオンはアイ以上に家の中の光景を見て驚嘆する。 「まあ、シン兄だからね。えっと…浴室はこっちだね」  アイは初めて入った家であるのにも関わらず、迷いの無い足取りでリオンを連れて浴室まで辿り着いた。 「ここは?」 「ここはお風呂だよ。…お風呂はわかるよね?」  アイはリオンの疑問に答えた。…伝わっているかが少し不安そうだ。 「あ、うん。あたしも流石にお風呂くらいはわかるよ」  伝わっていたようだ。 「あ、伝わってて良かった。でねーこれに魔力を通して…」  アイは気を取り直して、シャワーヘッドを手に取った。 「ここのボタンを押す」 「ひゃっ!?」  勢い良く水が出る事によってリオンは驚いた。 「…これって魔道具?」  リオンは恐る恐るシャワーヘッドを指さしてそう言った。 「言われてみたらそうかも??」  アイは首を傾げながらそう言った。  魔道具と言うのは、魔力を通す事によって何らかの事象を引き起こす事の出来る道具の事だ。 「…え?待って、さっきの一瞬で魔道具も造ったってこと??」  リオンは更に驚愕的な事柄に気が付いてしまう。  魔道具と言う存在は、最低でも一つ以上の複雑で精密な魔方陣を書き上げなくてはならない。  今さっき、それをやった事になる。  因みにシンは"多重思考"を使い、魔方陣を描き出す為の"魔術"の思考と鉄を生み出す為の"創造魔法"の思考、更には家を組み立てる為の"魔法"の思考の一つ一つに思考を分けてまとめて行ったのだ。  もちろんそれ以外にも"転写"と呼ばれる能力などが使われていたりしたが…。 「まあ、そういう事になるねー」  アイはリオンの驚きを右から左に受け流した。それは自分も例外では無いからだ。 (あたし…やっぱりとんでもない所に来ちゃった…)  一方、受け流された方のリオンは頭を抱えそうになっていた。
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