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第2話 リアと宿屋と婿養子?

「ボヘェェェェー」  最悪だ…。宿屋に着いた途端トイレに駆け込み吐くなんて…。確かに俺は乗り物酔いとかするけどここまで酷いのは久しぶりだ。 「ケイ君大丈夫? 」  ドアの向こう側からリアさんの声が聞こえる。 「ボヘェェェェー」  全然大丈夫じゃありません! ヤバい胃の中の物が全部出てくる。でもこの世界に来てから何も食べていないから、たぶん戻したのは前の世界で死ぬ前に食べた塩ラーメンだろう。 「どうしたのリア? 」  誰かがリアさんに話しかけている。 「うん、実は…」  リアさんが誰かに俺のことを説明している。 「そっか、たぶん初めて飛んだんじゃないかな? その子はたぶん空中酔いね…。そのうち収まると想うわよ♪ 」  なるほど車酔いとかの分類だろう病気だったらどうしようかと思ったよ…。  吐くもの吐いたらスッキリした。  トイレを流したあと綺麗に掃除をして外に出るとリアさんがトイレから出てきた俺を心配そうに見つめてきた。 「ケイ君大丈夫? 何か飲み物飲みますか? 」  いきなり吐くから心配をさせてしまったみたいだ。 「ありがとう、とりあえず好き嫌いは無いから何か貰えると嬉しいです」  そう言うとリアさんがお店の奥に行って何かを持ってきた。 「はい、どーぞ♪ 」  そういって持ってきたマグカップを見ると温かいレモネードが注がれていた。 「ハチミツ入ってるけど追加するなら持ってくるから言って♪ 立ちっぱなしもアレだし、こっちに来てください♪ 」  そういってリアさんは手招きをするのでついていくと大きなテーブルが置いてある部屋に着いた。 「あら? 貴方がリアの言ってた子? てっきり女の子だと思ってたんだけど…。もしかしてリアの彼氏? 」  リアさんに似てる女の人が笑いながら俺の背中を叩いてくる。 「いや、そんなことないです! 行き倒れていたところを助けてもらったんですよ」  そう言って笑いかけるとリアさんに似た女性(たぶんお母さん)が俺とリアさんを見比べて 「2人とも同じ学校なんだね! ねぇねぇ、リアは補助役(サポーター)なんだけどお兄さんは何? 」    リアさんのお母さん? がウキウキした顔で俺を見つめてくる、だけどサポーターとか何? まったく意味が分からない…。  俺がきょとんとしているとリアさんが俺の服の裾を引っ張って 「学生手帳ある? そこにケイ君が何処に属するのか分かると思うんだけど…」  なるほど学生手帳か…。制服をパタパタ触ると胸元にある内ポケットにそれらしい物があったのでリアさんに差し出すと 「えっ? 見ていいの? そう、じゃあ見るね」  リアさんは俺の学生手帳を開いて中を確認する。 「えっ、どうなの♪ どうなの♪ 」  リアさんのお母さんも彼女の後ろから手帳を覗き込む。 「ケイ君は攻撃役(アタッカー)なんですね♪ 私と相性良いかもです! 」  リアさんは嬉しそうに話すと手帳を返してくれた。 「へ~っ、トガシ ケイ君って言うんだ。ケイ君しかもアタッカーなんだねウチの子と相性も良さそうだしウチの子とツーマンセル組んであげてよ♪ 」  ツーマンセル? また知らない単語が出てきたぞ…。  俺が首をかしげているとリアさんか横で 「記憶が無いんだったっけ? あのね、ルミナスに入学すると最初に実技テストがあるんです。そこで2人1組になって他のツーマンセルと戦うんですよ♪ 」  なるほど、それで新入生の実力を測るのか…。合理的だな。 「リアが自分から相手を誘うなんて滅多に無いのにどうしたのリア? 彼のこと気になるの?」  リアさんのお母さんがリアさんの頬っぺたをつつきながら彼女に聞くと彼女は顔を真っ赤にさせて 「そういえばケイ君、服濡れてたんだっ! ほら、お風呂案内するからお母さんは何か着替え用意してくれる? 」  そういってリアさんは俺の背中を押してお風呂場に向かう。 ◆◇◆◇ 「此処がお風呂場だよ♪ じゃあ私は戻ってお母さんから着替えを受け取ってくるね♪ 」  そういって洗面所からパタパタと出ていってしまった。  じゃあ、お言葉に甘えてお風呂に入ろうとドアを開けて中に入る。 「ケイ君、ここに着替え置いておきますね♪ 」  ドアの向こう側からリアさんの声が聞こえたので『ありがとう』と声をかけてゆっくりと湯船に浸かる。  いつの時代も世界も心安らぐのは、お風呂だけ! やっぱりお風呂は落ち着く。  それよりどうしよう魔導師学園とか俺、魔法使えないのに…。 「それに此方の世界に持ってきたのは何でも入るバックと宙に浮く靴、それに変な刀…、俺にどうしろと? 」  正直、疑問しかない。  身体も温まり休めたのでお風呂を出て置かれている着替えを着てお店に戻ると柄の悪い男性客がリアさんにデートをしようと迫っている。 「やめてください! 私は貴方とデートなんてするつもりはありません! 」  リアさんは嫌そうに柄の悪い男に叫ぶが男は笑いながら 「嫌よ嫌よも好きなうちだろ? 俺はOKだから2人で良いところに行こうぜ♪ 」  聞いてるこっちも嫌になるほどの勘違い男だな…。  俺はもしもの事態に備えて刀を帯刀して男とリアさんの間に割り込む。 「おいっ、どういうつもりだ兄ちゃん💢」  柄の悪い男が俺を睨んでくるので俺は睨み返しながら 「そっちこそ、他人の女に手を出すとかどういう神経してんだよ! さっさと帰れ」  そういうと男は俺をにらんで 「どけよ兄ちゃん! 今すぐその女を渡してくれれば何も無かった事にしてやるよ! もし歯向かうなら容赦しねえぞ!黒焦げになってもしらねぇぞ💢 」  俺は彼女に恩がある。だから退くわけにはいかない。 「やってみろよクズ野郎」  男は距離を取り、手から火球を撃ってくるので俺は刀を鞘から抜き、火球を吸収しながら男に向かっていく。 「何だよ! 何なんだよお前! どうしてそんな旧時代の武器が俺の魔法を打ち消すんだよ💢」  そういって次々と火球を撃ってくる。 「俺の刀は特別製なんだよ!どうする? まだ続けるか? それとも此処から立ち去るか? 」  刀の刃を男に向けて尋ねると男は堪らず逃げ出した。 「まったく何処にいてもクズみたいな奴はいるんだな」  そういって刀を鞘に納めて振り返るとそこには口を開けてポーッとしているリアさんと顔を真っ赤にさせて『あらあら、まぁまぁ』と照れているリアさんのお母さんが居た。 「大丈夫だったリアさん? 」  ポーッっとしているリアさんに尋ねると 「ピャッ、ピャァァァァァァァッ! 」   彼女は顔を真っ赤にさせて何処かに行ってしまった。 「あのぉ~、俺は何かマズいことしちゃいましたか? 」  リアさんのお母さんに尋ねると 「気づいてないの? 簡単に言うとケイ君は『俺の女に手を出すな』ってあの男に啖呵を切ったのよ! そりゃあ、いきなり告白されたら驚くわよ♪ リアから話し聞いたけど記憶も無いし帰る場所もないんでしょ? ウチの婿養子になる?」 「えっ? 」  驚いているとリアさんのお母さんは笑って 「冗談よ♪ だけど今みたいな客も多いから宿屋(ウチ)で働くなら3食、お小遣い付きで住ませてあげるよ」  壁から顔を少し出してリアさんがチラチラとこちらの様子を伺っている。 「あの子も満更でもなさそうだし…。どうする? 」  そんなこと考えるまでも無い! 「よろしくお願いします!」  異世界で人の温かさを改めて知った日になった。
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