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1-3-19-1 【桜瀬七波】 魔人の魔法 1
貧富の差が激しく、住民の多くが飢えに苦しむ小国。
それがそのお話の舞台だった。
――唐突に何が始まったとか思われるだろうけど、まぁ、いつものあたしの突拍子もない頭の中の出来事だと思ってもらえれば。
これは、とある創作絵本の物語。
ゆるりとしたペースで進みます。
その国の王様はいつだって裕福な隣の国を狙って、事あるごとに戦争ばかり。
税金は高くて、町の人たちが作ったもの、育てたものはみんな役人が持ってっちゃう。
だから、人々はいつだって貧困に喘いでた。
偉い人たちはみんな肥え太ってるって言うのにね。
そんな事を続けてたら、いつか偉い人の食べ物を作る人がいなくなって、国が滅んじゃうのにね。
そんな国の町外れに、二人の兄妹が住んでいた。
上はお兄ちゃん。妹はかわいい女の子。お父さんは戦争で死んじゃったけど、お母さんを大切に、二人は仲良く暮らしてた。
でも、貧困は幸せを奪ってく。
働き詰めのお母さんは、いつしか病気で倒れちゃった。
二人の看病の甲斐なく、お母さんはどんどんやつれてく。
おいしいごはんが足りないんだ。だからこのままじゃ、お母さんは治らない。
そんな兄妹を見兼ねて、近所のおじいさんが、二人に教えてあげた。
『町の向こうに見える山肌の洞窟に、願い事を叶える魔人のランプがあるらしい』
……どっかで聞いた話だけど、二人はその話に縋るように、お母さんに書置きを残して山の洞窟を目指した。
でも、子供の足じゃ大変だ。
山は見えているのに2日経ってもなかなか着かない。
それもそのはず、二人の前に怪物が現れたり、道が途切れたり、悪い魔法使いが二人を騙そうとしたり。
そりゃあ大変な道のりだったわけ。……まぁ、端折 っちゃうのはご容赦あれ。
でも貧相なお弁当も底をついてしまった3日目の朝。
やっと山の麓に到着した。しかもついた場所が良かったみたい。そこには大きな洞窟が口を開けていた。
二人は意を決して、洞窟を進んでく。お腹は空いてるけどもう少し。きっと魔法のランプがそこにある。そんな希望を胸に奥、へ奥へと進んでく。
そして見つけた地底湖の祭壇。
そこにはおじいさんの言う通り、魔法のランプが置いてあった。
二人は喜び勇んで魔法のランプに駆け寄った。
半信半疑でランプをこすると……。
果たして飛び出すランプの魔人。
魔人『よく来たね。さぁ、願いを言ってみて。なんでも叶えてあげるから!』
ちょっと子供みたいなランプの魔人。
何だか人懐っこそうな笑顔に、二人は希望をもってお願いをした。
妹『お母さんの苦しみを助けてあげてください』
兄『国の争いをやめさせてください』
魔人は、その二人のお願いをちょっぴり真顔で聞いていた。
そして、首をかしげて二人に聞く。
魔人『それは……どういうことなの?』
二人は国の事を魔人に話して聞かせた。
何とも言えない顔で、二人の話を聞いていた魔人。
そして、何か考えて、魔人は二人にお話しする。
魔人『そうだったんだね……この国は昔は豊かな場所だったのに、そんな事になってたんだ……うん、分かったよ!』
無邪気に笑って応える魔人。
二人はやっと、自分たちの希望が叶うんだって、喜んだ――。
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