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1-3-15-1 【桜瀬七波】 スタートライン 1

 ……あー。  えーとだ。  ここまでネームド登場人物の男女比率が7:3(あだ名含む)。  しかもあたしという女が主人公という事で、この物語がにわかに乙女ゲー臭を醸し出してきているが、実はそうならないという事を、一応ここで明言しとこうと思う。  まだ登場していないかわいい女の子たちが何人もいるという事については安心してほしいのだが、この後、とある別の男とあたしとで、主人公が入れ代わり立ち代わりとなって物語が進む。  その中で、その男がなぜかモテる理不尽な展開となるというから、女のあたしからしたら非常に腹立たしい事この上ない。  あたしだってモテたいわ!  莉々菜ちゃんみたいな女の子に囲まれたいわ!!  ……という希望があるにも拘らず、かわいい女の子たちがそのヤローの毒牙にかかる事だけを、何とか阻止しようとする損な役回りを演じる事になるのだろう。  くっそー……かわいい女の子、きゅーってしたいよぅ……。  女だってなー……かわいい子のぷにぷにのほっぺたとか、もにょもにょのおっぱいとかいじり回すの好きなんだいぃぃ……。テレテレで顔を真っ赤にする女の子とか好きなんだいぃぃぃ……。  ……そう言えばいつも思うんだけど、『ツンデレ』って言葉があるじゃろ?  アレは『ツンツンしてる女の子が、デレデレする姿』という意味で、すでに世の中に広く周知されとるわけじゃが、最近の傾向と、より『かわいい』を突き詰めて考えるとじゃ。  今は『ツンケンしてる女の子が顔を真っ赤にしてテレてる姿』がかわいいのであって、『デレデレになる姿がかわいい』とはちと違うのではないか? とすれば、  『ツンテレ』  という言葉の方が正しい気がするんじゃが、どうなんじゃろう?  まぁ、ADVGとかで、ツンツンしてる女の子が長い確執を経ましてデレデレになって、『あ、あんたのためじゃ云々かんぬん!』って顔を赤くする姿はマジかわいいけどね。  ……そこまでの過程がなー……フツーは長いんだよなー……。だって、いきなり出会った女の子が『あ、あんたのため(ry』とかマジウザいだけじゃないですか……。  まぁ、つまり。  ワシは今言われる『強気の女の子の『かわいい』を表現する単語』は、赤くなる姿まで含めて『ツンテレ』という言葉であると考えるわけなのじゃよ。  ……無理か。  コレは広まらんか。  夕方のNHKの子供向け番組みたいじゃな……ほっほっほ……。  ……。  ぬあぁぁぁあああっ!  女の子をあたしに抱かせろ!!  あたしに献上するのだ!!!  ほぁああああああああああ!!!!  ……と、そろそろ錯乱で悶死しそうになり、ここオフィス街の人たちの視線が気になり出したので、この辺で。よく咲子にも笑顔でやんわり突っ込まれる。  とりあえず、この後の展開であたしの事『邪魔』とか思わないように。  閑話休題(それはさておき)。  時間にして、午前10時。……をちょっと回ったところ。  あたしはオフィス街へとやってきていた。  学校はお兄ちゃんと相談して、とりあえず週内は休むことにしてる。  本日は木曜なり。  今日休むと、明日一日出てまたすぐ土曜日で休みだし、心労が原因とか言っちゃった上に、救急車で運ばれるという事態にまで発展してしまった以上、少しゆっくりするという行動も必要だというのがあたし達の判断。……学校も納得してくれたし、咲子にもその辺は話してある。  しかし、自宅療養用もせんと、こんな所をほっつき歩いているのは、偏にじっとしていられないあたしの性格に因る所が大きく、関係各所、本当にゴメンナサイ。  でも、あたしの置かれた立場を考えたら、家で落ち着いてなんかいられなくて……ね。  ……そんなワケで、訪れたこの場所。  時間的には既に出勤ラッシュの時間帯は終わって、会社員の皆さんはお昼前のお仕事の真っ最中だろう、辺りは閑散としている。  比較的静かなオフィス街の通り。空は良く晴れて秋の青空がすがすがしい。……誠に持って結構なことのはずだが――。 七波「……」  あたしは若干緊張してここを訪れた。  でも、周囲は今言ったように、実に物静かで平穏な日常たるオフィス街の姿があるのみ。 七波(やっぱり……何事もなかった事になってる……のかな……?)  ……あたしの結論はそれだった。  病院で目を覚ました後、そこからネットやらニュースやら新聞やらをひっくり返しまくって、調べていた。  ……もちろん、あの夜の事をだ。  人が一人死んでいる。  しかもあの男は、背中が全面溶かされて殺されるという、あり得ない姿で横たわったまま放置されたわけで、人に見つかりでもしたら、とんでもない大騒ぎになったであろう事は想像に難くないというもの。  でも、あたしの情報網には、あの夜の人死にの話題は一切引っかかってこなかった。  もちろん、『ない事』を証明すること――断言することは、『ある事』を証明することよりも何倍も難しい。大体あたしの『情報網』なんて御大層な事を言っても、ネットで文字検索やらを繰り返すか、新聞を隅から隅まで眺め回すだけで、できる事なんかどうやったって限りがある。  ツイッターとかも調べてみたけど……。 七波「……あ、バッテリーやば」  スマホに携帯バッテリーを繋いで充電を図りつつ、ツイッターを開く。  ……ここでも、それっぽい話題が取り沙汰されていたようには見えない。  現時点では、あの夜の事は『ただのあたしの妄想』と片付けられても誰にも文句は言えない状況。……事が事だ、あたし一人の言葉なんて『世間の常識』とやらに、あっという間にかき消されちゃうんだろう。  ツイッターのタイムラインは、相変わらず平和なんだかカオスなんだか分からない話題に溢れている。  海辺で大量に魚が打ち上げられただの、靴屋の靴が金に変わっただの、海外の外相の名前が謎過ぎるだの――面白そうな話題は、リツイートがリツイートを呼び、その回数は千単位、物によっては万単位に至る。  あたしのタイムラインにはその他、かわいいイラスト、カッコいいイラスト、エロ絵も少々。ネタ絵もいっぱい。こう言うのは眺めてるだけでもマジ楽しい。Pawooもアカウント作ろうかなー、とか考えてる。  それはさておき、その他ジャンルを問わず、とてつもない数の情報が渦巻いているわけだが。  そこに――確かにあの夜の事は発見できなかった。  でもただ、一つ。  気になる話題は。  『体が半分溶けた犬の件について』  ……この話題は、いくつかの検索ワードで追う事が出来た。  一昨日の朝にツイートされた情報が最初の物らしい。フツーの一般人から広がった話のためか、いくつか気になる投稿を見かけた。  ただ、問題は、どのツイートも又聞きを基本としたフワッとした内容だってこと。  まず、最初に投稿した人なんだけど、それが発見者じゃなかったってトコからフワッとした状態が始まる。……発見者はツイッターとかのSNSに全く興味のない人だったらしい。  その人から聞いた情報が初めにアップされたらしいんだけど、そんな風にスタートから『聞いた情報』なもんだから、当然真相なんかは掴める訳もなく、想像で語る人たちばっかり。  そしてそれも今朝には話題として飽きられたか、それらしい投稿はほとんどなくなってた。  ただ、ウチの近所のお母さんにまで噂は飛び火してたし、周囲は一時、厳重に警戒されてたって話だから、少なくともウソじゃなかったんじゃないかな。……現場の場所は確認できてるので、後で行ってみようと思ってる。 七波「……それにしても」  あたしはそんな独り言を呟きながら、充電で色の変わったスマホのバッテリー表示を見て、僅かに苦笑いしてたと思う。
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