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1-1-6 【桜瀬七波】 刑事の名
と、胸の内ポケットに入っているものに指が触れて。
七波「……よっしゃああぁぁっ! 出た! 女子高生必須アイテム・スマートフォン、略してスマートフォン!」
ゲフリーレン「静かにしゃべれ」
七波「大丈夫! 今この空間には音を遮断するメタ的フィールドがご都合主義的に張られている! どんな大声も小声でしゃべって成立する言葉なら、大体周囲には超小声に変換される!」
ゲフリーレン「全く意味が分からんが、『奴』が来ないのも確かか……。……それはお前たちの通信機器だな」
七波「うんっ! あたしってばすっかり忘れてた! こんなアイテムがあればこの危機的状況も一発解決じゃないですか! よーっしっ! レッツ! 1・1・0番ッ!!」
ぴっ!
……。
……。
……。
音がならない。
……。
……これはもしやっ……!
『圏外』
七波「知ってたァァっ!! こんな状況ではそんな安置に警察が呼べないことは当然知ってたさ! えーえー、そんな事でこんな危機的事態が一発解決できれば、そりゃブルース・ウィリスがクリスマスにビルの窓ガラス割ったりしないっての! なんてこった……って……え!? でもなんで圏外!?」
ゲフリーレン「……」
あたしはスマホの一番上に無情にも表示されている、誰にとっても有り難くない『圏外』の文字をガン見してから辺りを見回す。
七波「嘘でしょ? ここオフィスビルだよ? ここで電話通じないとか、あたしがここで働いてる人だったらスト決行だよ?」
ゲフリーレン「俺がジャミングしている」
七波「なーるほどー、そんな簡単な理由がこんな身近にあったかー、あははーっ、って、こらぁっ!! あんたかぁっ!!? こんにゃろう、今すぐそのジャミングとやらを……」
ゲフリーレン「俺がなぜジャミングをしているか分かるか?」
七波「面倒だ、答えろ!」
ゲフリーレン「正にお前がしようとしていることを止めるためだ」
七波「……うに?」
あたしはフクロウのように首を傾げる。
ゲフリーレン「より大元の理由は、奴が応援を呼ぶことを防ぐためだ。だが、俺は立場上、ここ現地の警察に発見、確保されることも回避せねばならん。事情を知らん現地警察の介入の方が厄介だ。当然そのスマートフォンとやらの回線周波数にも適合させてある。悪いが呼ばせるわけにはいかない」
七波「あ……」
ゲフリーさんの言葉には、確かに一理あるんだけど……。
七波「……で、でも、ほら! 日本の警察なら、さっきの『あいつ』みたいに、いきなり殺しにかかってくるような事は……」
ゲフリーレン「確かにそこは引っかかるところだ」
七波「……引っかか?」
意図したリアクションから全くかけ離れた言葉で、反対側に首を傾げるあたし。
ゲフリーレン「『奴』が人殺しをした。さっきも言った通り、俺は『奴』が警察だと見ていたが、もし奴が俺の知っている銀河宇宙警察機構の特捜だとしても、現地の人間を簡単に殺せるような権限など持っているはずがない。とすれば、それは事故か、或いは何らかの超法規的権限を有した捜査官なのか」
七波「……」
それとも『警察以外の何か』なのか?
……それだってあたしは十分に考え得るけど、ゲフリーさんの考えはそうじゃないらしい。
でも、警察以外の何かって何だろう?
……。
なんだよ。
まさか……。
『宇宙の未知の生物』とか……?
……分かんない。やっぱり、何も分からないことだらけだよ。
一体……『今、ここで何が起きてるんだ』……?
七波「その……ゲフリーさん追ってる警察って、人溶かしちゃうような武器使うの?」
ゲフリーレン「所属する地区にもよる」
七波「どこの警察だよ、人溶かす武器持たせる地区って」
ゲフリーレン「ここでの隠密性を保持したいなら、大音量を伴う武器よりは理に適っている。選定される携行武器は逮捕対象にもよるだろう」
七波「ゲフリーさん、怪獣扱いされてるんじゃないの?」
ゲフリーレン「『奴』が扱っているのがタンパク質や衣服の繊維を中心に溶解させる武器である以上、人間だと見られていると思いたい。……それはともかく、そもそも所属宙域によっては、同じ警察機関であっても、権限はともかく倫理観がズレていることは珍しくない。過激なテロを抑えるために、あくまで威嚇用と称して大量殺傷兵器の携行を許可する署もあると聞く。……その結果出る周囲への被害を揉み消す所も抜かりないそうだがな」
七波「ズレすぎでしょうよ……ちゃんとまとめとこうよ……」
まぁあんな武器じゃなくたって、日本の警察の拳銃だって、人殺せますしね……。
しかし『ちゅーいき』とか言う言葉はあえて無視してみたけど、何だかそろそろ無視しづらくなって来たくさい。
ゲフリーレン「横道が長くなった」
七波「……あたしのせいじゃないからね!」
ゲフリーレン「いずれにせよ、『奴』の方が俺の事情は把握できているはずだ。捕まるならそっちを選ぶ。……『捕まるなら』の話だがな。無論、そうなるつもりも、殺されるつもりも毛頭ない」
ゲフリーさんは、そう言いながらまた、右の手で左の耳たぶを少しこねくり回していた。……どうもそれが癖らしい。
そして、そこから指が離れると、改まったようにあたしに告げる。
ゲフリーレン「ナナミ、このままお前が俺をここに置いて逃げても、何の責もない。さっきのように怯えた様子も見られない今なら、慎重に道を選べば、今度はここから脱する事もできると思うが」
七波「……」
かもしれない。さっきとは状況が違う。
さっき程に、今の『あいつ』は正体不明の化け物じゃない。
だから、さっきよりも逃げ方はあるだろうとは思う。
でも。
この場で何が起きているか。
それは結局、今も分からないこと。
このまま一人で逃げたって、やっぱりあたしの常識なんか通用しない事が起きる可能性がまだまだある。
それなら――
なぁんだ……状況は変わってないじゃん。
七波「……あー、くそ……ロクなものがない! ……ってか荷物はさっきのあの場所かよぅ!」
とは言え、あそこにほっぽり出してきたカバンの中に、役に立ちそうなものはちょっと入っていなかったと思う。
ゲフリーレン「……ナナミ」
何か言いたげなゲフリーさんだけど。
七波「結局さ、分かんないなら、分かってることを頼りにするしかないんだよね。んで、この状況で分かってんのはある程度の自分の性格だけ! んで後は」
少しだけ、あたしは笑ってたかもしれない。
七波「ゲフリーさんが、ちょっとは人並みにコンタクトできる、って事でしょ」
ゲフリーレン「……ナナミ、それは」
七波「おっと! ちっちっち。悪いけど『信用』したってわけじゃないからね。ここから人のいそうな場所まで出られたら、後は知らないからそのつもりでいてよ」
ゲフリーレン「……」
……信用って、どういうことを言うんだろうね。
ここから一緒に逃げるなら運命共同体。
それをするために必要な事が、今この場でいう信用、なのかな。
でもゲフリーさんは『悪い奴』だから、『あいつ』に見つかったら自分だけ助かるために、どんっ! てあたしを『あいつ』に差し出して、自分だけ逃げたりしちゃうかな? あたしの事、遠慮なく見捨てたりしちゃうかな?
……なるほど、急ごしらえの運命共同体ってのはそう言う事まで考えてやんなきゃいけない、と。
それがこの場の信用かな。
心を用意して信じる。『用心』して信じる、『信用』ってね。用意しきれなかったら、あたしは……うーん、どうなるんだろ?
逆にゲフリーさんはあたしの事信用してくれてるんだろうか?
まぁ、こんな押しつけがましい救いの手なんて、跳ね除けられたって文句は言えないわけだけど、まぁいいか。あたしはこの人の信用を得るために、この人を助けるんじゃない。
あたしは、あたしのためにこの人を助けるんだ。
……そう思ってりゃ、別に信用なんてなくたって、やることは変わんないもんね。ざまーみろ怪我人。
ただ。
ゲフリーレン「……」
あたしは、この時のゲフリーさんを――『信用』という言葉を、あたしに口にされたゲフリーレンという男の考えを、きっと何一つ理解できてなかったんだと思う。
さて。
手元には、スマホとスマホ用の携帯バッテリー。
それをひとまず傍らに置いて、更にポケットの中身を探る。
ゲフリーレン「……」
ゲフリーさんが手を伸ばし、スマホとバッテリーを手に取ってしげしげと見つめる。
七波「触んじゃない! プライバシーの塊だっての!」
とりま、スマホを奪い返す。
まぁ、パスワードがかかっているし、待ち受けもお気に入りのボカロ『葦原ミズホ』の画像という、大した画像にしてないから、別にどうにもできないだろうけど。
そしてブレザーの左ポケットから取り出したのは。
七波「……アメが三つ」
ゲフリーレン「あめ?」
白地にイチゴ模様の、例のイチゴミルク味のアメ。
ちょっとすっぱい味の後に現れる、サクサク感のある甘いミルク味がとても濃厚。みんな大好き。
七波「甘いよ、いる?」
ゲフリーレン「甘い……糖分か。貰おう」
ゲフリーさんは、あたしから一つ受け取って、包みを解く。
……引き締まった顔つきのゲフリーさんが、小さなアメの包みを解く姿はちょっとかわい――
ガリっ! ガリリッ! ガリッガリッ……!
七波「……」
ゲフリーレン「硬いな。糖分をこの温度で凝固させたものでは仕方ないか。……何だ?」
七波「……いや、別に食べ方はどーでもいいんだけど……」
たまにいるよね……アメ舐めずに全力で噛み砕く人。
ゲフリーさんがそれだったか……まぁアメを知らなったみたいだし……。
七波「……あ、残ったのもあげるよ、どっかでお腹すいたら食べてね」
ゲフリーさんに残った二つも手渡して、さらにブレザーの右ポケットに手を突っ込む。
……こっちのポケットにあったのは。
七波「取り出だしたるこの絆創膏、タネも仕掛けもありません」
七波「だから何も起きません。……バッカじゃねーの? はぁぁぁ……」
大きなため息と同時に、かさかさと絆創膏の箱を振るあたし。
全然そういう事に疎いあたしが、これぞ女子力の一端! とか言うクラスメートに、半ば強引に押し付けられたのが……あー、今日のお昼だっけ。そのままポケットに入れてたか。何でもポケットに入れちゃうな、あたし……。
中には大小いくつかの種類の絆創膏が、何枚か入ってたはず。
ゲフリーレン「……なんだそれは」
七波「だから絆創膏だって。……これも知らない?」
あたしはゲフリーさんの足を見て。
七波「こうやって使うんだよ」
あたしは少し大判の絆創膏を一枚引っ張り出す。
そして、少し血の固まり出した傷口に……。
ゲフリーレン「何をする気だ」
七波「ビビってんの? 今更、あたしがゲフリーさんの事ボコボコにするとか意味分かんないでしょーって」
ゲフリーレン「……」
屈みこんで、絆創膏の真ん中の布シートを傷口と比較し――
ゲフリーレン「……何の匂いだ」
七波「……えっ!?」
少しだけビクッとして顔を上げる。
上げて更にドキッとする。
……ゲフリーさんの顔が意外と近くにあった。頭一個分、鼻の先。
当のゲフリーさんは、きょとんさんのままだけど。
七波「に、匂いには気を使ってると思うけど……」
臭い、とか言われんのはさすがに女の子としては……。
ゲフリーレン「……これはナナミの髪の毛の匂いか?」
七波「え、なっ……あっ……!」
あたしは、少しだけ髪の毛を整えるように触りながら、かなり泡を食いつつ。
七波「しゃ、シャンプーの匂いだよ! へ、ヘン、かな? この匂い、嫌いとか……」
ゲフリーレン「いや、いい匂いだ」
七波「あ……あはは……ああ、そう……ならいいんだけど……」
ゲフリーレン「?」
こ、これが絆創膏の持つ女子力というものなのか……!
ストレートなゲフリーさんの一言に、もっとドギマギしてしまうあたし……全く……柄じゃないってのに……。
でも……なんだかちょっとだけ……。
……。
……ああ、もう! そういうの、今はいいっての……!
って、あれ?
……やべ、この絆創膏じゃ、パッドの部分が傷口よりちょっと小さいじゃん! もう一回りおっきいのがあったはず……。
七波「そ、そう言えばさ、さっきちょっと聞きそびれちゃったんだけど」
ゲフリーレン「なんだ」
あたしはその新しい絆創膏を用意する時間を紛らわすように、ゲフリーさんに聞いていた。
七波「あの、例の『あいつ』だけど……ゲフリーさん、なんか、知ってるみたいな事言ってたよね。『奴』が俺の知ってるナントカだとしてもー、みたいな」
一回り大きい、ってか箱の中で、あたしの手のひらぐらいもある一番大きい正方形型の絆創膏を出して、剥離紙をはがす。
ちなみに、かなりデカいせいもあってか、このサイズは全然使われてない……これがあと3枚ぐらいあって、他が1枚、2枚とか……渡されたってコレ、女子力発揮できないですョ……。
まぁ、今ちょっとだけできてたみたいな感じだったけど……。
……あ、だからあいつ、あたしに渡しやがったのか。誰がゴミ箱だっつの。
ゲフリーレン「あのスーツのフォルムとユーザーに、心当たりがあるというだけだ」
七波「ユーザー? 使用者って事? へぇ、誰?」
ゲフリーレン「可能性を語るのは本意ではない」
七波「その件くだり何回やらせんだっての! 雑談なんだから、外れてたっていいって!」
ゲフリーさんはまた、小さくため息をつきながら、左耳を右指で触った後、すっと空を見上げて。
ゲフリーレン「宇宙警察、特捜――」
ゲフリーレン「『フレイバーン』」
七波「……」
あー……。
やっぱり宇宙でござるかー……。
あたしのこの時の感想は素直にこれだった。
じゃ、ゲフリーさんも宇宙人? ……そうは見えない。
でも、ゲフリーさんのことは置いといたとして、まさかそんなのがわんさか地球に来てるっての? お隣の人、宇宙人説ですか? こえーよ。
とは言え、今はそんなの追及してたらマジでここから逃げらんないから、やっぱり頑張って華麗にスルー。
七波「そいつが、あたしたちを追い回してると」
ゲフリーレン「特別な型のステルラスーツを活動の際の依り代にする刑事がいる。ただ、その特殊性から存在する数は極僅かだ。……あのステルラスーツかどうかは分からんが、ここを訪れる前に聞いた活動宙域の情報から察するに奴だと考え得る。奴自身の詳細は調べ切れなかったが」
七波「……良く分かんないけど、それが、ゲフリーさんが『あいつ』を警察だって考える理由って事か」
ゲフリーレン「その通りだ」
七波「……なるほどね」
絆創膏をしっかりと張り付けて……本当は消毒もしなきゃなんだろうけど、今はパッド部分の殺菌作用に頼らせてもらおう。
七波「はい、できたよ」
ゲフリーさんは絆創膏の貼り付けられた場所をしげしげとみつめ、そしてあたしが傍らに置いた絆創膏の箱を手に取って同じくじっと見つめて。
ゲフリーレン「……患部の創傷の保護材か」
七波「……うん。良く分かんないけど、多分、うん。……ってか日本語読めんの?」
ゲフリーレン「翻訳機がある程度対応した」
七波「おお、そんなものが」
感心してるあたしを尻目に、ゲフリーさんは、絆創膏を軽く撫でて、言った。
ゲフリーレン「助かる」
七波「……」
ゲフリーレン「……何だ」
七波「……あ、い、いや! ゲフリーさんもお礼とか言ってくれるんだなーって……」
ゲフリーレン「問題のある行動とは思えんが」
七波「……。……意外だって話をしてんの」
何だか色々調子狂うが、こーゆー特殊な状況で、あんまり『そっち』に頭を向けないようにしないと。『用心』、用心。
七波「さて……そろそろマジで逃げる方法考えないと、ゲフリーさんの足が腐っちゃうな」
ゲフリーレン「実に遺憾だが、その通りだ」
七波「とは言え、うーん……逃げるのに役に立ちそうなものはなさそうだけど……」
スマホ、絆創膏、アメ……むしろ、こんだけポケットに入ってたことに驚愕する。ホント昔っから色々ポケットに突っ込むクセがあり、『ちっちゃい子かよ、お前』呼ばわりもたまにされるが、こーゆー時には……!
こーゆー時には……。
……。
……どう考えても実用的では……。
……あれ? なんか足りなくないか?
ゲフリーレン「どんな道具でも、最終的には使う人間次第でできる事は変わる」
七波「……何? ちょっと名言っぽい」
ゲフリーレン「ナナミ、お前がまだこの場からの逃亡に希望を見ているなら」
と、ゲフリーさんは急に体を起こして。
ゲフリーレン「俺もそれに乗らせてもらおう」
少しふらつく素振りもあったが、壁を支えにしっかりと立ち上がる。
痛みをかばってるらしい右の裸足がさすがに痛々しいけど、表情に出ないのはゲフリーさんの根性によるものか。
七波「……当ったり前じゃん!」
何だかちょっと頼もしく見えて、あたしはそう答えていた。
ゲフリーさんは、壁を支えにしたまま右足を、何度か地面に付けては離すを繰り返して――どうやら痛みの具合を見ているらしい。
七波「……あのさ、ちょっと思ったんだけど」
ゲフリーレン「なんだ」
七波「さっき『あいつ』がここに来た時、あたしたちを完全スルーさせたあのゲフリーさんの仕掛け? なのかな? ……アレって使えないのかな?」
ゲフリーレン「使えない」
七波「……だよねー」
端的すぎるお返事、誠に恐縮です……。
でも、あの時のアレを思い出すに、あたしたちは『あいつ』の前から『消えてたんじゃないか』と思う。
一体どんな仕掛けなのか――? もちろん気になるし、相手から見えなくなるアイテムなんてこの状況からしたら、すごく……チートです……。
でも、ゲフリーさんの答えは、『使えない』か……。
まぁ、使えたら多分、ゲフリーさんは使って逃げる事を真っ先に提案してくれたろうしなー。
ゲフリーレン「まずは周囲の状況確認からだ」
七波「おっけー、任せ……ぅわっ!?」
ゲフリーレン「……っ……!?」
やけに低い位置で動く何かを通路に見て、焦るあたしとゲフリーさん。
ゲフリーレン「……っと……!」
七波「あ、ご、ごめん……!」
……一瞬、ゲフリーさんにもたれかかってしまった。
ケガしてたにもかかわらず受け止めてくれたゲフリーさんに、またちょっとドギマギしたりして……。
でもそこにいたのは。
ネコ「……にゃぁ」
……どこにでもいそうな三毛猫だった。ちょっと小さくて、どうやらまだ子猫っぽい。
七波「びっくりしたぁ……。……あれ? もしかしてあんた、さっきの……」
どこにでもいそうだけど、尻尾に少しやけどの跡のような物がある。しかも生々しい赤みが見えていた。
……ゲフリーさんみたいに、さっきの『奴』のアレをちょっとだけ浴びちゃったんだろうか?
でも、その子は特に意に介した様子もなく、そのままあたしたちの前を走り抜けて、通りの方へと駆けていった。
七波「ふぁ……良かったぁ」
良かったってのは二つ。
一つはもう、フツーにあの子が無事だったって事。
そして『あいつ』――『フレイバーン』、だっけ? あいつは映画やマンガで見るような、全身万能で依頼達成率ほぼ100%の超A級スナイパーみたいな殺し屋じゃないらしいって事。
なら、全ての常識が通じなくても、やっぱりやりようはあるハズ。
行こう――『今度はあたしたちの番』だ。
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