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Chapter 3

 毒爪狼(ベノム・ウォルフ)の群れはどうにかまいた。  けれど。 「……」  タチアナは雪の上にしゃがみこんで、真っ青な顔をして震えている。  僕をかばった時、毒爪がタチアナの肩をかすってたんだ。  僕のせいだ。  と僕が言おうとした時、 「俺のせいだ」  とホークが言った。 「俺がこんな無茶言い出したせいだ」 「……できることをしよう、とにかく」  と言って、僕は地図を広げた。  コンパスで現在位置を確認。  本道からは意外に逸れてない。  一時間あれば町へ出られるはず。  問題は毒爪狼(ベノム・ウォルフ)の毒。  今から四時間以内に血清を打たなきゃ危ない。  けど、タチアナはもう動かせない。  薬屋に駆け込んで、登り坂を引き返してくる――際どい。  すぐに出発しないと。  問題は、僕とホーク、どちらが行くかだ。 「……」  二人が二人とも起こす、いらだたしい逡巡。  残った一人は血清の到着を待つ間、タチアナの体温を維持するため、彼女と密着していたほうがいい。  恋だの愛だのを抜きに、そうすることが理にかなっている。  命を守るためだ。  感情はいらない。  なのに。  僕たちはお互いに“残る役”を相手に譲ろうとしている。 「俺が行く」  と、ホーク。  続けて、 「三時間後に発煙筒を焚いてくれ」  と言いながら、雪上に刺してあったボードに手をかけた。  僕は、 「待てよ」  と言って、覚悟を決めた。  話し合う時間も惜しい。  僕が行く。  君が残ってくれ。  その人のことは君が抱き締めていてくれ。  万が一の時、そばにいてほしいのは君のはずだ。  任せろ。  絶対に間に合わせる。  くそったれ、僕もタチアナのこと好きだったんだぜ。  いろんな思いをこめて、僕は右の拳を固く握り、ホークのみぞおちを全力で打った。  ホークは雪の上に這いつくばった。  僕は思い入り助走をつけて、自分のブレイクボードに飛び乗った。           (了)
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