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異形

「バキッ!!!」と入口の方から何かが壊れる音がしたと思うと母はヒナタの耳元で囁いた。 「ヒナタ、お母さんがいいと言うまで何が起きても絶対に声を上げたり出てきたりしてはダメよ?絶対によ。」 すると母は乱暴にヒナタをベッドの下に押し込んだ。 母は分かっていた。ヒナタは人のいいつけは絶対に守る子だ。たとえそのいいつけを守り自分に不利益が降りかかろうと、自分がどんな困難に直面しようと生きて行ける強い子だと。ヒナタは母の期待通りベッドの下で息を潜め、身を隠した。ゴクリと息を飲み身構える二人の元に、ペタペタという足跡とともにゆっくりと近づく『何か』その正体はヒナタと同じ年ぐらいで白髪の見知らぬ少年だった。 「こんばんは。おじさん、おばさん」 にこっと少年は二人でに向かって微笑む。それを見た二人は村での惨劇の犯人はこの少年だと確信した。それほどまでに少年の微笑みは狂気や異常さを帯びたものだった。母は恐怖や不安といった感情を押さえ込み、少年に言う。 「む、村の人たちを襲ったのはあなたね?どうしてあんなことをしたの?」 「襲ったなんて酷いなあ。僕はただなかまを探しているんだ。あの人たちは僕のなかまになれなかった人たちだよ」 無邪気に話す少年には罪の意識や罪悪感といった感情が一切感じられなかった。だがそれが二人の頭に死の文字を鮮明に浮かび上がらせた。彼は危険だ、逃げろと脳から体に信号が送られているのをしっかりと感じていた。しかしそれよりも娘を、愛娘を守らねばという強い想いが二人の体をその場に縛り付けていた。緊迫していた空気の中、少年は母に語りかける。 「おばさん、、、、綺麗だね。」 「、、、、え?」 突然の藪から棒な語りかけに少しきょとんとした母。そこに目を紅く染めた少年が不敵な笑みと共に母に近づきぽんと手を肩に置く。すると母は膝をつき、頭を抱え発狂し苦しみ始めた。 「いやあああああああっ!! やめて!! 助けて!! 苦しい 苦しい 苦しイ 苦シイ くルシイ!!」 目を塞ぎ、耳を塞ぎ、身を丸めていた日向の元にもその発狂はしっかりと届いていた。しかし幸も不幸も、ヒナタは近くに感じる異常な『何か』の存在をしっかりと感じていた。その不安感と母からの言いつけがヒナタをその場にとどまらせていた。 「へぇ、すごいね。まだ耐えれるんだあ、おばさんなら僕のなかまになれるかもね」 どんどん苦しみを増す母を見て楽しそうに微笑む少年に向かって怒りに満ちた父が襲いかかる。 「貴様ぁぁぁぁ!!妻に何をした!!!!」 「もう、触らないでよおじさん。おじさんはもう『汚れて』いるんだから」 襲いかかる父をひらりと躱し、父の背中にとんと手を触れるとそれだけで父は発狂し吐血し『壊れて』しまった。 「あははっ、『汚れている』人は本当にもろいなあ。そんなんじゃ僕のなかまにはなれないよ」 少年は再び母の変化を観察する。母は目から血や口から血を流してはいたが、父のように『壊れて』はいなかった。 「すごい、すごいよおばさん!!おばさんなら本当に僕のなかまになれちゃうよ!!」 発狂し苦しむ母を見ながら喜ぶ少年の背後から、血塗れとなった父が落ちていた包丁を握り、ゆらりと立ち上がったと思うと再び少年めがけて襲いかかった。異変に気づき少年が振り返る頃にはもう遅く、少年は胸元をバッサリと切りつけられ、その衝撃で少しよろめき尻もちをついた。少年の手から救われた母は力尽きたようにその場に倒れ込む。 「痛いなあまったく、、、、それにしてもおじさんやるじゃん。よく起き上がれたね」 そう言いながら起き上がる少年。父がつけた傷は浅く、胸元から少し血が流れる程度だった。少年の胸元をみた父はある異変に気づく。 「お前、、、、それは、、、、」 そんなことはありえないとばかりに父は困惑した。父に切りつけられ、少しはだけた胸元には憂夢にしか存在しない、存在してはならないはずのものが存在した。 「あーあ、見られちゃったか」
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