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第34話 駆除クエストならこんな風に

「とりあえず、駆除クエストあるだけ全部確認させてくれ」 「はいはい。今残っているのは――根食いモグラの巣の駆除と、足斬りウサギの巣の駆除、あとはミドリバチの駆除ですね」  ふむ。この中で、比較的簡単――というより戦闘を発生させずに棲むのは、ミドリバチの駆除だ。他二つは、巣から飛び出してきたモンスターと戦う可能性がある。  根食いモグラはたいしたことのない相手だが油断すれば怪我はするだろう。  足斬りウサギは論外。初心者が手を出す駆除モンスターじゃない。  となると、必然ミドリバチになってくるのだが。 「うぅむ」 「どうされたんですか、旦那さま? 何か問題でもあるんですか?」 「いや、まぁ、その――やっぱ収集クエストと比べると、危険があるというかなんというか」 「大丈夫ですよ。メルゥは今日は装備を整えてますから」  そうは言うがな。  この残ったミドリバチの駆除というのが、実は結構厄介だったりするのだ。  ちなみにこのミドリバチ。名前の通り、緑色をした蜂なのだが、結構でかい巣を作る。そして、毒性はそこそこだが、テリトリー内に近づいた人物に集団で襲い掛かる習性がある。  で、どうするかなのだが――。 「これ、蜂避けの服って借りられるんだっけ?」 「もちろん。S・M・L全サイズ取り揃えてますよ。そりゃ当然ですよ」 「……ちなみに、こいつにSって合うと思う?」 「メルゥさんですか。そうですね、ギリギリ、ちょっと丈が余ってしまうかな、という感じがしないでもないですが」  そう言って口ごもる受付嬢。  うん、大丈夫です、と、彼女は開き直って言ってみせたが、どうやらコボルトサイズの用意まではされていないらしい。  どういうことですか、と、メルゥが怪訝な顔をする。  これはやはり、ちゃんとした説明が必要だろうな。 「今から受けようとしている、ミドリバチの駆除クエストは、刺されると厄介なんで専用の防護服を着て行うんだ」 「……え?」 「具体的にいうとな、防護服を着てだな、ミドリバチの巣の下まで移動する訳だ。それで、殺虫作用のある練り香を焚く。するとだ、煙にやられてミドリバチが全員死滅するので、それをそのままお持ち帰り……というごくごく簡単なクエストだ」 「それじゃ、せっかく揃えた装備は?」 「まぁ、今回は用なしって奴だなぁ」  がぁん、と、メルゥの背後に文字が浮かんでいるのが見えた気がした。  あんぐりと大きな口をあけて、犬歯をむき出しにして絶望の表情を見せるメルゥ。  女の子が、そんなはしたない表情をするものではないだろうに。  しかしその気持ちは痛いほど分かる。 「せっかく、旦那さまと一緒に選んだ装備を、使う機会だと思ったのに」 「まぁ、そう落ち込むな。こういう日もあるさ」  落ち込む暫定嫁。そんな彼女を気遣って、ぽんぽんと肩を叩いてみたはいいけれど、返ってきたのはどこか恨めしそうな視線だった。  俺を睨まれたって困る。  クエストがないものはないのだ、仕方ないじゃないか。  初心者はクエストを選ばずだ。  もっとも、討伐クエストにするのもいいが……。  やはりそれは、もう少し、メルゥが冒険者として実力をつけてからにしよう。  それに。 「いいんですかギュスターさん。ミドリバチなんて駆除クエスト受けちゃって」 「……いざとなったら、そっちは俺がなんとかする」 「まぁ、運が悪くてもそっちの討伐費用も出ますから、ギュスターさんにしたら、一石二鳥かもしれませんね」  出来ることなら出会いたくないものなんだがな。  まぁ、大丈夫だろう。奴らも年中蜂蜜舐めてる訳じゃないんだ。  では、と、受付嬢が、フォルダの中からクエストの内容が書かれた羊皮紙を抜き取り、そこに判をついてみせた。 「ミドリバチの駆除クエスト。報酬は金貨二枚です。駆除されたミドリバチの巣については、持って帰ってもらうも良し、預けて貰っても良しですが、基本駆除クエストですので」 「……えっと?」 「収集クエストみたいに、出して貰っても金にはならんぞ、ということだ。証拠としてここまで持って帰ってくる必要はあるけどな」  やれやれ、それにしても、厄介な仕事しか残っていないものだ。  昨日、歩きマンドラゴラなんてものを見つけたら、その分の運の揺り戻しでもきたのかね。  なんにしても、ちょっと今日は気合を入れてこの弟子を守ってやらなくちゃな。 「……旦那さま」  視線で分かったらしい。  じとり、と、メルゥが半眼でこちらを睨んできた。  そうでした、暫定嫁でした。ごめんなさい、弟子じゃないです。はい。
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