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第33話 収集クエストがないならこんな風に

 さて、そんなこんなで夜も更けて。  メルゥの作ってくれた夕食に舌鼓を打ち、蒸しタオルで体をふくと、俺たちはさっさとその日は寝ることにした。  寝床は――流石にメルゥに俺の使っているのを譲り、俺は床に適当なシーツを広げるとその上に寝転がった。 「そういや、お前、昨日はどうやって寝たんだ?」 「……えっと、勝手ながら、旦那さまの隣で」  なるほど。  道理で思っていた以上に、毛がまとわりついているなと思ったのだ。  予想外に積極的なワンコ嫁に、勝手に同衾禁止令を出す。  そうして、俺はランプの灯りを息を吹きかけて消した。 「……旦那さま。勝手でなければ、よろしいのでしょうか」 「そんな日は暫定が取れるまで来ない!!」 ◇ ◇ ◇ ◇  翌朝。  例によって、俺より早く起きだしていたメルゥに、肩を揺すられて起こされると、温かい食事を済ませてから、いつものルーチンワークへと向かった。  瞑想からの帰り道、考えたのはクエストのことだ。  メルゥがあの調子である、今日も稼ぎの薄い収集クエストに出るしかない。  もうちょっと、割のいい収集アイテムがあればいいのだが――となると、途端にクエストの難易度が上がって来る。  やれモンスターの卵だとか、彼らの巣、あるいは、生息地に堆積した結晶――要は糞――を集めろと、そういう話になってくる。  となると、必然、モンスターとの戦闘が発生してしまうことが多い。  討伐クエストよりはよっぽど楽だが、それでもできれば避けたい仕事だ。  武器を手に入れたはいいが、まだ、十分に使いこなす練習もしていない。  ここはやはりまた、イエローマッシュルームとレッドチリの収集か――。  なんて、考えているうちに家にたどり着き、俺は準備万端、ピンクの帽子を頭に、レザーメイルに身を包んで、腰に五つの石を結わえたベルトをつけた、暫定嫁に遭遇したのだった。 「さぁ、旦那さま!! お仕事に参りましょう」  気合十分である。  俺の準備もさせてくれよと彼女に断って、簡単に装備を整える。  今日もまぁ、収集クエストだし、ショートソードと、サブウエポンの斧くらい、持っていけば大丈夫だろうか。  レザーメイルの胸部と肩の部分に、鋼を打ち付けた鎧を手にすると、行こうか、と、俺はメルゥと連れ立って家を後にした。  家族会議はしていない。  この時間なら、まだ、ギルドに人もいることだろう。  もしかすると少しくらいましな、収取クエストが残っているかもしれない。  そう思ったのだが――。 「収集クエストがない!?」 「はい。昨日のギュスターさんたちと同じように、初心者さんを入れたパーティが、イエローマッシュルームとレッドチリの収集クエストは、先に受注されました」 「……ほかには?」 「他も結構、今日はすでに捌けちゃってますね。あ、いつものギュスターさんがやられてるような、高難易度クエストなら残っていますけど」  そんなところに初心者の暫定嫁を連れていけるか。  守る自信はあるけれど、精神的に守ってやる自信がない。  俺が普段、どういう仕事をしているのか、よく知っている受付嬢が意地悪な顔をする。まるで、とっととゲロっちまいなよ、とでも言いたげなその表情に、思わず本気の睨みをぶつけてしまいそうになった。  しかし、後ろにメルゥが控えているのを思い出して、俺は思いとどまる。 「旦那さま……どうします?」 「収集クエストがないならしかたない」 「狩猟クエストですか!?」 「……いや、ここは駆除クエストでいこう!!」  なんですかそれ、とばかりにその場で首を傾げるメルゥ。  クエストには、収集・狩猟・駆除の三種類があるのだが――まぁ、そんな話は歩きながら、ゆっくりとでもできるだろう。
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