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第20話 キノコを狩るならこんな風に

 森の入り口より進んですぐのところ、少しだけ開けて日照量を調整してあるその場所に、黄色いキノコは群生していた。  昨日、ここにたどり着くことのできなかったメルゥは、はぁあぁ、と感嘆の声を漏らした。  一応キノコの収穫場所については説明されるはずなんだがな。  まぁ、俺がこっちだというのに、、とかぬかして、ここに来る道中で散々に方向音痴を見せつけてくれた。  まずはその辺りを直さんことには冒険者として話にならないだろうな。 「すごいです!! 圧巻ですね!! こんなにいっぱいのイエローマッシュルーム!!」 「だな。俺も久しぶりに来るが、この光景はいつ見ても圧巻だ」 「……これだけあれば、数個くらい持ち帰っても」 「あかんあかん、ここのは一応、冒険者ギルドと契約している農家のもんだ」  彼らから、売り物にならないからと譲り受けるならともかくとして、勝手に取っていくのは立派な犯罪である。  ちょっとくらい、ダメなんでしょうか、と、こちらに視線を向けるメルゥ。  そんな冒険の基本的なモラルもしらないお嬢ちゃんに、俺はかつての宣言どおりデコピンをくらわしたのだった。 「森の中で自分で見つけたイエローマッシュルームならともかく、栽培しているもんはダメだ。仕事はなんでも信頼関係で成り立っている。それを踏みにじるような行為は、冒険者だろうが、なんだろうが許されない」 「そうですね!! メルゥがどうかしていました!!」 「うむ、いい返事だ!!」 「イエローマッシュルームの食費を浮かしたいのなら、自分で探せばいいんです」  さっきの話を聞いていなかったのだろうか。  イエローマッシュルームは、いわゆる馬糞から生えてきたキノコだということを。  森の中に生えているということは、そこはそういう場所だということ。  ゴブリンだか、昨日彼女を襲ったウッドサーバルだか、ドラゴンだか――とにかく分からないが、そいつらの栄養満点な堆肥によってそれが生えていると言う訳だ。  嫌だよ、お前、俺そんなイエローマッシュルームを晩御飯に食べるの。 「イエローマッシュルームは店で買うのが一番だ」 「なんでですか? 冒険しながら、晩御飯のおかずも獲得できる――節約できていいじゃないですか?」 「……毒キノコと間違えるかもしれん。素人にはオススメできない」 「メルゥの鼻のことを信じていないんですか?」  すんすん、と、メルゥはそのこげ茶色の鼻を天に向けると自慢げに言う。  そういう話ではないんだがな、と、俺は言葉を失くした。  しかし、鼻か――。  もし、メルゥがを求めて、この森の中を彷徨っていたのだとしたら。ウッドサーバルに襲われこそすれ、自生するイエローマッシュルームを、自分で見つけるだけの能力を持っているのだとしたら。 「案外、冒険者の適正があるかもしれんな。ふむ」 「旦那さま?」 「なんでもない。とにかく、イエローマッシュルームくらいでけちけちしたことを言うな。いいか、絶対に店で買え。俺に黙って糞の――いや、自生のそれを食卓に出したら、即離婚だからな」 「分かりました旦那さま。意外と、潔癖症なんですね」  潔癖症なんじゃない。お前さんが世間知らず過ぎるのだ。  やれやれ、と、俺はため息を吐き出すと、背中に担いでいた竹籠を降ろしたのだった。 「ほれ、さっさと集めるぞ。竹籠いっぱいで、ようやく銀貨三枚なんだ」 「二人合わせて銀貨六枚ですね――よし、頑張りましょう!!」
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