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第18話 パーティ名を決めるならこんな風に

 冒険者初心者の心得、その二。  仕事は選ぶな。残るに任せよ。  その真意はつまるところ、きのこ集めや薬草集め、鉱石採掘といった、こまごまとした作業をまずはやれというところにある。  冒険者を志す初心者の多くが、ゴブリンやスライム、ゴーレムやトレント、オークにドラゴン、そしてギガントといった、モンスターとの戦いをこの仕事に求める。  しかし違う。そんなのは冒険者仕事のごく一部の話に過ぎない。  基本、俺たちの仕事はなんでも屋と思ってもらえば良い。  ダンジョンや森に潜って、必要とされるクエストのアイテムを収集するのが仕事だ。  その過程で――レアな素材となるモンスターを狩ることや、遭遇したモンスターを倒すことはあっても、目的はあくまでの収集なのだ。  そこを履き違えてはいけない。  いや、もちろんのことながら、数が多くなって悪さをするようになったゴブリンたちを、駆除するといったクエストもないこともない。しかし、戦うことよりも、依頼をこなすことこそがこの仕事の本質だということは、どうあっても忘れてはならない仕事の基本であった。  閑話休題。  俺とメルゥは並んでカウンターの前へと出ると、その帳簿を覗き込んだ。  背の低いメルゥは、少し、つま先立ちして、それを覗き込んでいる。  後ろから抱きかかえてやろうかとも思ったが――流石に人の目がないとはいっても、彼女に悪いかとそこはあきらめた。  さて。残っている残っている。  冒険者たちがそっぽを向きたくなる、割の合わない収集クエストがたんまりと。 「昨日メルゥが達成し損ねたイエローマッシュルームの収集と、レッドチリの収集クエストなんかがよさそうかな。あとは、薬草の収集クエストか。ちとこっちは場所が悪いんだよな」 「薬草が群生している森の東側は、ゴブリンの生息地でもありますからね。武器も持たずにというのは――ただ」 「ただ?」 「ゴブリン退治のクエストを今日受けたパーティが居ますね。ちょうど良い塩梅に駆除してくれていれば、ゴブリンと出くわす可能性は低いかもしれません」  なるほど。  しかし、危険がない訳ではない。  できることならば、まだ、メルゥの奴には実戦をつませたくないというのが、俺としての意見だ。  まぁ、いざとなったらゴブリン程度。  拳の一つでかたをつけることはできなくもないが。  どうしますか、旦那さま、と、こちらを見てくるメルゥ。  自分で決めろと言ってやりたかったが――どうやら、俺も随分身内びいきらしい。 「とりあえずは、森の入り口近くに群生している、イエローマッシュルームとレッドチリの収集クエストだな」 「はい。分かりました。成功報酬は、二つ合わせて銀貨八枚ですが、いいですか?」 「いい。今日は赤字覚悟でレクチャーの予定だ」  そうですか、と、なんだか面白くなさそうに言うギルド嬢。  彼女は帳簿から依頼書を抜き出すと、ダンダンと、クエスト受注済みの判子をその羊皮紙に押してみせた。  判子の下には、名前を書く欄が設けられている。  ここにサインをすれば、クエストの受託という次第である。 「そういえば、パーティでのクエストになりますけど、サイン名はどうします」 「別に、俺の名前を書いておけばいいだろ」 「パーティ名でギュスター夫妻とかにしておかなくて大丈夫ですか?」 「大丈夫だよ、いらない気をまわさんでくれ」  まったく、この受付嬢と来たら。  人が嫁を貰ったのがそんなに面白いのかねまったく。そんな名前の書かれたクエスト依頼書、もし、他の冒険者に見られでもしたら、いい笑い種だっての。  俺はスラスラと、ギュスターと自分の名前だけを書き記すと、それを受付嬢に渡した。  と、そこで、むぅ、とメルゥが頬を膨らませいてるのに気がつく。 「どうしたメルゥ。何か不満でもあるのか」 「――パーティ名、ギュスター夫妻というのは、なんだかとっても心躍る感じでよかったのです。旦那さまが嫌というなら私も諦めますが」 「せめてもう少し、見られても恥ずかしくないパーティ名を考えて、それからにしよう」  流石に夫妻はないよ。夫妻は。
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