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第1話

梅雨が始まった頃だった。 私の妹が部活の最中に膝の靭帯を切り、手術のため入院することになった。 母と一緒に病室を訪れると妹は私達が知らない男の人と話をしている。 こっちに気がつくとその人は会釈をして病室を出て行った。 母がどうしたのかと聞くと、妹はテレビの使い方を教えて貰っていたと答えた。 やけに長身で、お節介な人なのだなとそのとき私は思っていた。 *** 病院に行くたび、その人を見かけた。 どうやら難病を抱えているらしい。 こないだ見かけた時は、自動販売機の隅に身を寄せていちごオレを飲んでいた。 「今度話しかけてみて」 そう妹に言われ、大体屋上の庭園にいると教えられた。 1回の販売店でいちごオレを買い、屋上を目指す。 屋上の扉を開けるとその人はじょうろをひっくり替えしているところだった。 「大丈夫ですか!?」 私は本人よりも慌てて駆け寄った。 「え?あ、なに?」 「だから、それ」 零れた水を指さすとそいつは不貞腐れたように人が来てびっくりしたからと答えた。 私のせいだと言いたいらしい。 「そうですか!悪かったね。あ、」 すっかりタメ口を聞いていた。 まだ相手の年も知らないのに。 「ちなみに今何歳ですか?」 「ん?俺はね、5歳。今年七五三やるんだよ」 明らかに舐められている。 「本当は何歳ですか」 「それ初対面の人に言わなきゃダメ?」 「タメ口聞いてたので、年上だったら謝らないとって思って、」 「先に年教えてよ」 ニヤニヤしながら聞いてくる。 それがとても不愉快に思えた。 「17歳です」 「勝った〜。俺19歳」 「そーでしたか」 「あー、謝んないのね」 「5歳には謝りませんよ」 「だから19だってーー」 やけに人懐っこい性格で、正直鬱陶しかった。 「いちごオレ好き?」 左手に隠し持っていたのがバレた。 「甘いの苦手です」 「え?」 「妹が入院してからお世話になっているので」 いちごオレをその人に向かって差し出した。 「くれんの!?ありがと!」 早速ストローを出して飲み始める。 ただ飲むのが遅かった。 ちびちび飲んだり、むせたりしている。 「苦手なんですか?」 「いや、大好きだよ。でも看護師さんにはちくらないで」 「なにをですか?」 「甘い物制限されてるから、あんまり飲めないんだよねー」 いつの間にか飲み干した音が聞こえた。 「もうここ来ないでよ」 その人は寂しそうにそう言った。
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