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絡むとクズがうつるぞ

 赤いロングのストレートの髪はよく手入れされており、纏う茶色を基調とした服も可愛らしい。抱えている木製の杖を見る限り、何らかの魔法士であるのは間違いない……というか、火魔法士だ。不本意ながら、ショウも知っている少女だった。彼女に嫌われているのは既知の事実である為、ショウは視線を無視して立ち上がろうとしたのだが……少女はズカズカと歩いてくると、バンと大きな音を立ててテーブルを両手で叩いた。 「……アンタ、まだ冒険者なんかやってたの」 「なんかたぁご挨拶じゃねえか。お前だってその冒険者「なんか」だろうに」 「そういう意味じゃないわよ、このクズ!」  そう叫ぶと、少女はショウの胸元に下がっている白いカードを引っ張る。  冒険者の身分証……冒険者カードと呼ばれるそれを見て、少女はふんっと馬鹿にしたように笑う。一見少女の態度の悪さが際立つが……そこに表示されていた内容を見れば、誰もが同じ反応を返すだろう。 名前:ショウ・モネー・クズ ジョブ:剣士(レベル3) スキル:剣士の心得  ただ、これだけが表記されている。  そもそも白色の冒険者カードというのも、初心者の証だ。  白、赤、緑、青、黄……といったように貢献度に応じて色が変わっていくが、まだ依頼をほとんどこなしていない初心者くらいしか、白カードは持っていない。  冒険者歴の長いショウが白カードというのは……まあ、かなり恥ずかしい事なのだ。  うだつの上がらない中堅冒険者だって、緑くらいのカードは持っているのだから。  更に言えばレベルが3というのも酷い。戦闘をこなすことでジョブは力を得てレベルアップするはずなのに、ほとんど戦闘していないという証明でしかない。 「剣士レベル3……? 相変わらずね。恥ずかしくないの?」 「お前にゃ関係ねーだろ。俺のオカンにでもなったつもりか」 「お、オカン!? おっさんの癖に何言ってんのよ!」 「そうじゃぞ。そういう時は反抗期の娘と言わんと」 「シュセンさんは黙ってて!」  すっかりやる気をなくした顔で耳をほじりながら、ショウは少女の冒険者カードを見る。青色の冒険者カードは、少女の……というよりは、彼女と組んでいる【魔法剣士】のアルトの力だろう。 名前:テスラ・マイヤーズ ジョブ:火魔法士(レベル27) スキル:火霊の愛し子、火魔法、杖の心得 「アンタみたいなのが居るだけで冒険者全体が安く見られるのよ! 才能無いなら無いで、もっと別の道探しなさいよ!」 「……何言ってやがんだか」  そう言うと、ショウは今度こそ立ち上がって剣を手に取り、テスラを押しのける。 「他で生きてく才能がねーから冒険者になるんだろが、バーカ」 「なんですって、この……!」  更に突っかかろうとしたテスラだったが、ショウにギロリと睨まれ思わず後ずさる。  たかがレベル3程度の実力であるはずのショウからの威圧。そう、冒険者の力がレベルによる恩恵を受ける以上はレベルと実力は必ず比例する。だというのに、何故。  テスラはそれをすぐに年齢差や体格差によるものだと結論付け、悔しそうに歯噛みしシュセンへと振り返る。 「シュセンさんも、あんなのとは付き合わない方がいいですよ」 「くふふっ、そういう意見があったことだけは覚えておこうかの」  覚えておくなどと言いながらも全く聞く耳を持っていない様子のシュセンに尚も何かを言おうとして……やがて、テスラは無言でその場を去っていく。冒険に出ない事ではシュセンもショウといい勝負だが、この場に集う冒険者でシュセンから金を借りなかった者の方が少ない。テスラも……この場に居ないがアルトも返済済みとはいえシュセンから駆け出しの頃に金を借りた一人であり、それ故にシュセンには頭が上がらなかった。 「……それにしても、ふふ。剣士……のう?」  そんなシュセンの呟きを聞く者は、この場には無い。ショウ本人すらも例外ではなく、テスラをあしらったショウは冒険者ギルドの入口から丁度出たところだった。
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